サーバ仮想化におけるライセンスの選択【第1回】
サーバ仮想化導入の前に検討すべきこと ~複雑化するライセンスを理解する
サーバ仮想化導入の前に明確化しておくべき観点を整理するとともに、仮想化ソフトウェアの概要を紹介する。
サーバ仮想化環境におけるライセンスの考え方は、非仮想化環境と比べ、考慮すべき層が増えたことで複雑になる。本連載では、期待する恩恵を享受するためのライセンス選択のポイントとケーススタディによるコスト試算を、導入の際の検討指針として提示する。
近年、仮想化技術は広く浸透する道をたどり、“導入検討が当たり前”の風潮すら出てきた。その背景には「コスト削減効果」や「運用管理負荷の軽減」への期待が大きい。しかし、何も考えず同技術を採用するだけでは逆にコスト増、運用管理負荷増になってしまう場合もある。
本稿では、サーバ仮想化導入の前に明確化しておくべき観点を整理するとともに、仮想化ソフトウェアの概要を紹介する。
サーバ仮想化導入の前に明確化することは、以下の3点である。
- 対象
- 導入により受けたい恩恵は何か
- 導入により得られる恩恵のレベル感
1.対象
ライセンスの観点から、サーバ仮想化において意識する必要のある構成要素は、「ハイパーバイザー」「運用管理ツール(ハイパーバイザー)」「ゲストOS」「運用管理ツール(周辺運用)」の4つとなる。
この中で、重要性を増してきているのは最後の「運用管理ツール(周辺運用)」だ。特にプライベートクラウド構築も見越している場合などは、以下の表のような分野の運用が問題となるため、専用のツールを導入する、もしくはその可能性を踏まえて製品選択を行った方がコストを抑えられる場合もある。
周辺運用の分類
| 分野 | 説明 |
|---|---|
| 運用監視 | 物理サーバや仮想マシンの稼働監視、仮想マシン上のミドルウェアやアプリケーションのサービス監視などを行い、障害を早期に検知する |
| 仮想マシンライフサイクル管理 | 仮想マシンの作成、構成変更、削除などのワークフローを制御し、円滑な仮想マシン利用をサポートする |
| バックアップと可用性 | 仮想マシンファイルやアプリケーションのデータのためのバックアップ、ライブマイグレーションやHAなどの可用性を担保する |
| ユーザー管理 | 仮想マシンにログインするためのアカウントの管理を行う |
| セキュリティ | ウイルススキャン、セキュリティパッチ、IDS/IPS、WAFなどを採用し、セキュリティを確保する |
| 監査/統計 | 監査対策のためのログや、仮想マシンのパフォーマンス分析などの統計情報を管理する |
| 課金管理 | 現存する仮想マシンのスペックを基に、利用部門ごとに利用料を案分する |
| リソース/キャパシティー管理 | 現存する仮想マシンのスペックや、仮想マシンが稼働している現在の仮想サーバがどれであるかの情報をモニタリングし、課金管理や監査/統計、リソース拡張計画の基礎データとする |
2.導入により受けたい恩恵は何か
次に、サーバ仮想化導入により受けたい恩恵は何であるかを検討する。「どんなことを達成したいのか」「どんな機能が必要なのか」を考えることで明確化されていくだろう。例えば、以下のような観点が想定される。
- どんな環境として利用するのか。規模や利用用途、利用期間はどれくらいか
- 決められた数のサーバを集約したいのか、できる限り多くのサーバを集約させたいのか。集約させたいサーバの個数の最低数は幾つか
- 利用者が発見するより早く障害発生状況をキャッチする必要があるか否か
- 仮想マシンを停止せずにメンテナンス対応を行う必要があるか否か
- 必要とするセキュリティ対策は何か
- 利用するゲストOSの種類は? Windows系とLinux系のどちらが多いのか
この検討は、仮想化ソフトウェアの機能一覧を見ながらボトムアップ的に洗い出す、「運用負荷軽減」といった目標からトップダウン的に導出する、双方のやり方で実施可能である。
3.導入により得られる恩恵のレベル感
