思うほど導入・活用が進んでいないといわれるユニファイドコミュニケーション(UC)。企業導入の障壁は何か。どのような使い方に適しているのか。UC活用への糸口を探る。
ユニファイドコミュニケーション(以下、UC)は守備範囲が広く、さまざまな背景を持った多くのベンダーが参入している。そのため、「実際にどのようなメリットがあるのか」「手始めに何から着手したらよいのか」といったことがユーザーには分かりにくい面がある。本稿では、UCの活用が効果的な3つの業務場面をピックアップし、そのそれぞれについて製品選択や導入のポイントを解説していく。
UCは、「これまで個別に提供されていた音声(アナログ電話/IP電話)、テキスト(メール/インスタントメッセージング)、動画(Web会議/ビデオ会議)、データ通信といったコミュニケーション手段をIPネットワーク基盤上で統一し、TPOに応じて効果的に活用するソリューション」と定義される。しかしその適用範囲の広さから、ユーザー側が具体的にどういった場面で活用すればいいのかを理解しづらい面もある。そこで、以下にこれまでのユーザーの導入実績を踏まえ、UCの活用がキーとなる業務課題を挙げてみよう。
業務課題1:「アナログ電話の通話コストを削減したい」
近年ではビジネス環境の急激な変化に対応するため、営業拠点展開や社内組織改変をより迅速に、部門間のやりとりをより円滑に行うことが求められてきている。しかし、アナログ電話では拠点間の内線通話コストや組織変更に伴うPBX(構内回線交換機)の運用管理コストが少なからず負担となる。また、顧客獲得のための外線発信コストも営業費用削減の障害となり得る。
業務課題2:「社内コミュニケーションを改善したい」
既にグループウェアやメールなどを社内コミュニケーションの手段として活用しているユーザー企業は多い。しかし、素早い意思決定のためには「社内のキーマンが今どこにいるのか?」をリアルタイムに把握し、確実に連絡できるさらに強力なツールが必要である。
業務課題3:「顧客応対業務の品質を向上させたい」
顧客ニーズの多様化が進み、顧客満足のためにはきめ細かくかつ迅速な対応が欠かせなくなっている。しかし、顧客からの問い合わせ電話に対応するシステムの整備は手薄になりがちで、電話をかけてきた顧客が部署間をたらい回しにされてしまうといったことも少なくない。
これら3つの業務課題を解決するUCの活用方法として以下のようなものが挙げられる。
内線/外線通話コストを削減できる。また電話回線のIP化によって、組織改変時にオフィスやフロアが移動した場合でも、同じ内線番号を維持することができる。その結果、コスト削減と迅速なビジネス展開を両立させることが可能となる。
社内のキーマンの所在を確認し(プレゼンス)、テキストによるチャット(IM)や映像による対話(Web会議)によって、互いが物理的に離れている状況においてもリアルタイムなコミュニケーションが可能となる。結果的にユーザー企業の意思決定や業務遂行のスピードアップが期待できる。
顧客電話番号に基づく適切なオペレーターへの割り振りや過去対応履歴照合によるきめ細かな応対サービスが実現する。また、外出中の営業マンへ顧客の生の音声をボイスメールで伝えることで用件伝達ミスを防止できる。結果的に顧客対応品質が改善し、顧客満足度向上が期待できる。
このようにUCは、多くのユーザー企業が抱える課題を解決する有効な手段である。しかし欧米と比較すると、日本での普及度はまだ高いとはいえない。その大きな要因となるのが、日本独特のコミュニケーション文化やUCに対する誤解である。導入パターン別にそうした普及阻害要因を整理すると、以下のようになる。
活用パターン1への障壁:IP電話やVoIPに対する誤解
インターネット接続環境、社内LAN環境共に日本では整備が進んでおり、中小企業においても既にVoIP活用に支障のない品質レベルに達している。だが、「音声品質が劣る」「電話番号が変わってしまう」といったIP電話やVoIPの黎明(れいめい)期にあった制限事項が現在も続いているという誤解を持つユーザーが少なくない。
活用パターン2への障壁:日本独特の社内コミュニケーション文化
欧米ではダイヤルインなど個人単位での連絡手段が早期から普及したこともあり、プレゼンスで相手の状態(在席中、会議中、取り込み中など)を確認し、適切な手段で連絡を取るという文化が既に定着している。それに対して日本は、グループ単位かつ顔を突き合わせてのコミュニケーションを重視する傾向があり、以下のような声がよく聞かれる。
「プレゼンスは相手のプライバシーを侵害してしまうのでは?」
「IMは遊びの道具であり、業務中の利用は適切でない」
「Web会議システム導入には特殊なハードウェアが必要になるのでは?」
その結果として、コミュニケーション手段としてメールと電話に強く依存した状況が続いている。
活用パターン3への障壁:直接対面を重視する日本の顧客応対文化
日本では顧客応対において直接対面を重視する傾向が強い。そのため、顧客側がIVRやボイスメールに用件を残すことに慣れておらず、欧米と比較すると顧客応対システムを導入してもあまり利用されないといったことが少なくない。
しかし、こうした障壁はUCがもたらす利便性が認知されていくにつれて徐々に解消されると予想される。実際、企業におけるIMの活用や顧客応対サービスにおけるIVR活用は徐々に機会が増えつつある。今後、ユーザーの固定観念や誤解が解消された時点で一気に普及していく可能性も十分にある。ユーザー企業としては過去の習慣にとらわれず、効果的な手段であれば積極的に検討するといった柔軟な姿勢が求められてくるだろう。
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