診療所向け電子カルテ製品紹介:S&I、LSC
SaaS形式でも活用できる低コスト電子カルテ「DolphinPro」
医療情報を取り扱うガイドラインの改定で、電子カルテ情報の外部保存基準が緩和された。今回はその流れを受け、2011年1月からSaaS形式でも提供予定の無床診療所向け電子カルテを紹介する。
患者の氏名や住所などの個人情報、既往歴・診断結果といった機密情報を取り扱う医療機関。その情報管理に関しては、個人情報保護法や厚生労働省、経済産業省、総務省などの関係省庁の各種ガイドラインで厳密に定められ、医療情報の外部保存はこれまで対象事業者が限定されていた。2010年2月に厚生労働省が発表した「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第4.1版」によって、民間のデータセンター事業者が契約に基づき、医療機関が保有するデータの外部保存を受託できるようになった。これにより、インターネットを経由して院外のデータセンターが医療情報を保管し、その処理を行うSaaS(Software as a Service)形式の電子カルテが市場に登場している。
そんな中、エス・アンド・アイ(以下、S&I)は、SaaS型電子カルテサービス「Karte Cloud」を2011年1月から提供開始予定だ。Karte Cloudは、ライフサイエンス コンピューティング(以下、LSC)が開発している無床診療所向け電子カルテ「DolphinPro」の機能をインターネット経由で利用できるサービスだ。診療所向け電子カルテ製品を紹介する連載の第11回目は、Karte CloudとDolphinProの概要を紹介する。
OpenDolphinをベースにした電子カルテ
DolphinProは経済産業省の公募事業において、デジタルグローブが2002年に開発したオープンソースソフトウェア「OpenDolphin」をベースにした商用版電子カルテ。複数の医療機関を連携した医療や電子カルテの開示などを促進させる「ドルフィンプロジェクト」にも活用されている。ドルフィンプロジェクトは2001年に熊本県の「ひご・メド」、宮崎県の「はにわプロジェクト」で実験運用が開始され、その後、2004年に東京都医師会の「HOTプロジェクト」、2006年に京都府地域医療連携プロジェクト「まいこプロジェクト」などでの取り組みが進められている。
「地域医療連携」関連記事
LSC 営業本部 本部長 宮長正典氏は「LSCはPACS(医用画像診断システム)や超音波診断装置に強みを持っており、事業拡大のために電子カルテとの連携が重要だと考え、電子カルテの開発に着手した」と説明する。
DolphinProは、WindowsやMac OS、Linuxなどのマルチプラットフォームに対応し、iPhoneやiPadといったスマートフォン/タブレットからでもその情報を参照可能。また、日医標準レセプトソフト「ORCA」と連携し、厚生労働省のマスター情報をORCA経由で取得する。電子カルテ側で来院患者の情報登録が不要となり、マスター変更時にはORCAのアップデートが自動的に反映される。
DolphinProの主な機能
患者情報管理、2号カルテ作成機能、検査結果の取り込み、テーブルおよびグラフ表示、治療履歴(処方、処置、検査、シェーマ画像)の表示、スタンプの公開とインポートによるコラボレーション、CLAIM(ORCAとの連携)サポート、書類作成機能(紹介状、紹介患者経過報告書など)、XML出力(地域連携やオーダリングシステムへの送信機能)、ソフトウェア自動更新、プラグインによる機能拡張、PACS連携による画像取り込み
DolphinProのカルテ画面は、2号カルテ紙をイメージしたシンプルな構成。ORCAのマスターデータを活用し、使用する症状や薬品などの入力情報をスタンプ登録できるなど、その入力作業を簡素化する。宮長氏は「最近は在宅医療でのニーズも多い。複雑な画面構成では患者の自宅に訪問した際、通信回線の速度に影響され、操作しづらいこともある」と説明する。また、DolphinProの機能拡張はプラグイン形式を取り、その操作が複雑にならないように配慮しているという。さらに、患者へのインフォームドコンセントでは、より視覚的に分かりやすく説明して同意を得ることが大事だとし、汎用的な携帯情報端末であるiPadやiPhoneでも電子カルテのデータ表示を可能にしている。そのほか、LSCの医用画像システム「Genesys」と連動し、CTやMRIなどの画像データを取り込んで電子カルテ画面へ表示したり、カルテに添付することも可能だ。
Karte Cloudサービスのメリットとは?
DolphinProには、2つの提供形態が用意されている。クリニック内に機器を導入して利用する「ローカルモデル」と、インターネット経由で利用するSaaSモデルのKarte Cloudで、各クリニックのニーズに合わせた形態で提供している。Karte Cloudの販売やサービス提供などを行うS&Iは、日本アイ・ビー・エムのビジネスパートナーとしてクラウド分野における事業拡大を担い、2010年7月からLSCと協業し医療分野に参入している。
Karte Cloudのメリットとして、S&I 執行役員 第一事業部長 神山正人氏は「サーバの購入や、機器を設置するスペースも不要で、またその運用管理コストも削減できる」と説明する。
これまで中小病院やクリニックで電子カルテを導入した場合、自院内にサーバを設置して、ある程度のIT知識を持って運用しなければならなかった。また、その運用コストが発生していた。外部にデータを委託保管し、インターネットを経由してその処理を行うことで「本来の医療業務に専念できる環境を構築できる。雑務で疲弊する医療現場の負担を軽減できる」(宮長氏)。
また、神山氏は「Karte Cloudの最大の売りは“価格”」と説明し、これまでの電子カルテ製品よりも低コストで導入・運用できる点を強調した。Karte Cloudは月額4万6000円から導入可能(税別)で、導入時にはデータセンターへのVPN接続費用が別途必要になる(10万円)。さらに、ローカルモデルの年間ライセンス使用料金が20万円(永久使用権の利用では100万円、いずれも税別)となり、「他社製品と比べると低コストで運用できる」としている。ローカルモデルは、S&IのWebサイトを通じて試用版をダウンロードできる。
ガイドラインに準拠したセキュリティ対策
医療情報を外部保存する際には、その情報漏えい対策が重要となる。DolphinProは、厚生労働省「医療情報処理システムの安全管理に関するガイドライン」に準拠している。また、iPhone/iPadなどでは個体識別による「クライアント認証」(オプション)で情報漏えいを防止できる。万が一、端末を紛失した場合でも、遠隔操作によって端末内のデータを消去する「リモートワイプ機能」をソフトバンクBBのオプションサービスとして利用できる。
現在、地域医療連携の取り組みとしては欧州諸国の「OpenEHR」のように、個人のカルテ情報を本人の同意を得た後、国を超えて閲覧できる仕組みも運営されている。日本では2010年5月に政府が発表した「どこでもMy病院」構想がその仕組みに該当する。宮長氏は「ドルフィンプロジェクトは、どこでもMy病院の先駆者的な存在。今後の標準になり得る製品に準じた形で開発を進める」と語った。また、神山氏は1年以内に300クリニックの導入を目標に掲げ、さらに「臨床検査会社などの医療従事者も支援できるサービスの提供を目指す」と語った。
| 項目 | 詳細情報 |
|---|---|
| システム構成 | ローカルモデルとSaaSモデル「Karte Cloud」の2つの提供形態。日医標準レセプトソフト「ORCA」の利用が前提となる |
| 費用(税別) | ローカルモデル(使用ライセンス料金) 月額20万円、永久使用権 100万円。SaaS版(使用ライセンス料金) 月額4万6000円から。※ PC本体や周辺機器などのハードウェアおよび設定/保守は、個別見積もり |
| 入力方法 | マウス、キーボード |
| 保守体制 | ローカルモデルは販売代理店によるサポート、リモートメンテナンスなどを利用できる |
| レセプト機能の有無 | なし(ORCAを利用) |
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