携帯/無線LANのいいとこ取り「FMC」の導入
モバイルユニファイドコミュニケーション入門 PART2
シリーズ第2回では、モバイルUCの基盤となる2つのネットワーク、無線LANと携帯電話のネットワークの「いいとこ取り」を可能にするFMCソリューションについて解説する。
本連載の第1回目は、ユニファイドコミュニケーション(UC)の定義を明らかにするとともに、UCの導入で企業が期待できる主なメリットを挙げた。今回は、モバイルUCソリューションおよびその簡素バージョンともいえる固定・携帯融合(Fixed Mobile Convergence:FMC)ソリューションを導入するための主な戦略について解説する。
無線ネットワークの可用性と信頼性の向上により、UCをモバイル化することが可能になった。しかし、モバイルUCの基盤となる無線ネットワークには2つのタイプが存在する。無線LANと携帯電話のネットワークサービスだ。無線LANでは通信範囲が限定されるが、対応携帯を導入してしまえば実質的に無料で利用できる。一方、携帯ネットワークはモバイルユーザーの活動範囲を全国(可能性としては全世界)に拡大できるが、このユビキタスなアクセスにはサービス料金が掛かる。企業は両者の「いいとこ取り」をしたいと考えている。すなわち、携帯ネットワークと社内の有線・無線ネットワークを連携することが可能なFMCソリューションを求めているのだ。
FMCに至る2つ道、「cFMC」と「eFMC」
FMCとは、携帯ネットワークを社内の電話ネットワーク(有線・無線)に連携し、両ネットワーク間で通話をハンドオフできるようにすることだ。現在、企業向けに各種のFMCソリューションが出回っている。これらは以下の3つの主要な基準によって分類できる。
- 管理の主体:キャリアが管理する方式(cFMC)と企業が管理する方式(eFMC)
- ハンドオフ方式:ハンドオフなし、手動ハンドオフ、自動ハンドオフ
- 機能:基本的な通話機能のみ、音声・データサービス、モバイルUC
キャリアが管理するFMC――cFMC
cFMCソリューションで最も高い機能を実現するのは、携帯ネットワークと全面的に連携し、通信キャリアがほかの基地局に通話をハンドオフするのと同じように、企業の社内ネットワークに、あるいは社内ネットワークから通話をハンドオフするという方式だ。残念ながら、キャリア各社はこれまでこういった高度な連携を提供するのに消極的だった。
現時点では、「Unlicensed Mobile Access(UMA)」と呼ばれる技術あるいはフェムトセルを利用した代替技術を使ってcFMCを構築できる。UMAはT-Mobileの「HotSpot@Home」サービスで採用されている技術で、特殊なソフトウェアを組み込んだデュアルモード型Wi-Fi・携帯端末を使用する。ユーザーが自宅の無線LANの通信範囲内にいるときは、携帯端末は無線LAN・ブロードバンドインターネットコネクション経由でキャリアに接続する。ユーザーが無線LANの通信範囲外に移動すると、即座に通話が携帯ネットワークにハンドオフされる。
米Sprint Nextelは最近、フェムトセルを利用した同様のcFMCソリューション「Airave」を発表した。この方式は、ユーザー宅内の小型携帯基地局がブロードバンドインターネットサービスに接続されるというものだ。
図1に示すように、いずれの方式もユーザーが利用しているブロードバンドインターネットサービス上で実現されるVoIP(Voice over IP)を携帯ネットワークの代替として用いる。両者の違いは、ローカルの無線コネクションがWi-Fi技術を使用するか携帯技術を使用するかという点にある。企業ユーザーにとって、これら2つの方式の最大の欠点は、両者ともにコンシューマー向けの音声専用サービスであり、社内のPBXやモバイルUCシステムに連携できないことだ。
長期的には、キャリア各社がIP Multimedia Subsystem(IMS)と呼ばれる包括的なアーキテクチャを採用したFMC型サービスを提供する可能性もある。しかし現時点では、米キャリア各社はIMSベースのcFMCサービスをまだ発表していない。
企業が管理するFMC――eFMC
cFMCソリューションではキャリアの選択肢がないために、企業ユーザーはeFMCソリューションを選択せざるを得ない。最も基本的なeFMCソリューションが同時鳴動(Simultaneous Ring)方式だ。これは、ユーザーのデスクの電話機に電話がかかってくると、ユーザーの携帯電話番号にダイヤルするように企業の電話システムあるいはPBXをプログラムするというものだ。この場合、両方の電話機で着信音が鳴り、ユーザーが一方の電話機に応答すると、他方の電話機の着信音が鳴りやむ。デスクの電話機から携帯電話(あるいはその逆)に手動でコールを転送する機能を提供するソリューションもある。同時鳴動技術はそれほどエレガントなソリューションではないが、モバイルアクセス機能と単一電話番号を提供するとともに、企業が電話番号を管理することを可能にする。
