Twitter上で開発者の怒り爆発
アプリケーション仮想化によるIEの実行は不可──方針を堅持するMicrosoft
開発者はWindows 7上において、IEの複数バージョンでアプリケーションテストを行うためにアプリケーション仮想化ツールを利用しているが、Microsoftはこうした使い方を禁じている。
IT専門家やベンダーは、アプリケーション仮想化ツールを使ってInternet Explorer(IE)を実行する方法をユーザーや開発者に提供したいと考えている。しかし、米Microsoftはそうしたツールを使ったIEの実行を禁じており、2010年11月中旬、アプリケーション仮想化技術を使ってIEを自社のWebサイトで提供していたベンダーに断固たる姿勢を示し、提供をやめさせた。
米VMwareのVMware ThinAppなど、アプリケーション仮想化ツールの一般的な使い方の1つは、Windows 7上でIEのレガシーバージョンや複数のバージョンを動かすことだ。しかし、MicrosoftはIEの仮想化をサポートしていない。IEはWindowsの一部であり、同社はIEが同OSから切り離されることを望んでいないからだ。
米Spoon(旧社名:Xenocode)は仮想化を利用して、ユーザーがクラウド上の各種デスクトップアプリケーションを実行できるようにしている。同社は11月中旬まで、開発者が自らのアプリケーションをIEのさまざまなバージョン上で実行し、テストするための手っ取り早い方法を提供していた。
SpoonのCEOを務めるケンジ・オバタ氏は、2010年11月中旬にTechEd Europe 2010カンファレンスから戻ると、「Microsoftの弁護士からの不吉な手紙」が待っていたと語った。その手紙には、SpoonのWebサイトでIEを配布するのは、Microsoftの知的財産権の侵害に当たると記されていた。
オバタ氏は、SpoonのWebサイトでIEを提供しないよう求めるMicrosoftの要請には応えなければならないが、IEのこうした提供形態は、顧客が求め、必要としているものだと語った。また、MicrosoftがIEの仮想化を規制することで、ユーザーのWindows 7へのアップグレードが遅れるかもしれないと指摘した。
「IEはMicrosoftの製品であり、どのような使い方を許可するかは彼らの判断だ。このことには何の異議もない。しかし、彼らは自分の首を絞めている」とオバタ氏。「Microsoftのためにも顧客のためにもならない。彼らは、開発者がMicrosoftとそのWebブラウザをサポートするために使っていたツールを台無しにしてしまったのだ」
現在、SpoonのWebサイトには、次のような告知が掲載されている。「われわれはMicrosoftから、Internet Explorerをこのサービスから除外するよう求められた。われわれはMicrosoftに協力し、クラウドを使って彼らのWebブラウザにアクセスする機能を早期に復活させることを目指している。しかし、目下のところ、Internet Explorerにアクセスする機能は無効にしている」
SpoonがブログとTwitter(@spoonapps)でこの措置を発表した際には、何千人もの顧客がTwitterやブログ、電子メールで不満の声を上げた。
「Twitterでは開発者の怒りが爆発した」とオバタ氏。「何かに対してあれほど激しい反応が返ってきたことはなかった。いろいろののしる表現を覚えたよ」
例えば、あるWeb開発者はこうツイートした。「Microsoftはくたばればいい。@spoonappsにIEをspoon.netから外させたのだから」。別の開発者は、「Webブラウザでテストするのが面倒になった」とコメントした。SpoonがまたIEをサポートすることを認めてほしいと、投稿でMicrosoftに訴えた開発者もいる。「認めてもらえないなら、われわれはMicrosoftのゴミをサポートするアプリケーションをどうやって作ればよいのか」
Microsoftは、Windowsを利用する顧客が自社のデータセンター内でIEを仮想化することも禁じている。それでも一部の顧客はそうしているが、問題が発生してもMicrosoftのサポートは得られないことを承知の上でだ。
米Gartnerのアナリスト、ニール・マクドナルド氏も、9月に自身のブログでMicrosoftに対し、アプリケーション仮想化ツールを使ったIEの実行をサポートするよう呼び掛けた。「それは、OSと不可分とはされておらず、アプリケーション仮想化技術を使って仮想化でき、次の移行時にもこうした問題を避けられるようなWebブラウザだ」。IE 6の仮想化に対して強硬な姿勢を取ることで、「Microsoftは顧客を怒らせ、ほかのWebブラウザに乗り換えるしかないと思わせてしまう恐れがある」と、マクドナルド氏は書いた。
Windowsライセンス保有者がApp-Vなどのアプリケーション仮想化ツールを使ってIEを仮想化することに対するMicrosoftの姿勢は、ほとんど支持されていない。一方、サードパーティーによるIEの配布に関するMicrosoftのルールは、よく知られるようになってきている。
Microsoftの立場では、企業のIT部門にIEをWindowsから切り離して実行することを許可するのは、「顧客にWindows 7と最新のアプリケーションへのアップグレードを促す」という同社の戦略を阻害することになる。
Microsoftの公式見解は、IEは、ターミナルサービスやVDI(仮想デスクトップインフラ)、HVD(ホスト型仮想デスクトップ)を使うか、あるいはWindows XP ModeによってXPを仮想マシン上でローカルに実行することで仮想化できるというものだ。だが、XP Modeを使う方法は完ぺきではないというのがIT専門家の見解だ。XP Modeを使うと、より多くのメモリが必要になり、パフォーマンスが低下してしまうからだ。
VMware ThinAppのようなアプリケーションストリーミング製品も、IEを仮想化するためによく使われている。実際、VMwareは、Windows 7の普及を追い風にThinAppの導入が広がっていると述べている。このツールは企業のIT部門に、Windows 7上でレガシーアプリケーションを確実に動作させる方法を提供するからだ。
「われわれのスタンスは、顧客が求めるものを提供するというものだ。そしてわれわれは、顧客の声に耳を傾けるようMicrosoftに働き掛けている」と、VMwareのデスクトップ製品マネジャー、ラジ・マレンパティ氏は語った。「顧客は、Windows 7にスムーズに移行する方法を求めている。アプリケーション仮想化は、彼らにその方法を提供する」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
5
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
10
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー