データバックアップソフト注目のトレンド(後)
発展途上の仮想マシンバックアップ、拡張性が課題か
前編に続き、2010年にデータバックアップソフト市場で最も注目されたトレンドを紹介する。今回は、仮想マシンバックアップの機能強化を取り上げる。
前編「リモートバックアップを効率化するソースデデュープ」に続き、データバックアップソフト注目のトレンドを紹介する。前回紹介したAMBの場合もそうだが、バックアップ戦略はしばしば仮想サーバの増加を伴う。そのため、多くのベンダーが仮想マシン(VM)のバックアップを容易にする技術開発にしのぎを削っている。
「そうしたベンダーの多くは例外なく、VMwareをより簡単に扱えるようにしようとしている」と語るのは、Taneja Groupの創業者で上級アナリストのアラン・タネジャ氏だ。「2009年は劇的な変化が幾つかあった。仮想マシンでデデュプリケーションを実行する場合の視認性と効率性が大幅に改善されたのだ。ただ、遠大なスキームで見れば、仮想マシンを保護する方法について、まだわれわれはほんの初期の段階にあるにすぎない」とタネジャ氏は続ける。「さまざまなイノベーションにもかかわらず、今日の仮想サーバ分野におけるバックアップ技術はいまだに非常に原始的だ」
仮想サーバ技術大手のVMwareでは、個々のVM内部でタスク実行のオーバーヘッドが発生しないようにデータバックアップソフトが中央サーバにVMバックアップを実行できる「vStorage APIs for Data Protection」を提供している。
また、仮想サーバ環境を前提にソフトウェアを設計するPHD Virtual TechnologiesやQuest Software、Veeam SoftwareなどのVMバックアップ専業ベンダーの追撃を受けながら、主要なデータバックアップソフトベンダーも一連の機能強化を図りつつある。
米Volkswagen Groupの子会社、VW CreditのWindowsオペレーションマネジャー、ビル・ウィーラー氏によると、同社では大規模仮想サーバ環境を組み込むため、バックアップ体制の見直しを進めるに当たり、Symantecの「NetBackup」を破棄する考えは全くなかったという。
むしろ、VW CreditはNetBackupを補完するものとしてQuestの「vRanger」の導入を決めた。vRanger以前、同社は各VMにNetBackupエージェントをインストールして、VM内でバックアップを実行するなど、仮想マシンをあたかも物理マシンのようにバックアップしてきた。それとは対照的に、vRangerはVMの外部にインストールされ、仮想マシンディスク(VMDK)ファイルをバックアップする。
「仮に20台の仮想サーバが(物理)サーバ上にあったとすると、vRangerはそれらの20のVMDKファイルを管理し、転送先メディアの種類を問わず、バックアップしてくれる」とウィーラー氏は説明する。VW Creditの場合、転送先メディアはデデュプリケーション機能を持つExaGrid Systemsのバックアップアプライアンスだ。「この製品はボックスからI/Oとネットワークパフォーマンスヒットを持っていってくれるので、仮想マシン側でパフォーマンスヒットの発生に悩むことはなくなった」とウィーラー氏。
しかし、SymantecのNetBackupが現在「さらなる仮想化対応」を進めているため、同社ではNetBackupオンリーのアプローチを選択して、vRangerを削除することも検討中だ。
企業のバックアップ戦略構築の鍵となるVMバックアップ製品
Rockford ConstructionのIT担当副社長、シャーウン・パートリッジ氏は、別の哲学を持っている。同氏は、「Veeam Backup & Replication」を選択した現時点における意思決定から、SymantecのBackup Execやその他の従来型データバックアップソフト製品に後戻りすることは考えられないという。
「つぎはぎだらけのシステムと、一からその目的を持って構築された製品とでは、全く比較にならない」とパートリッジ氏。Veeamの製品はVMware ESXと直接やりとりするため、エージェントが必要ない点を指摘し、「ESX上でスナップショットを作成するため、個々のサーバに何もロードする必要がない」と同氏は語る。
2010年秋のTechTargetストレージ購買意欲調査によると、VM専用バックアップ製品のユーザーは少数派だった。仮想サーバをバックアップする204社のIT担当者のうち、40%は伝統的なバックアップ復旧ソフト製品を利用していると回答。また26%がVMware Consolidated Backup(VCB)を利用しており、それに物理サーバ(17%)、VM専用製品(11%)、CDP(6%)が続く。
