ERP製品カタログ【第4回】インフォベック
国産最後発「GRANDIT」が目指す「ERPのあるべき姿」
ERPパッケージ「GRANDIT」が順調にシェアを伸ばしている。最後発ながらユーザー企業に支持される理由は「ERPのあるべき姿」を目指しているからだという。
ユニークな出自を持つ国産ERP「GRANDIT」
インフォベックが提供する統合ERPパッケージ「GRANDIT」は、ユニークな製品だ。同製品の初代バージョンが発表されたのは2004年、ERPパッケージ市場では既に数多のベンダーの製品がひしめき合っており、市場はもはや飽和状態だといわれていた時期だ。そんな中、国産ERPパッケージベンダーの最後発として市場に打って出た同社は「なぜ今さらERPパッケージなのか……」という周囲の懸念をよそに順調にシェアを伸ばし続けた。ミック経済研究所の調査「基幹業務パッケージソフトの市場展望 2009年度版」によると、2009年、中堅企業(年商50億円~500億円)向けのERP・業務パッケージ出荷ライセンスのシェアで、GRANDITは第3位に入るまで売り上げを伸ばしている。
GRANDITが開発された経緯も大変ユニークだ。同製品の開発やバージョンアップ、機能強化などは、13社の企業が参画する「GRANDITコンソーシアム」が担っている。初代バージョンは同コンソーシアムの初期参加企業10社の共同開発によって作られ、その後はコンソーシアム内に設けられた運営委員会、プロダクト部会、マーケティング部会などでGRANDITの機能強化や製品戦略についての協議と意思決定が行われている。インフォベックはこのコンソーシアムを運営するとともに、GRANDITの権利関係を集約して保守やバージョンアップの責任主体を担うベンダー企業として、コンソーシアム発足と同時に新たに設立された会社だ。
このようなコンソーシアム方式によるパッケージ製品開発を思い立った経緯を、インフォベック 事業推進ユニット ユニットリーダー 高橋 昇氏は次のように説明する。
「インフォコムは、もともとは旧日商岩井や帝人の情報子会社(2001年にそれぞれの情報子会社が合併)。外販ビジネスを展開するために自社製パッケージ製品を開発したい、という動機からGRANDITの企画がスタートした。しかし、当時同じようなビジネスプランを考えていた情報子会社はほかにもたくさんあった。ならば、そうした会社のノウハウを結集させて製品を開発すればきっといいものが作れるだろうし、多くの販路も確保できるのではないかと考えた。そこでインフォコムが母体となってコンソーシアムを立ち上げるとともに、インフォベックを設立した」
すべての機能の統合を前提に一から設計
このように大変ユニークな出自を持つGRANDITだが、最後発としてERPパッケージ市場に打って出ることに不安はなかったのだろうか? 高橋氏によれば、逆に最後発であることを強みに変えて開発したのがGRANDITなのだという。
「古くからあるERPパッケージ製品の多くは、別々に開発した業務パッケージを互いにつなぎ合わせることでERPとしている。そのため、データの二重入力などをユーザーに強いることもあり、使い勝手のみならず内部統制の観点からも問題があると指摘されてきた。その点GRANDITは、当初からすべての機能を統合することを前提に設計されている」(高橋氏)
GRANDITは、経理、資産、経費、販売、調達在庫、製造、債権、債務、人事、給与と10のモジュールから構成するが、それぞれが個別に開発されたのではなく、当初の設計段階からすべてを統合することを前提に設計・開発されたという。これは、過去の資産にとらわれることなく、まったく新規に一からアーキテクチャを設計できる後発製品ならではの強みといえよう。インフォベック 事業推進ユニット 事業推進グループ コンサルタントの鈴木將路氏も次のように述べる。
「内部統制対応のころから、ユーザー企業もマスターデータ統合の重要性など、ERPパッケージの統合性についての意識が高まってきた。実際、そうした企業が出すRFPには、『統合ERPであること』という項目が必ず入るようになった。そうした点で、当初から統合ERPとして設計・開発されたGRANDITは高く評価されている。ERPのコンサルタントからも『あるべき姿のERPが実現されている』という評価をよくいただいている」
Web対応とマイクロソフト製品の全面採用
また、当初からWeb完全対応を前提としたアーキテクチャを採用していることも、GRANDITの大きな強みの1つだという。Webアーキテクチャは、特に企業グループ内でERPを運用する際にメリットがある。データセンター内のサーバ環境にERPのすべての処理を集約させて、それをネットワーク経由で各グループ企業から共同利用するWebアプリケーションの形態となるため、グループ企業側で個別のシステムを構築する必要がなくなる。グループ内でシステム一元化が図れるだけでなく、運用管理の手間やコストも大幅に削減できる。
GRANDITは「Windows Server 2008」や「SQL Server 2008」「.NET Framework 3.5」といったマイクロソフトの製品および技術を全面採用しているが、このこともコスト削減に寄与しているという。
「マイクロソフトの製品は保守料が安く、ミドルウェアも初めから無償で付属しているものが多い。中長期的なランニングコストを低く抑えることができる」(高橋氏)
さらにGRANDITは、BI(ビジネスインテリジェンス)やワークフロー、ECといったERP以外のアプリケーション機能も標準で装備する。これも後発であるメリットを生かし、「次世代のERPパッケージとして、今後必要とされる機能は何か?」といった点をじっくり吟味した上で製品の企画・開発に取り組んだ結果だという。
コンソーシアム方式で広範なソリューション
これまで紹介してきたように、製品の機能やアーキテクチャの面でさまざまな特徴を持つGRANDITだが、ソリューション面でも大きな強みを持っているという。その強みの源泉は、冒頭で紹介した「コンソーシアム方式」にあると高橋氏は説明する。
「GRANDITコンソーシアムに参加している企業は、それぞれ特定の業種に向けたソリューションのノウハウを持っている。そうした企業のコンサルタントは、専門対象の業種に関しては極めて深い業務知識を持っているため、GRANDITをどのように導入すれば最も効率が良く、かつ最大の効果を上げることができるのかが分かり、あらゆる業種の企業に優れた提案を行うことができる」
また、こうしたノウハウをGRANDITのオプションモジュールとして実装した「業種別テンプレート」も、各参加企業から各種提供されている。こうしたテンプレートを適用することで業務と製品の間のギャップを極小化し、迅速かつ確実にGRANDITを導入できるようになるという。
さらに同社では、テンプレートだけでなく、過去の導入プロジェクトの成功事例から抽出したSEノウハウも提供している。「GRANDIT-Symphony」というサービスだ。これは、ユーザーが抱えるIT課題を約30通りに分類し、それぞれの領域で過去にGRANDITを導入して課題解決に成功した事例を紹介する内容だ。
「単にものを提供するだけでなく、導入のメソドロジーやプロジェクト運営のノウハウといった情報を事例として提供することで、より顧客の課題解決に貢献できると考えている。こうした幅広いノウハウや事例情報を結集できるのは、コンソーシアム方式ならではの強み。1社だけでは、こうしたサービスは提供できないと思う」(鈴木氏)
影響を冷静に見定めながらIFRS対応を
昨今、各ERPパッケージベンダーが製品の訴求ポイントとして盛んにアピールしているIFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)対応についてはどうだろうか? 鈴木氏は次のように説明する。
「現時点でIFRSの制度自体は、コンバージェンスも含めて連結決算にフォーカスしつつあるとみている。会計の専門家はこの『連結先行』の流れを把握しているが、国産パッケージベンダーはそのことをユーザーにきちんと説明できていないように思える。そこでわれわれは、まずは連結先行を前提とした上で、現実的なソリューションを提供していきたいと考えている」
同社では、IFRSに対応するためのシステム構成として3つのパターンを定義している。1つ目は、個別決算側には一切、手を入れずに、連結決算パッケージですべての組替仕訳を行うというパターン。2つ目のパターンは、子会社側で個別決算用とIFRS決算用の帳簿を二重に保有するというもの。そして3つ目は、個別決算と連結決算の間にグループ統一会計システムを置き、そこで自動仕訳などの仕掛けを実装する方式である。
これら3つのパターンすべてに対応するために、インフォベックおよびGRANDITコンソーシアムでは、2つの施策に取り組んでいる。
まず1つ目はGRANDITに対するIFRS対応機能の追加で、これはあくまでも単体決算をベースに行っていくという。IFRSにおける連結先行の流れが明確になってきた中、では個別会計側では何をやっておけばいいのか? こうした疑問に答える形で、コンバージェンスやアドプションといった言葉に惑わされずに、IFRSが単体決算に及ぼす影響度合いを冷静に見極めながら順次GRANDITの機能強化を行っていくという。現時点では2012年にすべてのIFRS対応機能を実装したGRANDITをリリースする予定だが、もちろんその後も随時必要に応じて機能強化を続けていくという。
決算早期化ソリューションを提供
もう1つの施策は、連結決算に関するものである。具体的には、ディーバが提供する連結決算システム「DivaSystem」とGRANDITを組み合わせた決算早期化ソリューション「GRANDIT高速決算 ALL in ONE」を提供する(参考記事:決算早期化ソリューションを提供、インフォベックとディーバが協業)。両製品を密接に連携させることにより、個別決算と連結決算の間に潜むボトルネックを解消し、大幅な決算早期化を実現するという。同ソリューションは川崎重工業グループの導入事例がベースになっている。川崎重工業グループでは両製品の利用で連結決算の作業期間を約半分にまで短縮できたという。IFRS対応における同ソリューションの意義について、鈴木氏は次のように述べる。
「IFRS対応では上場企業の決算プロセスに大きな負荷が掛かることが予想されるため、決算プロセスの無駄を省いて対応時間を極力短縮することが不可欠。従来のソリューションでは個別業務、個別決算、連結決算、そして開示のそれぞれの業務の個別最適化はできたが、実は本当の無駄やボトルネックはこれらの間の連携部分に潜んでいる。『GRANDIT高速決算 ALL in ONE』はこれら個々の決算業務をスムーズに連携させて、ボトルネックを除去することを目的としている」
以上のようにインフォベックでは、「GRANDIT単体でのIFRS対応」、そして「連結会計システムとの連携」という2つの施策を軸にIFRS対応ソリューションを展開していく予定だという。しかし、決してこれが最終ゴールというわけではないと高橋氏は述べる。
「IFRSの強制適用後、当面はほとんどの企業が連結決算側の組み替えを中心に対応することになるだろう。しかし、ERPとしての本来あるべき姿を考えると、各業務システムが現場から取得したデータが初めから正しく色分けされていて、それがそのまま一気通貫で決算まで上がっていくべき。最終的には、そういう一貫した体系を実現できるソリューションを目指していきたいと考えている」(高橋氏)
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