ワンナンバーで実現するシームレスコミュニケーション
単一番号で電話が必ずつながる「ワンナンバー」で作る機会損失ゼロ環境
スピード重視のビジネスの現場では、電話がかかってきた担当者が不在だと、転送、伝言したりと、時間ばかりか機会の損失にもつながる。1つの電話番号で確実に通話可能とする「ワンナンバー」とは?
電話のロスは機会損失や生産性低下につながる
現在のビジネス環境は、IT技術の進歩によって情報の量や伝達スピードが向上し、迅速な意思決定が求められている。そうしたビジネス上のコミュニケーションには即時性・即応性が求められ、時間や場所を超越した流動的な対応が必要となっている。また、事業のグローバル化に伴ってコミュニケーションの対応時間が拡大し、そこに求められる情報の量と質も以前に比べて格段に大きくなっている。
一方、実務において、電話やメールなど何かしらのコミュニケーションに割く時間は業務時間の50%にも上り、そのうちの90%(全体の45%)は相手が捕まらないなどの理由で成果が上がっていないといわれている(図1)。そのコミュニケーションロスがもたらす損失は甚大なものになりつつあり、コミュニケーションの最適化、効率化による機会損失の低減や生産性の向上といった効果が注目され始めた。
こうしたコミュニケーションの多様化に対応すべく、現在さまざまなソリューション、デバイスが登場しているが、それらに対するアクセス方法は発信者側に委ねられている。発信者は受信者の場所や状態などを意識しなければ適切に情報を伝達できず、シームレスなコミュニケーションであるとは到底言えない状況だ。例えば、企業が社員1人ひとりに電話のダイヤルイン番号を与えていた場合、その番号を与えられた社員が自席に在席して初めて受話が可能となる。だがその社員が外出していたら、在席状況を把握していない発信者がそのダイヤルインに発信したとしても、希望の相手とのコミュニケーションは取れない。仮にこの社員が営業マンで発信者が顧客であった場合、1つの機会を損失したことになる。ほかの携帯電話番号などを探し出して再度発信することもできるが、必ずそうしてくれるという確証はなく、最初の呼び出しに応じることがビジネス上重要な要素となる。
これは内部でのコミュニケーションについても同様で、ある懸案について有識者の意見を求めたいといったとき、ユーザーは内線番号をダイヤルしてコンタクトを取ろうとするだろう。しかし、相手の有識者が在席していないなどの理由で連絡が取れなければ、懸案が解決できずやはり生産性を落とすことになる。こうした状況が慢性的に起こっているような環境では、組織力をそぐ事態にもなりかねない。
これらのコミュニケーションロス、成果のないコミュニケーションに対し、「ワンナンバー」「シングルナンバーリーチ」といったソリューションは有効な策となり得る。
ワンナンバーソリューションとは?
ワンナンバーソリューション(以下、ワンナンバー)は、その名称の通り「1つの番号でコミュニケーションを実現する」もので、ある1つの番号を社員に割り当て、その番号にダイヤルさえすればその人にコンタクトが取れる。例えば前述の営業マンの場合、外出していたとしても、顧客のコール(通話)を外出先に持参している自身の携帯電話で受けることができ、また社内でも、離席している間のコールに携帯電話や移動先のデバイスなどで応答可能となる。
ワンナンバーは、主に2つの導入効果がある。
- 機会損失の低減/顧客満足度の向上
発信者(顧客)は、相手の場所や状態を意識する必要なく、いつでも相手を捕まえることができるため、顧客満足度が向上する。また受け側は、時間や場所に依存せずに電話対応ができ、重要なコールを漏らさず受けることで機会の損失を抑えられる。
- 迅速な対応/生産性の向上
ワンナンバーでは、文字通り1つの番号さえ分かっていれば相手に確実にコンタクトができる。従って、即座のコミュニケーションから迅速な課題解決や意思伝達・意思決定が可能となり、ひいては生産性の向上につながるわけだ(図2)。
ダイヤルイン、FMC――ワンナンバーの構成要素
以下に、ワンナンバーの仕組みの概略とソリューションに必要な要素を説明する。
ソリューションの仕組み
ワンナンバーは、至ってシンプルな仕組みで構成されている。コールの制御を行う交換機を中心に外線を収容するゲートウェイ装置、実際に着信する端末を配備し、呼制御装置にて複数の端末、番号に対して着信処理を行わせるだけでよい。
例えば、シスコシステムズの呼制御サーバである「Cisco Unified Communications Manager(CUCM)」であれば、Mobile Connect(モバイルコネクト)という機能を使うことでコール処理をトータルに管理可能となる。図3のように、通信キャリアから提供される外線番号に着信したコールを内線に落とし込み、着信させるのは、どのPBXでも実現はできる。しかしCUCMでは、電話端末にひも付いたモバイル端末を同時に呼び出せる(図3中(2)の動作)だけでなく、一定時間応答がない場合、そのコールをボイスメールサーバに転送して代理応答処理させることができる(図3中(3)の動作)点が特徴だ。こういった、一連のコール処理をサーバが一括して管理することにより、きめの細かい処理が可能となる。
必須の要素
・ダイヤルイン番号/内線番号
各通信キャリアから提供されるダイヤルイン番号を、1人1番号用意する必要がある。外部に対しては、このダイヤルイン番号1つを告知しておくだけでよい。内部的には内線番号が必要となるが、外線番号とリンクするような仕組みにするとシームレスな環境となる。
また、内線番号を社員番号にし、入社から退社まで一貫して同じ番号を割り当てる方法もある。こうすると、人事異動や組織変更などの際の変更コストを下げられる。その際、外線ダイヤルインも同様に内線番号とリンクした番号を確保できればよいが、現実的にはなかなか難しい。この内線とのひも付けが検討課題になるだろう。
コミュニケーション効果を増すための要素
・IP対応呼制御装置/IP対応端末
ワンナンバーソリューションにおいて、IP対応呼制御機器であるIP-PBXと受電するIP電話機があると、ソリューションがより効果的になる。IP端末であれば、同一のIPネットワーク内ならどこでもIP-PBXの機能を利用できるからだ。これまでのレガシーなPBXでは、ケーブルと端末とPBXはすべて対で設定が必要なため、電話機が移動する場合などに設定変更や工事が必要となり、機動性に欠ける。それに対して、IP電話機はIPアドレスさえ割り当てられれば、同一のIPネットワーク上のどこかにあるIP-PBXにつなげることが可能となるため、どこにいても同じ番号を使い続けられる。
