通話だけじゃない! IP電話による業務コミュニケーション活性化【第2回】
IP電話のコミュニケーション改革、初めの一歩はWeb電話帳
IP電話を活用するUCといっても、さまざまなアプリケーションが連動することが多い。どこから着手すべきか迷ったら、Web電話帳を導入してみるといいだろう。
前回「IP電話の本当の価値とは? 潜在能力を引き出す“次の一手”」ではユニファイドコミュニケーション(UC)ツールを用いてIP電話が通話以上の価値を引き出すことの有効性を説明した。
しかしUCの導入といっても、多種多様な関連アプリケーションがあるため、どこから手を付けていいか分からない場合が多い。そんなときに電話機と連動するアプリケーションとして、置き換えが容易なのは電話帳(社員検索)だ。IP電話と連動する「Web電話帳」システムは、他システムとの連動やソフトウェアのインストールを考えなくても済むため、手軽に導入できる。
Web電話帳システムの機能
Web電話帳とIP電話との連携でまず考えられる機能が、Web電話帳で検索して表示された電話番号をクリックして発信できる「クリック・ツー・コール(Click-to-Call)」だ。これを導入するだけでも、ディスプレーを見ながら電話番号を電話機に入力していたときよりもかなり便利になる。さらに、検索結果の画面で相手先の名前の横に電話機の利用状態を表示すれば、電話帳から発信する前に相手が通話中かどうかが分かる。また、PCの状態を監視するソフトをインストールすると、名前の横にPCの利用状態を表示することもできる。こうした仕組みにより、相手が通話中であったり離席の場合の無駄な発信を防ぐことが可能になる。
一方、着信時に相手の名前や部署名が電話機やPCのディスプレー上にポップアップできる機能を追加すれば、受信者は事前に応対の準備が可能になる。通話開始後には、転送や保留の操作がWeb電話帳からできるようにすれば、電話の操作ミスを防ぐこともできる。
そのほかにも、用件をテキスト入力して相手の電話機上にポップアップ表示させる機能を備えていれば、発信時に確実に相手が出るようにすることができ、重要な用件のときにも確実に伝えることができる。
さらに一歩進んだWeb電話帳の使い方として、社員のプロファイルに専門分野などの付加情報を登録しておけば、付加情報をキーに社員を検索して連絡するアクションも可能だ。例えば「UC」のキーワードで検索すると、UCのことをよく知っている社員を見つけてそのまま電話連絡するといったことが実現する。
Web電話帳の製品例として、以下のようなものがある。
| 製品名 | NSTechno-phone Manager | PhoneAppli |
|---|---|---|
| 提供ベンダー | 日本証券テクノロジー | フォン・アプリ |
| 画面イメージ |
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Web電話帳がIP電話の利用率を改善
以上のように、IP電話を導入したがうまく活用できていないユーザー企業は、簡単に生産性を向上できるWeb電話帳の導入がまずは効果的である。Web電話帳を利用すると、ユーザーはIP電話ならではのメリットを身近に感じやすい。IP電話の細かい使用感の差異による不自由さが低減される効果もある。実際、IP電話を新規導入する際には、今後のUC導入のロードマップの第一歩としてWeb電話帳が導入されることが多い。
ここでWeb電話帳を導入した実例を紹介しよう。A社では、IP電話機に社員が大きな不満を持っていた。社員にとってはそれまで日常的に使っていた電話機がある日突然変更になり、細かい操作方法が変わっていたのが理由だ。もちろん、導入前に操作説明は一通り受けているのだが、従来の電話機に慣れていることから、ストレスなく操作することが難しい。電話機そのものの機能に利用者の意識がフォーカスされてしまい、操作ミスが絶えなかった。
これを改善するために、A社は手始めとしてWeb電話帳システムを導入。その結果、社員検索をWeb電話帳で行うことで、発信までの流れが以前よりもスムーズに行えるようになった。社員もIP電話のメリットを感じることができ、電話機への細かい不満が大きく減ることとなった。
導入に際して考慮すべき点は、いくら便利なツールを導入しても、利用者は従来のツールを継続して使用しようとする傾向があるということだ。この事例でいうと、従来の電話帳や社員検索システムを新しいWeb電話帳に統合すれば、IP電話機の使用率をかなり改善することができる。社内ポータルが導入されている場合は、社員検索の機能をWeb電話帳で置き換え、さらに煩雑な手順を防ぐためにシングルサインオン環境にしておくと、使用率の一層の向上が可能である。
モバイル対応は電話の重要な要素
IP電話の活用を考える場合、モバイルへの対応を考慮に入れることは必須となってきている。今や社員はモバイル機器を持つことは常識となり、職種などによっては固定の電話機すら必要としない人もいる。IP電話の導入時あるいは導入後にモバイルとIP電話の連携を考えることは、必須となっているのだ。
モバイルでは、端末とサービスの両方で大きな変化が起こっている。端末の面では、スマートフォンの活用が大きな流れとなっており、またサービス面では、FMC(Fixed Mobile Convergence)サービスの利用で固定・携帯電話間での通信費の定額化が可能となっている。さらには、スマートフォンの普及とともに、モバイルアプリケーションに再び光が当たっている。企業用途のスマートフォンや携帯を語る上では電子メール、予定表、CRM、ERPとの連携も重要な要素となるが、今回は音声通信周りの機能にフォーカスしてIP電話活用ソリューションを解説する。
FMC
FMCサービスは主要な携帯キャリアから提供されている。主な特徴は、簡易的なPBX機能と、固定・携帯間での通話料金の定額制だ。キャリアごとのサービスの主な違いは、料金と発着信時の発信者番号透過送信の仕様である。
| キャリア | NTTドコモ | ソフトバンクモバイル | KDDI(au) | ウィルコム |
|---|---|---|---|---|
| サービス名 | オフィスリンク | ホワイトオフィス | ビジネスコールダイレクト | W-VPN |
| 内線番号利用 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| PBX付加機能 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| PBX付加機能は携帯間のみ。呼制御装置との接続はT1(デジタル専用回線)での接続が一般的だが、キャリアとPBXとの組み合わせによりIP接続も可能 | ||||
同時鳴動
同時鳴動とは、固定電話あての着信時に、デスクの電話と携帯とを同時に鳴らすことができる機能のこと。この機能によって、顧客からの電話へ迅速に応答できるようになり、顧客満足度の向上に寄与する。コスト面では、同時鳴動時に携帯で応答した場合でも、FMCサービスと組み合わせることで通信費を定額化できる。一方セキュリティ面では、
- 顧客に携帯の電話番号を教える必要がないので情報の保護になる
- いったん社内を経由することになるため発着履歴を残すことができる
- 通話録音も可能
というメリットがある。
オフィス経由発信
携帯からの発信を、オフィス経由の発信にすることができる機能。具体的には、発信時に後述の携帯Web電話帳を利用することになる。これによって、
- 携帯の番号を相手に通知しなくてもよい
- オフィス経由で発信するため録音が可能になりセキュリティを保つことができる
というメリットがある。また、通信費も会社と携帯間はFMCサービスを利用することで定額化できる。
携帯Web電話帳システム
携帯Web電話帳システムは、Web電話帳を携帯電話に対応させたものだ。顧客や会社の電話番号の情報を携帯に保存しないため、端末紛失時でも情報漏えいのリスクを抑えることができる。また、Web電話帳からの発信をオフィス経由の発信とすることで、上記のメリットのように一層のセキュリティレベルを保てる。加えて、社員の検索結果にプレゼンスを表示することで無駄な発信を削減することも可能だ。
モバイルを導入した例
次に、「モバイル+Web電話帳システム」を導入した企業の事例を2つご紹介する。
B社では、それまで電話機として社員に携帯電話を配布しており、その通信費の高騰に頭を悩ませていた。というのも、社内に固定電話が配置されているにもかかわらず、携帯電話を利用する社員の方が圧倒的に多かったためだ。そこで同社は、FMC、同時鳴動、オフィス経由発信、Web電話帳を組み合わせて導入し、セキュリティの確保や携帯の通信コストの削減、顧客満足度の向上を図った。特にコストについては、月額数十万円掛かっていた携帯費用を数万円にまで削減でき、大きな成果を上げた。またC社では、業務用の電話端末を携帯からスマートフォンに切り替えたのを機にWeb電話帳を導入。スマートフォンならではのメール・カレンダー連携機能と同時に、FMC、同時鳴動、オフィス経由発信の機能も導入することで、通信費の大幅な削減を実現した。
FMCでは携帯間での簡易的なPBX機能(保留、転送、ピックアップ)も可能となっているが、導入企業は特に固定と携帯との通話コストが定額化できる点にメリットを感じることが多い。従ってFMCだけではなく、従来提供されている携帯・固定電話間の通話定額化サービスを選択する場合もある。この場合、内線番号発信や発信番号の透過といった機能面で制約が生じるものの、コストはFMCより低く抑えることが可能になる。
ちなみに、オフィス経由発信を社員に動機付ける手法として、携帯から直接発信した通話コストに対して、会社支払いの上限を設けることも有効な施策である。ただしオフィス経由発信については、企業ごとにキャリア側が対応可能かどうかが違ってくるので、事前にキャリアへの相談が必要だ。
次回は、Web会議システムと電話システムを連動させることにより、出張費とシステム利用料の両方を削減した事例などについて解説する。
<筆者紹介>
荒牧大樹
ネットワンシステムズ 営業推進本部
2001年よりIP電話機構築にかかわる。国内の大手金融や製造系の大規模なUCネットワーク構築において、先端UC技術をいち早く取り入れてきた。メーカー以外の企業のエンジニアとして、UC技術の最高資格である「CCIE Voice」を国内で初めて取得。現在はネットワンシステムズにてUC製品の先端技術サポートを行っている。
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