人材の有効活用にも利用
読めば分かる! ERPの人事・給与管理
ERPパッケージで最も使われる機能の1つである人事・給与管理。利用することで現状の業務を効率化できる。加えて従業員の業務管理に深くかかわる機能のため、人事戦略にも活用されている。
人事部門の業務
前回記事「読めば分かる! ERPの財務・管理会計」に引き続きERPの個別機能を紹介する。今回は人事・給与管理について見ていこう。ERPの機能について説明する前に、まずは人事部門の一般的な業務を大まかに把握したい。
人事管理
人事部門の大きな業務の1つである人事管理では、従業員の情報を管理している。従業員の名前や性別、住所など従業員の基本的な情報、家族情報の管理が一般的だ。また、新卒採用や中途採用など人事計画に基づいた採用活動、昇進や昇格などの検討、人材の育成も重要な業務である。
給与管理
人事部門のもう1つの大きな業務は給与管理である。この給与管理においては、毎月行う業務と年次で行う業務とに大きく分けられる。毎月行う業務としては、月次の給与の支払いがある。従業員の勤務情報を集め、従業員別に労働時間や残業時間の計算や、有給休暇や欠勤などのチェックを行う。この情報を基に給与を計算。計算結果を確認し、問題がなければ銀行に給与の振込を依頼する。その他に期限までに所得税や住民税、社会保険料などを支払う。年次で行う業務は、定例の賞与の支払い業務や年末調整業務などがある。
人事部門の業務の中で、例えば月次の給与計算など、担当者の負荷が高い業務については単体機能のシステム化が比較的早い段階から進んでいた。企業は当初、業務効率化の観点からERPの人事・給与管理機能を導入することが多かった。だが、企業における「人」を重要な経営資源ととらえ、経営資源の効率的な利用という経営の観点からERPの人事・給与管理を導入する企業も増えている。そのような考え方の変化に伴い、ERPの人事・給与管理も強化、拡張されている。
それではERPの人事・給与管理の機能を見ていこう。なお個別の機能はERP製品によって異なるため、詳細は各製品ベンダーにお問合せいただきたい。
ERPにおける人事管理
人事管理
前述した通り人事管理では従業員の情報を管理することが重要な機能の1つである。ERPの人事管理では、従業員1人1人の情報をマスターデータとして管理している。一般的に従業員マスターで管理している項目は、従業員の各種情報(社員番号、名前、生年月日、性別、住所、入社年月日、退職年月日、学歴、職歴など)や、家族情報、資格情報、所属情報などで、その他に企業独自の項目を設けて管理することもある。従業員の情報は一覧で確認でき、部門所属の従業員一覧や条件に合致した従業員だけを全社の中から抽出して一覧化することが可能。さまざまな業務に利用されている。
組織管理
組織管理や人員配置の管理もERPの人事管理機能で行う。現在の組織体系だけでなく過去の履歴や将来の計画を管理可能な製品を利用すると、複数の組織計画を比較しながら経営的な判断を下すことができる。
人事考課
人事考課においては、あらかじめ定義した基準に基づいた評価を行う。人事考課の結果は給与や昇格に連動させることが可能である。
採用管理
採用管理には、年度別の採用人員の計画の管理や応募者の管理、選考、採用、入社処理など採用プロセスの一連の流れを管理する機能が含まれる。
新しい人事管理
最近のERPの人事管理機能では、従業員のライフサイクル全体を支援し、潜在的な価値を発揮できるように管理する機能が盛り込まれている(人財管理と呼ばれることもある)。具体的には、従業員に応じたスキルや能力を開発するためのプランの立案や追跡を行う機能などがある。また、スキルや能力開発のための研修を管理する機能を持つERPでは、研修の内容や参加者、費用を管理し、費用は原価情報として管理会計にデータ連携して引き渡すことが可能だ。
また、その他に昇給や人材配置などの各種シミュレーション機能や、人事や給与情報を任意の切り口で分析を行う機能などを搭載するERPも数多く出ている。人件費を予測する機能を利用して、新しい組織の策定や人事異動案を検討することができる。業務の効率化だけでなく、戦略的な人事管理を実現したい場合は、このような機能が盛り込まれている製品の活用が有効だろう。戦略的な人事管理を実現するための機能はERPによって異なるため、導入を検討する際には、機能を詳しく確認しておく必要がある。