前述のCUCMの場合、Extension Mobility(エクステンションモビリティー)というPCのようにIP電話機へログインする機能があり、会議室などの電話機にログイン処理を行うことで自席の電話環境を引き継げる。つまり、ユーザーはコールをどこでも受けられるので、場所に縛られずに業務が行えるメリットがある。人事異動などの際にもこの機能は有効だ。異動元の自席の電話機でログオフ、異動先の電話機にログインするだけで設定が完了し、これまで人事異動・組織変更などに掛かっていた手間やコストを削減できる。
・ワイレス環境・モバイル端末/モバイルソリューション(FMC)
ワンナンバーにおいてIP-PBXやIP電話機の柔軟性は非常に有効だが、これはあくまでもケーブルがある環境でのメリットとなる。一方、離席や外出が多い営業マンなどケーブルがない環境下にあるユーザーに対しては、ワイヤレス端末によって自席以外でのコールを受けられる仕組みを用意すると効果的だ。最近では、各携帯キャリアからFMC(Fixed Mobile Convergence)サービス(※)がリリースされ好評を得ている。このFMCサービスでは、携帯キャリアのネットワークを通じて定額で携帯電話を内線化し、内線電話と連動して同時鳴動させるといったことが可能だ(図4)。このサービスを併用すると、ビジネスの行動範囲の大幅な拡大が期待できるだろう。
※FMCについては、別記事「モバイルユニファイドコミュニケーション入門」を参照のこと。
・ボイスメール
ワンナンバーによってどこにいてもコールを受けることが可能でも、必ずしも応答ができるとは限らない。重要な会議中や電車移動中など、電話に出られない状況は必ず発生するものだ。そのときに個人とひも付いた番号をカバーする人やモノがなければ、そのコールは放置されることになってしまう。そのような状況になった場合に有用なのが、ボイスメールシステムだ。
ボイスメールは、日本の企業文化にはなかなか定着しないが、最終的なコールのカバーといった観点では非常に有用なソリューションである。日本ではひとくくりに“留守番電話”ともいわれるが、ボイスメールと留守電の大きな違いは、「録音された音声メッセージがメールなのか、単なる音声録音なのか」である。メールは、PCなどのメールと同じように転送や重要度の設定などメッセージの管理が可能だが、単なる録音された音声では聞くだけしかできない。例えば、顧客からの重要なメッセージをしかるべき人に伝えたい場合には、メッセージを転送するだけで事足りてしまう。また、メッセージを残したくない場合は、ボタン操作で第三者へ転送して代理応答をしてもらうような、日本企業が従来行っている運用方法も可能で、録音機能にとどまらない柔軟な対応ができる。このように、ボイスメールは「実際のメッセージを聞かせて要件を伝える」ため、重要だが手間の掛かる面倒なコミュニケーションに要する時間を短縮するのに役立つのである。
ワンナンバー導入の課題と注意点
システム導入のポイント
これまでの多番号制からワンナンバー制に切り替える際、コールのカバーをシステムでいかに実現するかという点には注意すべきだ。多番号制であれば、すべての番号を公開しているので発信者の意思があれば何かしらの番号にコールを入れてくれる。しかし、ワンナンバーの場合は1つだけなので、1回のコールに対する受話率を上げる必要がある。受話率を上げるために前述のCUCMのMobile Connectやボイスメールへの転送、またそこから第三者への転送処理などの多段処理を考慮するようにしたい。
地域番号の課題
現在提供できる番号体系としては、地域特定型の0AB~J番号がある。しかし番号は地域特定であるため、地域を移動する際などは番号を変えなければならないのが現状の課題である。従ってワンナンバーを付与しても、地域間の移動が多い場合は外線番号を都度変える必要がある。そこで、携帯電話やIP電話回線など地域特定がない番号に割り当てられる「0A0番号」を個人に割り当てて半永久的に使い、組織にひも付く番号は、これまで通り地域番号の0AB~Jを用いるといった方法も検討が必要だ。
企業文化のジレンマ
日本の企業は、企業文化として代表電話の概念が根強く残っているため、“電話は誰かが必ず出なければならない”という風潮があり、個人に番号を割り当てる概念に否定的な面がある。しかし最近のビジネスのスピードを考えると、この運用では柔軟な対応が厳しい。ワンナンバーソリューションの導入に向けては、これまでの伝言ゲームの文化や無駄なコミュニケーション環境を捨て、効率的・効果的なコミュニケーション手法を新たに確立し、的確かつ迅速なビジネス環境の構築を訴求することが必要だ。
<筆者紹介>
横山哲雄
ネットワンシステムズ ビジネス推進グループ 営業推進本部
2001年にネットワンシステムズへ入社後、多くのIPネットワーク、IP電話システム構築に携わる。国内大手金融企業や外資系企業の大規模UC・ネットワーク構築のSE、PMを経て2008年よりUCの営業支援業務、技術支援業務、UC製品の先端技術のサポートを行う。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
4
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
5
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
6
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
7
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
8
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
9
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
10
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー