企業の生き残りの鍵となるUC+モバイル
モバイルユニファイドコミュニケーション入門 PART3
モバイルUCの導入効果を紹介する本連載。最終回では、モバイルUCの機能を実装するための具体的な製品を主要な要素に基づいて見ていく。
本連載の1回目と2回目では、ユニファイドコミュニケーション(UC)の定義とそのメリットを明らかにするとともに、固定・携帯融合(FMC)およびモバイルUCソリューションについて解説した。最終回となる今回は、これらの機能を実装するための製品を見ていくことにしよう。
UC市場、特にモバイルUCの市場は急速に拡大しつつあり、驚異的な勢いで次々と新しい機能が追加されている。このため、本稿では各製品の個別機能は取り上げないことにする。そういった分析は、すぐに時代遅れになってしまうからだ。また、一般にモバイルUC技術の価格はほかの機能との関連で設定されているため、モバイル機能の価格だけを抽出するのは不可能に近い。そこで本稿では、サプライヤーの主要カテゴリーおよび各カテゴリーのサプライヤーが提供している一般的機能を示すとともに、注目すべき機能の幾つかを紹介したい。
モバイルUCの要素
モビリティーのメリットは広く認識されており、広範なモバイルUCソリューションが選択肢として存在するというのは喜ばしいことだ(もちろん厄介なことでもある)。モバイルUCソリューションには、3つの主要な要素が含まれる。
UCプラットフォーム
ディレクトリ、統合型プレゼンスアプリケーション、API、各種のコミュニケーション機能とデータ共有機能にアクセスするためのユーザーダッシュボードで構成される。
モバイルネットワークインフラ
UCソリューションを運用するための無線ネットワーク(携帯ネットワークまたはWi-Fi、あるいは両者の併用)で構成される。Wi-Fiと携帯ネットワークとの間でコネクションをハンドオフするソリューションの場合は、機能連携のためのモビリティーコントローラーが必要になる。
モバイルクライアント端末
モバイルUCソリューションでは、ベンダーが提供する専用のクライアントソフトウェア製品を搭載したスマートフォンを使用するため、ユーザー用端末の選択肢が限られる。モバイルUCベンダーがサポートしていない端末にユーザーが慣れてしまっている場合、これは重大な問題になる可能性がある。
モバイルUCサプライヤーは3種類
一方、モバイルUCのプロバイダーは3つの主要なカテゴリーに分類できる。
- UCベンダー
- IP-PBXベンダー
- 補助的FMCハードウェア/ソフトウェアベンダー
UCベンダー
ソフトウェアベンダーとしては、IBMとMicrosoftがUCプラットフォームの主要プロバイダーだ。IBMの製品は「Lotus Sametime」と呼ばれ、Lotus Notes製品と連携する機能もある。MicrosoftのUCプラットフォームは「Office Communications Server(OCS)」という製品で、Active DirectoryやExchange ServerなどのMicrosoft製品と連携する。
IBMとMicrosoftは共に、スマートフォンでモバイルユーザーをサポートするためのモバイルクライアントを開発した。Microsoftのクライアントは「Office Communicator Mobile」、IBMのクライアントは「Lotus Sametime Mobile」と呼ばれる。IBMとMicrosoftが提供するUCプラットフォームを導入するに当たっては、これらのソリューションを物理インフラに統合する必要がある。モバイル機能の実装については、両社のソリューションは無線LANよりも携帯ネットワークを主に利用するため、連携は容易だがネットワークコストが増加する可能性がある。
UCプラットフォームベンダー各社はインフラベンダーとの提携を強化しており、今後、豊富なネットワークオプションが登場するものと期待される。将来的には、共通のSIP(Session Initiation Protocol)ベースのIPテレフォニーソリューションへの移行が進むことで、より機能的な連携型構成が実現する可能性が高い。
IP-PBXベンダー
IP-PBXベンダーはUCに強い関心を抱いている。自分たちのビジネスモデル全体がUCベンダーに奪われてしまうのではないかという危機感を抱いているからだ。実際、ハードウェアを主体とするPBXの重要性は次第に低下している。音声はデータインフラのアプリケーションの1つにすぎないようになり、従来の卓上電話機はソフトフォンや携帯端末で代替されるようになってきた。
Avaya、Cisco Systems、Nortel Networks、Siemensといった大手IP-PBXサプライヤーは独自のUCソリューションを開発したが、各社はMicrosoftやIBMのUCプラットフォームとのリンクを作成する必要もあると感じている。こういった取り組みの中心となるのはプレゼンスフェデレーション(連携)機能だが、連携のレベルはベンダーによって異なる。また、有線端末で利用できる機能と無線端末で利用できる機能の違いを見極める必要もある。