多くのITショップが仮想サーバと物理サーバのバックアップに異なる製品を選択している。ESGが2010年初めに実施したオンライン調査によると、データ保護に責任を持つ186人のIT担当者のうち、56%は仮想サーバと物理サーバに異なるバックアップアプリケーションを選択していたが、そのアプローチを肯定的に見ているのは全体のわずか23%だった。
対照的に、仮想および物理環境に単一のバックアップアプリケーションを利用している44%のIT担当者の多くは、現状に満足しているようだ。全体の77%が、そのアプローチを望ましいと回答した。
データバックアップソフト変更も視野に
一部の業界アナリストは、ITショップの間でバックアップ戦略を見直し、状況の変化に応じて他のデータバックアップソフトに移行してもよいとする考えが広がっている、と早くから指摘していた。
Gartnerのラッセル氏は「3つのC」、すなわちCost(費用)、Complexity(複雑さ)、Capability(性能)の観点から、ユーザーの30%以上は今後4年以内にバックアップアプリケーションを切り替えるだろうと予測する。
「バックアップソフトは変更されない、という神話があった。しかし、それは絶対の真理ではない。今やバックアップ製品を捨ててしまうことを、企業は全くためらわない」とラッセル氏は言う。
サンフランシスコのUnion銀行は、「IBM Tivoli Storage Manager(TSM)」の古くからのユーザーだ。それでも同行のIT部門は、もっと拡張性の高い製品に移行することを検討している。「まだ最終決定ではない。というのも、TSMからの移行は大きな苦痛を伴うためだ」と、IT担当上級副社長のクラウディア・クー氏は語る。
ユーザーはデータ保護や階層化、アーカイビングを、関連技術と結び付けて考える必要があると話すのは、Evaluator Groupのシニアストラテジスト、ランディ・カーンズ氏だ。同氏が指摘する2010年のトレンドの1つは、SymantecのBackup ExecやCommVault Systemsの「Simpana」などの製品に見られるバックアップとアーカイビングの統合化である。
例えば、ケンタッキー州ルイビルの会計会社Farm Credit Services of Mid-Americaは、Simpanaを利用してデータをSpectra Logic nTire500 VTLベースディスクシステムにバックアップするとともに、Spectra Logic T50eテープライブラリにパーティションを切ってアーカイブしている。
「われわれはそれを別のレベルのストレージとして利用している。ほとんど第4層的なものだ」と説明するのは、同社のストレージアドミニストレーター、フレッド・ゴードン氏だ。「特定の条件を選択すると、システムはこの層のストレージにデータを移動する。エンドユーザー側からは、その違いは見えない。ほとんどのデータは古いものなので、いずれにしてもレスポンスはあまり問題にならない」
Forresterのダインズ氏は、バックアップやリカバリだけでなく、スナップショットやレプリケーション、CDP、そして恐らくはフェイルオーバーオーケストレーションに至るまで、全てを統合した「全方位型システム」へのシフトを予測する。
「Symantecがその典型例だ。同社にはCDP、レプリケーション、バックアップ、アーカイブの各製品がある。それらは単一のプラットフォームから管理できる統合製品になるだろう」と同氏。
「バックアップソフトは既に、アレイとレプリケーション上でスナップショットをコントロールできるようになっている」とダインズ氏は続ける。「バックアップソフトが一連の継続性技術やアクティビティを管理、監視することが可能になれば、非常に興味深いものになるだろう。多くのベンダーが、いまその方向に進んでいるはずだ」
ローレン・ホワイトハウス氏は、プライマリストレージシステムのスナップショット機能を強化するベンダーが多いと指摘し、「バックアッププロセスを高速化する新しいデータキャプチャリング方法」の登場を示唆する。
Storage Switzerlandのアナリスト、エリック・スラック氏は、スナップショットベースのバックアップを提供するStorSimpleのハイブリッドクラウド製品や、ストレージ、バックアップ、DRをカバーするNimble StrorageのiSCSIアレイなど、バックアップシステムなしでデータを事実上保護しようという新たなトレンドを指摘した。
「こうした傾向は今後さらに強まるだろう」とスラック氏は予測する。「データ保護をストレージインフラに統合し、バックアッププロセスとバックアップ製品を同時にスキップできれば、当然バックアップは大幅に改善される」
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