ERP成功のヒント【第3回】
丸投げに陥らないERP導入ベンダー選定、そのポイントは?
ERP導入ベンダーは企業のIT部門にとって二人三脚で導入プロジェクトを推進していく同志であり、ERP導入の成否に大きく影響を与える。選定のためのポイントをお伝えする。
第1回「ERP選定でIT部門がリーダーシップを発揮するには」、第2回「経営者が納得するERP選定案の作り方」では、ERP製品の選定でIT部門が果たすべき役割を説明した。プロジェクトを成功させるためにERP製品の選定が重要な要素であることは当然だが、優れたERP製品を選定できたからといって成功が約束されるわけではない。ERP成功のためには、加えて優れた導入ベンダーの支援が必要である。今回は、そのERP導入ベンダーの選定についてIT部門の視点から説明する。
ERP選定と同じぐらい重要な導入ベンダー選定
ERPの導入支援は、製品ベンダー自身が行うこともあるが、別のコンサルティング会社やシステムインテグレーターが行うことの方が多い。従ってERP製品の選定と導入ベンダーの選定は別々に行われ、それぞれの選定は同時平行で実施されるケースが一般的だ。
ERP製品と導入ベンダーが決まると、いよいよ導入フェーズに入っていく。導入ベンダーは、ERPパッケージの機能や設定に精通しており、かつ、業務プロセス設計や業務改善の知識・経験を持っている。そういったノウハウを駆使して顧客企業のERP導入を支援するのだ。ERP導入の中心となるIT部門は、導入ベンダーとまさに二人三脚でERP導入プロジェクトを推進していくことになる。その意味で導入ベンダーの選定はERP製品の選定と同じぐらい重要であり、ERP導入の成否に大きく影響を与えるのである。
導入ベンダーを評価するポイント
導入ベンダーの選定はベンダーが提出した提案書などの情報を基に、さまざまな観点から比較検討することになる。ERP製品の選定であれば、要件と機能の適合度といった比較的分かりやすい基準をベースに選定を進めることができる。しかし、導入ベンダーの選定は客観的な選定基準がない。そのためERPの導入目的や導入プロジェクトの状況を勘案し、導入ベンダーに求める評価ポイントを定めた上で、選定を進めることになる。以下は、導入ベンダーの選定時に評価・検討すべきポイントのうち、筆者が重要と思う評価ポイントである。
(1)過去の導入実績
ベンダーの過去のERP導入実績を以下のような観点で評価する。
- 参画したERP導入のプロジェクト数とその概要、顧客企業の規模、業種、対象範囲
- 同業他社への関与件数
- プライムとして受注した案件数
など。
(2)得意分野
各ベンダーは、それぞれ得意分野を持っている。広い分野をカバーしている大手のベンダーもあるが、会計、人事、生産管理といった得意分野を持っていて、それをアピールポイントとするベンダーも多い。導入ベンダーの得意・不得意が自社のERP導入範囲とマッチしているか検討する必要がある。
(3)導入方法
導入手法とはウオーターフォール型、プロトタイピング型といったERP導入における手法で、導入ベンダーによっては独自の導入手法を確立している場合もある。本稿では導入手法の優劣については論じないが、ベンダー選定においては自社のERP導入を取り巻く状況に合った導入手法であるかどうかをよく検討すべきである。
(4)担当コンサルタントの知識・経験
担当コンサルタントのERPパッケージに関する知識や業務知識、過去のERP導入経験などが評価ポイントとなる。担当コンサルタントが自社の課題の解決策を提案する能力があるかどうかを評価する(後述)。プロジェクトリーダー以外の主要なメンバーも含めた候補者と、実際に面談して評価することが有効である。面談の際には、自社が抱えている課題をぶつけてみるとよい。分厚い提案書を読んでも分からない本当の意味での提案力が分かる。
(5)コスト
前回述べたように、コストの問題は、経営者が重要視する大切なポイントである。ERPが予定通り順調に稼働し、業務効率化などのERP導入目的が実現できたとしても、そのために莫大なコストが掛かってはそのERP導入は成功とはいえない。コストだけを指標としてベンダーを選定するのは避けるべきだが、ベンダー選定においてコストは重要な選定ポイントである。
確認ポイント:大手ベンダーか中小ベンダーか?
実際の導入ベンダーの選定においては、大手ベンダーか中小ベンダーかといった観点で悩む場面が多々ある。大手ベンダーの豊富な実績や安心感は捨てがたいものがある。半面、一般的に中小ベンダーであればコストを低く抑えることができ、また導入の過程でフットワークの良い対応が期待できる。いずれにしても、重要なことは、大手ベンダーの良さ、中小のベンダーの良さをよく見極めて選定を進めることである。
特に、中小ベンダーは継続してサービスを提供する能力があるかどうかといった面で大手ベンダーと比較して大きく見劣りする傾向がある。ベンダー選定の中心となるIT部門は、社内の審査部門や経理部門などと連携して候補となるベンダーを綿密に調査する必要がある。その上で、リスクに見合ったリターンがあるなら、リスクを取りに行く、すなわち中小ベンダーを選定することを積極的に検討すべきだろう。それこそが投資判断である。
確認ポイント:担当コンサルタントの資質
では、導入ベンダーの選定においてどのポイントを特に重視したらよいのだろうか? 筆者の経験では、担当コンサルタントの資質がプロジェクトの成否を大きく左右すると考える。極論するなら、導入ベンダーの選定とは、担当コンサルタントの選定といっても過言ではない。それほど重要な要素なのである。ここでいうコンサルタントの資質とは、その能力とそのマインドの両面を指す。
(1)コンサルタントの能力
ERP導入におけるコンサルタントは、ユーザー企業から出てくるさまざまな要求を理解して、それらを考慮しつつ業務とシステムの両面から着地点を探り解決策を提案することが求められる。そのためには、ユーザー企業の事業や業務を理解する能力、パッケージに関する深い知識、コミュニケーション能力などを総合した能力が必要となる。
(2)コンサルタントのマインド
会社側のプロジェクトメンバーと一緒にERP成功のために取り組むマインドを持ったコンサルタントかどうかが重要である。こういった、コンサルタントの能力やマインドは実際に候補者と面談をしないと見極めづらい。必要であれば、何度も面談して確認すべきである。
理想のベンダー像を間違えない
導入ベンダー選定を進める上で重要なことの1つは、理想のベンダー像を間違えないことである。ERP導入の主体は言うまでなくユーザー企業である。ユーザー企業が主体的にERP導入に取り組まなくてはERP導入の成功は望めない。1から10まで導入ベンダーにやってもらおうという丸投げの姿勢、もしくは、お金を払っている以上やってくれて当たり前という姿勢はERP導入の成功を阻害する要因となる。こういったことをよく理解しないと、導入ベンダーの選定において「ここに任せておければ全部やってくれるから安心」という間違った理由で選定しまうことになりかねない。親切なベンダーが必ずしも理想のベンダーとはいえないのである。ベンダー選定は、あくまで導入の主体はユーザー企業であることを大前提において進めなければならない。
企業変革は永遠、ERPはツール
ERP導入を単にシステムの導入ととらえれば、予定のコスト以下で予定通りに稼働すれば成功といえる。しかし、ERPはそもそも企業変革のツールであり、単に順調に稼働すれば成功というわけではない。ERP導入の中心となるIT部門は、その企業変革の先頭に立つことになる。その意味で、導入ベンダーはIT部門と共にその企業変革の同士としてプロジェクトに参画してくれる仲間でなければならない。IT部門は、これまでのシステム導入の経験を基に、導入ベンダーが企業変革の同志になり得るか否かを見抜くことが要求される。まさに、IT部門の真価が試されるのである。
五島伸二(ごしましんじ)
アドバ・コンサルティング株式会社 代表取締役 公認会計士
監査法人トーマツにて会計監査、IPO支援、マネジメントコンサルティングに従事。トーマツ退所後は多数のシステム開発プロジェクトやERP導入プロジェクトに参画し基幹システム構築を行う。その後、上場会社の経理部長を経て、2010年3月にアドバ・コンサルティング株式会社を設立。それまでの経験を生かし、会計とITの専門家としてシステム開発や業務改善コンサルティングに取り組んでいる。
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