データストレージマネジャーのためのATA over Ethernetプロトコル入門(後)
マイナー技術AoEプロトコルが企業ストレージに採用される理由
大量ストレージセグメントでSASの代用として利用されるATA over Ethernet(AoE)。より広範に普及するには、ニッチ製品というレッテルを超えなければならない。
前編「イーサネットリンクを最大限に活用するAoEプロトコル」に続き、ATA over Ethernet(AoE)の概要とAoEプロトコルの将来が米Coraidのビジネスの展望に深く結び付いている理由を説明する。私が取材した数少ないAoEユーザーは、AoEの拡張性を高く評価しており、同プロトコルはあらゆるイーサネットリンクを最大限に活用すると主張する。
ある金融会社のIT管理者は、繁殖力の強さで知られる植物の葛(くず)にAoEを例えて「成長力がものすごく、データセンターでアプリケーションとデータを圧倒的な勢いで吸収している」と話す。
オハイオ州ノースカントン市では、学区の拡大に伴うデータの増大と大容量を必要とするマルチメディアファイルの増加に対処するために、Coraidの「EtherDrive」製品を採用した。このケースは、コストが掛かり過ぎるという理由でFibre Channel(FC)やiSCSIが検討対象にならないユーザーにAoEが受け入れられることを示す好例だ。
AoEの運命はCoraidのビジネスの展望と不可分に結び付いている。同社の技術的能力はどうであれ、基本的に1社の小規模ベンダーに支えられている特殊なプロトコルに企業が依存するのは賢明だといえるのだろうか。
Coraidのビジネスは多くの業界専門家が考えていたよりも長続きしており、最近、新たな経営陣がベンチャーキャピタルから追加資金を調達した。Coraidのアレイは低価格で容易に導入できる。新しいストレージシステムへの移行は必ず苦労を伴うものだが、SAS、iSCSI、FCといったソリューションと比べてAoEを統合するのが特に難しいということはない。
AoEのサポートと統合に伴う苦労
AoEの導入で苦労するのがサーバのサポートだ。ソフトウェアドライバは広く出回っているが、LinuxとOpenBSD以外のOSではAoEがネイティブでサポートされていない。AoEの高いパフォーマンスと拡張性にはVMware ESXがベストマッチのように思えそうだが、ESXにもドライバは用意されていない。また、ストレージ仮想化製品とデータ保護システムでもAoEを直接サポートしたものはない。ただし、米Symantecの「Veritas Storage Foundation」はAoEに対応している。
さらに厄介なのが、他の製品との連係を実現する手段が用意されていないことだ。VMwareの管理者であれば、vCenterとの連係とvStorage APIs for Array Integration(VAAI)のサポートを期待するだろうが、これらにも対応していない。Coraidのアレイにはシンプロビジョニングや重複排除、階層ストレージといった機能も欠落している。Coraidは、同社のソリューションは低コストで拡張性が高いので、こういったキャパシティー最適化技術は不要だとしているが、スナップショット機能とレプリケーション機能も備えていないのは大きな問題だ。
Coraidは2010年、SAS、SATAおよびSSD(ソリッドステートドライブ)を同一システム上でサポートする10ギガビットイーサネット(GbE)SAN製品シリーズを発表した。これは、高度に仮想化されたクラウドストレージ環境をターゲットとする高パフォーマンス製品という位置付けだ。Coraidでは、エントリーレベルの製品として、SATAとGbEのみをサポートする「SR Series」も提供している。
AoEプロトコルが広範に普及するには、低コストで大容量を提供するだけのニッチ製品という枠を超えなければならない。しかしオープンソースコミュニティーと1社の元気な企業だけで、それを実現できるかどうか定かではない。
本稿筆者のスティーブン・フォスケット氏はフリーのコンサルタント兼ライターで、エンタープライズストレージとクラウドコンピューティングを専門とする。独立系IT専門家集団Gestalt ITの責任者として「Tech Field Day」イベントの運営を担当。「GestaltIT.com」および「FoskettS.net」サイトを運営するほか、Twitterにも投稿している(@SFoskett)。
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