最後に、得られる恩恵がどの程度のレベルであればよいかを検討する。これはサービスレベルと呼ばれるものになる。例えば、前項で挙げた欲しい機能の稼働要件、各仮想マシンの性能要件や、許容できる障害時の復旧時間、障害検出から報告までの時間などの対障害要件などを定めることが該当する。
注意したいのは、すべてに“最高”を求めないことだ。仮想マシンの性能も常に申し分なく、システム無停止、障害も即座に検知、対応されて報告される……といった具合に最高を求めるのはもっともなことだ。しかし、最高のサービスを達成するには相応のコストが掛かるのだ。仮想マシンの性能を常に保証しようとすれば、基盤上で稼働させるサーバの集約率を高くすることはできないし、システム無停止を実現するには高性能な監視システムとネットワークの導入、物理レイヤー、仮想レイヤー、DBMSなどのミドルウェアレイヤー、アプリケーションレイヤーすべての層での冗長化やHA(高可用性)、クラスタリングを行わなければならなくなる。コスト削減を狙って導入したのに、結果的に非仮想化環境よりも構築・運用管理コストが掛かってしまうようでは本末転倒だ。「その業務では、本当にそこまでのハイレベルな機能がないと困るのか?」「サービスレベルの異なるサーバを同じ仮想化環境上にまとめようとしていないか?」などを冷静に見直す必要があるだろう。
加えて、制限となる事項も洗い出しておく。例えば、仮想サーバ(仮想化ソフトウェアをインストールする先の物理筺体)が既に存在している場合、CPUのソケット数やコア数を考慮するライセンスには縛りが発生する。また、現在採用している運用監視ツールを用いて仮想環境の運用監視を行いたい場合、運用監視ツールが採用予定の仮想化ソフトウェアに対応している必要がある。
仮想化ソフトウェアの製品群
では、明確化した内容に対するソリューションとなり得る仮想化ソフトウェアの製品群に関して概要と特徴を述べよう。仮想化ソフトウェアの製品群には多くの種類があるが、本連載では以下の4つを対象とする。
仮想化ソフトウェア製品群の概要
| 製品名 | 概要説明 |
|---|---|
| VMware vSphere4 | x86プラットフォーム向け仮想化ソフトウェア市場をリードしてきたベンダーであるヴイエムウェアが提供する仮想化ソフトウェア製品。管理運用の自動化機能を豊富に備えており、スイート製品として提供している。パフォーマンスや集約率を上げるための最新技術の実装もいち早く導入している |
| Hyper-V 2.0 | マイクロソフトが提供する仮想化ソフトウェア製品。Windows Server 2008 R2に含まれており、同OSを導入すれば実質無償で入手できる。1ライセンスに対してエディションに応じた仮想インスタンスライセンスも付属している |
| Citrix XenServer | オープンソースのハイパーバイザーであるXenをベースとしたシトリックス・システムズ・ジャパンの仮想化ソフトウェア製品。ハイパーバイザと、上記「ライセンスの観点から意識する構成要素」の図における運用管理ツールは無償で提供され、運用管理ツール(周辺運用)の部分のみが有償となる |
| Red Hat Enterprise Virtualization(RHEV) | レッドハットが提供する、Linuxの標準仮想化機能「KVM」を使った仮想化ソフトウェア製品。Red Hat Enterprise Linux(RHEL)を採用したシステムとのハードウェア/ソフトウェアの互換性が高く、Hyper-V同様にエディションに応じた仮想インスタンスライセンスが付属している |
次回以降、上記で明確化した要件を具体的に取り上げ、これら製品群を吟味し、ライセンス導入コストがどのように変化するかを検討していく。
西川 麗(にしかわ れい)
電通国際情報サービス ビジネスイノベーション本部 クラウド事業推進センター クラウドアーキテクトグループ
Java開発環境/ソフトウェアテストの技術検証、コンサルティングを経て、現在は基盤環境である仮想化技術の技術検証や、VMware製品を中心としたクラウドサービスの構築・運用設計に従事している。
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