同時鳴動ソリューションの重要な長所の1つに、任意の携帯電話をサポートし、任意の携帯サービスに対応できることがある。このためデュアルモードのWi-Fi・携帯端末は必要ない。しかし、このソリューションには2つの問題がある。まず、着信コールを(多くの場合、発信コールも)PBX経由で転送すると、携帯端末の使用が増える可能性が高くなることだ。また、ユーザーがデスクの前にいるときに電話がかかってきた場合には、必ず有線電話機を取らせるようにするための手段が存在しないので、「無精な」ユーザーは必要以上に携帯電話を使うようになる可能性がある。
比較的広く認知されているeFMCインプリメンテーションとして、携帯同士の融合がある。これは、デュアルモード型Wi-Fi・携帯端末と両ネットワーク間でコールを転送する機能を利用するというものだ。PBXに搭載されたモビリティコントローラーは、ユーザーが無線LANの通信範囲にいるかどうかを監視する。ユーザーがオフィス内にいれば、無線LAN上で通話が行われる。ユーザーが社外にいるときは、そのユーザーの携帯番号にコールが転送される。最新のソリューションでは、通話中であっても接続が途切れることなく両ネットワーク間でハンドオフが行われる。
この方式は自動転送の利便性だけでなく、管理面でもメリットがある。ユーザーが無線LANでつながるかどうかをネットワークが監視しているため、最も費用効果の高いネットワークが利用可能であれば、着信コールと発信コールは常にそちらに転送されるのだ。
FMCからモバイルUCへ
初期のFMCソリューションは音声通話のハンドオフのみを目的としたものだったが、先進的なサプライヤーは現在、UC環境全体をFMCに対応したモバイルユーザーにまで拡張しようとしている。単に音声通話を拡張するだけでなく、モバイルUC環境を実現すれば、ネットワークがプレゼンス対応の電話帳機能を提供し、ユーザーは携帯端末上ですべての連絡先の応対可能状況を把握できるようになる。その上でユーザーはテキストメッセージまたは電子メールを送信する、音声通話を確立する、あるいはデスク上の電話機を使うのと同じくらい簡単に会議通話をセットアップするといったことが可能になる。
モバイルUCでは、専用ソフトウェアを搭載したスマートフォンを使用する。また、無線LANと携帯のハンドオフ機能を提供するものもある。図2に示す構成は、ネットワークとユーザーの端末間で2つのコネクション(携帯音声コネクションと2.5G/3G携帯データコネクション)を使用する。データサービスは電話帳やビジュアルボイスメールなどのモバイルUC機能を提供する。一方、携帯音声コネクションは基本的な音声通話をサポートする。携帯音声コネクションを通じてDTMF(Dial Tone Multi Frequency)コマンドを送信することによって、4けたの内線ダイヤリングなどの機能をエミュレートするバージョンもあるが、これらは電話帳アクセスやビジュアルボイスメールなどのモバイルUC機能を実現することはできない。
まとめ
企業ユーザーの場合、モバイルサービスを提供するのはネットワーク間で通話をハンドオフするようにすれば済むわけではないことに注意する必要がある。従業員の携帯端末は重要な企業情報にアクセスしたり、これらの情報を保存したりするのだ。さらに、こういった企業情報は、セキュリティレベルが異なるさまざまな無線ネットワークを通じて転送される。このためエンタープライズグレードのソリューションでは、大量のデバイスのプロビジョニングと管理が可能なツールを備え、情報セキュリティを確保でき、そしてソフトウェアの更新、セキュリティの脅威、デバイスの紛失といったモバイル環境で遭遇するさまざまな問題に対処するための手段が存在することが必須の要件となる。
適切なソリューションを選択する上で鍵となるのは、ユーザーの要求、仕事のやり方、そしてユーザーが新しい機能をどのように利用できるかを理解することだ。この分野では混乱が広がっているため、モバイルUCソリューションの本格的な配備を進める前に、それが効果的かつ管理可能なソリューションであり、ユーザーのパフォーマンス要求を満たすことを確認するための実証実験を適切な管理下で実施することが不可欠だ。幸いにも今日、効果的なモバイルUC機能を実現することは可能なのだ。
次回は、FMCとモバイルUCを実装するための製品を紹介する。
本稿筆者のマイケル・フィネラン氏は独立系コンサルタント兼業界アナリストで、無線技術、モバイルUC、固定・携帯融合(FMC)を専門とする。ネットワーキング分野で30年以上にわたる幅広い経験を持つ同氏は、同分野のエキスパートとして広く認知されている。無線関連では、Wi-Fi、3G/4G携帯、WiMAX、RFIDなど広範な専門領域をカバーする。最初の著作となる『Voice Over Wireless LANs -- The Complete Guide』(Elsevier刊)を最近刊行した。
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