最大の目玉はOfficeのサブスクリプション
Office 365の登場で変わるMicrosoftのライセンス制度
Office 365のリリースに合わせ、Microsoftのライセンス制度が大きく変わろうとしている。柔軟性が増した新体系は、何が変わったのか。そしてユーザー企業にどのようなメリットがあるのだろうか?
米Microsoftは、洗練されたオンラインプロダクティビティアプリケーションの時代に沿うよう、主要なボリュームライセンスプログラムを大幅に変更している。2011年中に予定されているOffice 365のリリースに合わせ、ライセンス数を削減できる「補正発注」、ユーザーグループごとに異なる機能を提供するオプション、ユーザー単位でのOfficeのライセンスなどが導入される予定だ。少なくとも、「Enterprise Agreement(EA:エンタープライズアグリーメント)」を保有し、オンプレミスサーバからMicrosoftが運営するホストサーバへの移行をいとわない企業にとっては、従来と比べてはるかに柔軟なライセンス体系になるだろう。
ライセンス数を削減できる「補正発注」
従来のEAでは組織内の全PCを対象に、Windowsアップグレード、Officeの最新バージョン、クライアントアクセスライセンス(CAL)スイートの最大3種類のライセンスが提供されている。CALは、Windows、Exchange、SharePointなど、よく使用されるサーバ製品へのアクセスに必要なライセンスだ。EAでは、特定の製品を対象にPCの台数を基準とした年額料金を3年間にわたって支払う。EA購入のメリットは、大幅な割引と契約期間内の無料アップグレード権、そしてライセンス管理が容易になることだ。コンピュータごとにソフトウェアを調べて資産管理をするよりも、デバイスまたはユーザーを数える方が簡単だ。
契約企業は、ユーザーまたはコンピュータが増えた場合、3年目の契約更新時に「補正発注」代金を支払うことになる。だが逆に、ユーザー数またはコンピュータの台数が減っても、自動的に料金が下がることはない。減額にはMicrosoftに対する特別な申請が必要で、しかも、この申請は「考慮」されても実際に減額される保証はない。
しかし、Office 365(またはOffice 365とオンプレミス版の両方のライセンス)を利用する場合は、限定数以内であればオンラインユーザーライセンスを削減できるため、かなり柔軟にライセンス費用を管理できるようになる。また、オンラインライセンスとオンプレミスライセンス間でユーザーを移行できる他、メールアクセスのみが必要なユーザーに対しては、より安価なオンラインサービスライセンスを購入できる。
他に大きな変更点としては、現在EAを保有していない場合は、オンラインサービスライセンスのみのEAしか購入できないことが挙げられる。ただし、このEAでは全社規模でライセンスを購入する必要がないため、例えばユーザーが1000人いても、最初は最小要件である250人分のみのEAを購入できる。
対象アプリケーションの拡充
Office 365では、EAの最小要件のカウントに含めることができる製品とオプションが増える。また、CALのオンラインサービス版に当たるユーザーサブスクリプションライセンス(USL)については7種類以上のプランが提供される。
追加された対象製品数は少ないが、Core CALスイートと同等の製品のライセンスを提供する4種類のセットプランと、Office Web Apps、Office Professional Plusのサブスクリプション、Lync VoIP、ユニファイドメッセージング、SharePointでのExcel、Access、Visioファイル管理機能をオプションとして選択できる、より包括的な3種類のスイートが用意されている。
また、従来のEAでは、全社規模でライセンスを取得する製品をEA購入時に決定し、その内容を後で変更することは難しかったが、Office 365では4種類のプラン(E1~E4)を自由に組み合わせたり入れ替えたりできる。
また、EAのプランを利用せずに、個別にサービスのサブスクリプションを購入することも可能だ。対象となるサービスはExchange、SharePoint、Lyncで、Office Web Apps(Office Web Apps機能を提供するSharePointと併用)またはOfficeのサブスクリプションのいずれかを利用してアクセスする。
この2つのUSLオプションはExchange、SharePoint、Lyncのそれぞれに用意されており、オンプレミスライセンスのStandard CALとEnterprise CALに相当する。例えば、Exchange Online Plan 1では、Exchange Standard CALで提供される基本のメール、予定表、連絡先機能が提供され、Exchange Online Plan 2では、Exchange Enterprise CALによるオンプレミス用ライセンスと同様に、Plan 1の内容に加えてボイスメール機能とアーカイブ機能が提供される。
Officeのサブスクリプション
Office 365で導入されるオプションで最大の目玉の1つは、Officeのサブスクリプションだ。他のOffice 365の対象製品と異なり、Officeはオンライン製品ではなく、PCにインストールするOffice Professional Plusである。また、他のライセンスプログラムでは、Officeのライセンスは(ユーザーではなく)デバイスベースだ(ただし、ライセンス適用対象デバイスのユーザーが所有するポータブルデバイスであれば、もう1台追加でOfficeをインストールできる)。
サブスクリプション料が1ユーザー当たり月額12ドルというのは、年額268ドルのEAと比べると約半分である。しかも、使用者が同じである限り、複数のデバイス(デスクトップPC、iPad、ポータブルPCなど)にインストールもできる。
ただし、料金の安さと引き換えにデメリットもある。永続ライセンスではないため、サブスクリプション期間が終了すれば、製品を使用する権利も消失するのだ。しかし年間144ドルであれば、サブスクリプションを更新し続けても、ほとんどの場合は永続ライセンスを購入するより安く上がるだろう。例えば3年間更新を続けた場合、1年間に支払う額は他のボリュームライセンスプログラムでOfficeのライセンスを取得する(505ドル)より少ない。しかも、この505ドルにはアップグレード権は含まれず、さらに440ドルを支払って有効期間3年のアップグレード権を確保する必要がある。これに対し、サブスクリプションなら、自動的に最新バージョンのOfficeを利用する権利が得られる。
今度こそ「包括的」なクラウドサービスへ
低価格でユーザーアプリケーションとサービスの両方をクラウドで提供している競合と異なり、Microsoftのオンラインビジネスサービスでは、Officeのライセンスを取得しないと有益な作業は何一つできない。軽量のOffice Web Appsをビジネス環境で使用する場合でも、Officeのフルライセンスを購入する必要がある。
その理由は簡単だ。OfficeはMicrosoftに年間150億ドルの収入をもたらす金の卵だ。競合のプランをまねて、年間50ドルのサービス料にWordやExcel、PowerPoint、OutlookなどのOfficeクライアントライセンス料も含めるというのは、選択肢にならない。
ある意味、Officeのサブスクリプションは中途半端なソリューションだが、オンラインのみのクライアントより有用性が高いことはまず否めない。Office 365でOfficeライセンス費用の大幅な引き下げを打ち出したMicrosoftの姿勢は、成熟したオンラインサービスがひしめく先の見えない海に、最も大切な荷を積んで同社が本格的に乗り出したことを示している。
本稿筆者のポール・デグルート氏は、Microsoftのライセンス戦略およびポリシーを専門とする米コンサルティング会社のPica Communicationsのライター、トレーナー兼主席コンサルタント。
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