IP-PBXベンダーはインフラビジネスにルーツがあるため、無線LAN音声通話およびFMCの推進に積極的であり、IP-PBXベンダー各社のモバイルUCソリューションをサポートするネットワークオプションも広範囲にわたる場合が多い。AvayaとSiemensが開発したWi-Fi・携帯ソリューションは、自動ハンドオフをサポートするモビリティーコントローラーを備える。Ciscoなどのベンダーでは、サードパーティーのFMCサプライヤーとの提携を通じてその機能を提供している。
IP-PBXベンダー各社は、「one-X Mobile」(Avaya)、「Mobile Unified Communicator」(Cisco)、「HiPath MobileConnect」(Siemens)といった名前のモバイルUC製品も提供している。これらの製品の多くは、Windows Mobile、BlackBerry、Nokia Symbianなど複数の端末をサポートする。Nokiaが開発した自社のデュアルモード型端末用ソフトウェアは、無線LAN上でコールを送受信するためのCiscoのSCCP(Skinny Client Control Protocol)シグナリングプロトコルをサポートする。IP-PBXベンダー各社のFMC製品とモバイルUC製品は完全に統合されているわけではないため、サポートされている機能および端末は各製品によって異なる。
補助的FMCハードウェア/ソフトウェアベンダー
サードパーティープロバイダーも、さまざまなモバイルUCソリューションを提供している。Agito NetworksとDiVitas Networksは、自動Wi-Fi/携帯ハンドオフ機能を備え、任意のTDM(時分割多重装置)あるいはIP-PBX上に実装できるモバイルUCソリューションを提供している。Agitoは2009年5月の「Cisco Motion」の発表会で、FMCソリューションを提供するCiscoパートナーに選ばれた。最近CounterPathに買収されたFirstHand Technologiesは、NortelなどのPBXプロバイダーにFMCソリューションをOEM提供している。
こういったプロバイダーのほかにも、多数のベンダーが“モバイルUCパズル”を埋めるさまざまなピースを提供している。Research in Motion(RIM)は、BlackBerryデバイス向けのFMCソリューションを提供するAscendent Systemsを買収した。Speech Design、Zeacom、OnRelay、Cicero Networksなどの企業では、シングルパス(携帯音声ネットワーク上でのDTMF※)もしくはデュアルパス(携帯音声+携帯データネットワーク上でのシグナリング)方式を用いて、主として携帯ベースのモビリティーに依存するソフトウェアベースのソリューションを提供している。だが本格的なモバイルUC機能をサポートする可能性があるのは、デュアルパス方式だけだ。
※DTMF:Dual-Tone Multi-Frequency。電話のトーン信号/プッシュ信号の発信方式。いわゆるプッシュ式電話の「ピッ、ポッ、パッ」音のこと。
Tango NetworksやNextStep Networksといったプロバイダーは、携帯キャリアがFMCを実装するのを支援するソリューションを開発している。また、Airvana、Aricent、RadioFrame Networks、Ubiquisysなどの企業は、コンシューマーおよび中堅・中小企業でのUC利用のトレンドに目を付け、フェムトセルの開発を進めている。
業務生産性を改善するモバイルUC
モビリティーとUCは、業務生産性の改善につながる技術の強力な組み合わせだ。しかし、モバイルUCの導入を成功させるには、漠然とモビリティーにコミットするだけでは不十分だ。導入作業を開始するに当たっては、3年後、5年後、10年後に事業をどう運営するつもりなのかをしっかりと見据え、それをサポートする技術に向けた計画の策定に取り掛からなければならない。そして、モビリティーとUCをこの計画の中心的要素として据える必要がある。短期的な課題としては、モバイルネットワークおよびモバイルアプリケーションを配備・運用するための社内ノウハウを構築する作業を開始すべきだ。いずれにせよ、1つだけはっきりしていることがある──モビリティーとUCは、企業が今後競争で生き残るために必要な俊敏性を実現するための鍵になるということだ。
本稿筆者のマイケル・フィネラン氏は独立系コンサルタント兼業界アナリストで、無線技術、モバイルUC、固定・携帯融合(FMC)を専門とする。ネットワーキング分野で30年以上にわたる幅広い経験を持つ同氏は、同分野のエキスパートとして広く認知されている。無線関連では、Wi-Fi、3G/4G携帯、WiMAX、RFIDなど広範な専門領域をカバーする。最初の著作となる『Voice Over Wireless LANs -- The Complete Guide』(Elsevier刊)を最近刊行した。
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