ERPにおける給与管理
給与管理は、前述の通り業務の効率化を図るためにシステム化が比較的進んでいる。前回紹介した財務会計の分野と同様にERPだけでなく、給与単独機能のアプリケーション製品も普及している。給与管理は制度的に必要な機能も多く、主要な機能の製品ごとの違いは比較的少ない。しかし、特別な勤務形態や特殊な給与体系などを取り入れている企業の場合は、標準機能で対応できる製品とそうでない製品があるため、ERPでどのように実現ができるのかをよく確かめる必要がある。
給与計算
給与計算は、給与管理の中心的な機能である。ERPの一般的な給与計算の流れは以下の通りである。
まず給与計算を行う際に必要となる企業の給与体系や従業員ごとの基本給の情報や手当等の情報、給与振込先などをあらかじめ設定しておく。
そして従業員は自分の勤務情報を日々入力する。都度や週、月単位など業務に合わせて上長が勤務情報の承認を行うケースもある。
その後、月末などのタイミングで全従業員の勤務情報の入力を締め、勤務形態に応じて従業員ごとに当該月の超過勤務時間や深夜勤務時間などを集計し、個々の勤務データとあらかじめ設定された情報を基に給与計算を実施する。給与計算の際には、残業手当など各種手当を足す、保険料や企業独自に設けた控除項目を差し引く、所得税を計算、住民税を従業員の情報から取得、調整などの処理を自動で行い、支給額を算出する。
計算結果の内容を担当者がチェックした後、給与明細に印刷(従業員が直接PCからWeb閲覧する方法もある)し、銀行への振込依頼のファームバンキングデータを作成する。このような一連の給与に関する業務処理を給与計算機能ではサポートしている。賞与も同じような処理を行うことができる。
勤務情報管理(勤怠管理・休暇管理)
ERPの給与管理には勤務情報(勤怠情報)を入力する機能が一般的に備わっているが、給与単独機能製品の場合は勤務情報入力機能が備わっていないことがある。そのような製品を利用する場合は、表計算ソフトなどで個別に記入した勤務情報を担当者がまとめて入力したり、別の勤務情報管理システムからデータを取り込んだうえで給与計算を行う必要があるが、ERPでは勤務情報管理と給与計算が連携していることで、業務の効率化を図ることができる。
給与計算に必要な勤務情報を入力する機能は、他の機能以上に入力しやすい画面や方法などを考慮した製品が多い。勤務情報入力機能は、全従業員が利用することが多く、ITスキルのあまり高くない従業員にも簡単に入力できるようにするためである。勤務情報やその他の情報を組み合わせてさまざまな分析や経営リポートを出力するERPもあり、必要な情報を全ての従業員に入力させるための工夫はいろいろと行われている。また、ERPによっては勤務情報と連動して有給休暇の繰り越しや付与の設定などの休暇管理も一元的に行うことができる。
給与管理のその他の機能には、住民税用の振り込みデータの作成、年末調整の計算、社会保険業務(算定・月変など)処理、退職金管理などがある。各種給与管理の処理において、さまざまな会計伝票が計上され、その情報は財務会計機能と連携している。また原価情報とひもづいて管理することも多く、管理会計機能と連携して管理会計リポートに反映される。
最後にセキュリティについて触れる。人事・給与管理に関する情報は、社内でも特に機密性が求められているデータの1つである。そのためアクセス権限を役割や業務に合った形で設定することができるなど、自社の要件にマッチしたセキュリティが確保できる製品を選ぶことが重要である。
木塚愛美(きづかめぐみ)
株式会社ビーブレイクシステムズ 営業部 広報・営業推進チーム リーダー
外資系ERPパッケージベンダーにて、会計導入コンサルタントとしてさまざまなERP導入プロジェクトに参画。その後、2005年にビーブレイクシステムズに入社。ERPパッケージ「MA-EYES」を中心に企業にとって“使える”業務システムを広く提案している
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