事例で学ぶBI活用のアイデア【第3回】
500本の非定形帳票をBIツールに置き換えた建機レンタルサービス業事例
レガシーシステムのオープン化プロジェクトの際に問題となった「帳票」の存在。手組みで作成していた非定形帳票をBIに置き換えた、「BIツールは基幹系にも利用できる」という事例を紹介する。
分析ではなく意思決定やアクションこそが本来の業務
「ビジネスインテリジェンス(BI)ツールを導入したが、定型リポート作成ツールとしてしか利用できていない」という話をよく聞く。利用者はその定型リポートを基にMicrosoft Office Excel(以下、Excel)などのツールに再入力して分析することになる。BIツールは比較的高価なだけに、もったいない使い方だ。
また、業務部門の依頼で情報システム部門がBIツールを使ったり、プログラムを作成したりしてデータを作成し、業務部門に提供するという話もよく聞く。そして業務部門の担当者はそれらのデータをExcelなどで加工して、必要なリポートを作成する。情報システム部門は「データを提供してほしい」という依頼に多くの工数を取られ、データ提供が遅くなるというのもよくある話だ(参考:目下の課題「現場のコスト削減方法」は、BI事例で学ぼう)。
業務部門の担当者にとっての本来の業務は、データを得ることや分析することではなく、そのデータを利用して具体的な意思決定やアクションを起こすことである。スピード経営が求められている現在、必要なデータを必要なときに、必要な内容で得られるか否かが非常に重要となっている。そういった意味でも、前述したようなBIツールの使い方では現場でタイムラグが発生し、また多くの工数を情報システム部門、業務部門の両方に強いてしまい、効率的なデータ活用とはいえないだろう。
そこで今回は、従来メインフレームで出力していた管理帳票をBIツールに置き換えた事例を紹介する。BIツールの失敗事例にありがちな「BIツールで新たに帳票を作り直す」といったことではなく、これまでの帳票の基となっていたデータを公開し、エンドユーザーがBIツールで自由に利用できるようにした事例だ。
ビジネスのスピードにシステムを合せる「脱メインフレーム」
事例企業プロファイル
業種
- 建設機械器具レンタルサービス業
企業規模・業種内容の参考データ
- 全国に150超の拠点を持つ
- 従業員数:約1200人
- 400超の定型帳票、1000にも及ぶ手組みの非定形帳票を持つ
今回紹介するBIツール導入企業のシステム構築/運用の歴史は長く、かつ先進的な取り組みを行っている。1970年代半ばからホストコンピュータでシステム構築を行っているが、2000年半ばにはメインフレームを撤廃している。オープン化へのマイグレーションの背景には幾つかの理由があった。1つは、「現状維持は後退を意味する」という企業文化があることだ。情報システムは「保守8割、新規開発2割」とよくいわれるが、同社のCIOは「新しいことに力を入れられなければ時代に後れを取る。今は競争力を高め、ビジネスに対してシステム化のスピードを落とさないことが重要だ」と語っている。
また、脱メインフレーム、オープン系システムへの移行を判断した狙いについては、「バッチ処理よりもリアルタイム処理が増大し、システムではなく業務そのものがリアルタイム性を求めている。要所要所で迅速に業務の効率化を図るために、オープン系システムのメリットが大きい」と考えたからだという。結果、現在稼働しているソフトウェアは全てオープンシステムを基準としている。
「全てを自らの責任で行い、責任の所在を明らかにする」という考えに立ち、ハードおよびソフトウェアに関する情報・知識の収集には時間も費用も惜しまない。利用するメリット、デメリットをしっかりと把握していれば、自社でカスタマイズして構築する方が失敗しないという考え方だ。
COBOLで作成した500本のプログラムが不要に
オープン化のシステム構築でキーになったのが、帳票への対応である。400件を超える取引先の指定請求書のシステム化や、現場レベルの請求金額の調整など、細かな要件がある定型帳票についてはオープン系の帳票ツールを選択した。
もう1つのハードルは管理帳票やリポートといった非定形帳票の存在だった。非定形帳票はこれまで部門ごとの運用スタイルに合わせて、COBOLでバッチ処理をしてきた。これらのオーダーメイドの非定形帳票作成ソフトは、担当者が代わっても運用する可能性がある限りメンテナンスが欠かせない。陰に埋もれた非定形帳票作成ソフトはいつしか1000本を超え、業務プログラムの半数を占めていた。
オープン化プロジェクトでは、この非定形帳票の仕組みにExcelインタフェースを持つBIツールを採用した。使い慣れたExcelを利用して必要な角度で高速に集計・表加工処理ができれば、リアルタイム化したい業務に適用できると期待しての導入だ。結果、「BIツールは、これまで苦労して作成してきた500本のCOBOLプログラムを一瞬にして消し飛ばすほどの処理能力と効果を発揮した」という。
オープン化によるコスト削減効果と現場での価値
この事例では、オープン化に伴って本来マイグレーションすべきプログラム500本が不要になった。ということは、単純に考えてもそれにかかわる工数やコストを削減できたということだ。プログラム1本を10万円と仮定しても、5000万円のコスト削減になる。
また、現場担当者においてもこれまでの非定型帳票がBIツールになったことにより、リアルタイムで情報提供が可能となり、いわゆるエンドユーザーコンピューティング(EUC)によるサービス提供が実現した。結果的に、ペーパーレス化や紙帳票からExcelへの再入力が不要になるなど、現場にとっても大きなメリットがあったようだ。また、全社的な効果として意思決定スピードの向上も導入効果として挙げられている。
このオープンシステム化以外にも、同社のCIOはITに対する積極的な取り組みや創意工夫を行っている。例えば、内部統制に関して、プログラムソースと実際に稼働しているプログラムとの一致を証明するためのシステム資産管理や、システムのログ分析などさまざまなシーンでBIツールを活用している。BIツールを道具として徹底的に活用している事例の1つといえるだろう。
非定形帳票とBIツールとの相性
実は、管理帳票のBIツール化はこの事例に限ったことではない。あるシステムインテグレーターから聞いた話だが、業務システムにおける帳票開発は要件が変わりやすく、開発規模が大きな場合、期間が長期にわたるため要件定義をしてからサービスインするまでに要件が変わることが非常に多い。その場合、要件変更による追加工数となったり、使えなかったりということが起きやすく、ユーザーの不満につながりやすい。そのため、最初の段階から管理帳票やリポートのように要件が変わりやすい非定形帳票については、積極的にBIツールを提案するようにしているという。「BIツールは情報系のもの」と決めつけずに、アイデア次第で基幹系システムでも積極的に使えるツールになり得るといえるだろう。
小島 薫
ウイングアーク テクノロジーズ株式会社 営業本部 製品戦略部 部長
1stホールディングス株式会社 代表取締役社長付
石川県出身 1959年生まれ。製造業でのシステム構築、経営企画などに従事した後に、独立系パッケージベンダーに入社。汎用機からオープンシステムまでの基幹系データベースを中心に、データウェアハウス(DWH)、XML関連のサポート、プリセールス、コンサルティング、マーケティングを経験。2005年にウイングアーク テクノロジーズに入社し、技術部門、マーケティング部門、製品戦略部門の部門長を経て、現在は国内外を含め製品戦略に携わる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
4
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
5
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
6
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
7
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
8
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
9
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
10
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー