「Oracle EPM&BI Summit 2011」リポート【後編】
「三越」「伊勢丹」統合に貢献した管理会計のパワー
国内最大手の百貨店グループ、三越伊勢丹ホールディングス誕生の背景には伊勢丹が構築していた管理会計システムの貢献があった。担当者がこれまでのシステム、今後のシステムを語った。
前回(参考記事:オムロンが新経営管理システム構築、製造業が学べることとは)に引き続き、8月3日に開催された日本オラクル主催の「Oracle EPM&BI Summit 2011」での講演から、三越伊勢丹ホールディングスの管理会計の仕組みを紹介する。
グループ会社を合わせて国内外に多数の百貨店「三越」「伊勢丹」を展開する業界最大手の三越伊勢丹ホールディングスが統合によって誕生したのは2008年4月だった。三越伊勢丹ホールディングスは持株会社で、傘下には事業会社の三越伊勢丹の他に各地域の百貨店子会社、クレジットカードや小売・専門店の子会社などを抱える。
伊勢丹型の管理会計に統合
三越伊勢丹ホールディングスの経営戦略本部 経営企画部 予算担当 マネージャーの岡田泰夫氏は同社の業績アップに「管理会計の仕組みが威力を発揮した」と説明する。一般に経営統合が難しい理由として、両社が統合前に構築している管理会計の仕組みをどのような形で統合するかの判断が難しい点が挙げられる。しかし、三越と伊勢丹の統合では「伊勢丹型の管理会計に統合する」(岡田氏)と明確であり、統合前の伊勢丹が持っていた管理会計の仕組みは同社を躍進させた原動力の1つだったという。伊勢丹の管理会計システムは2005年、「Oracle Hyperion Planning」(以下、Hyperion Planning)を基盤に構築されている。
その特徴は多くの企業の現場部門が不満に思っているコスト配賦の問題を解決したことだ。百貨店では現場、前線の営業部門が利益を稼いでいるが、企業には当然、その現場を支える後方支援部門がある。経理や経営企画、人事、総務などの各部門だ。営業部門の損益計算書にはこれら後方支援部門のコストも計上される。多くの企業はこのような構造を取っているが、百貨店の店長にしてみれば「店舗では管理できないコストも各店舗に計上され、評価される」(岡田氏)と感じられた。百貨店が利益を上げても、後方支援部門のコストが増大すれば赤字になってしまうのだ。しかも、そのコストは百貨店側では管理できない。
部門ごとの経費を横ぐし管理
伊勢丹はこの問題を解決するため、2005年に「職能別管理会計」と呼ぶ仕組みを導入した。百貨店店舗ごとの損益管理の他に、部門ごとに損益を管理できる仕組みを構築。「部門が管理可能な経費を横ぐし管理可能にした」(岡田氏)。これによって各店舗、または各部門が責任を持つ必要がある損益を明確にした。例えば、損益のうち、「売り上げ」と「売上原価」「売上総利益」、店舗の「単独運用経費」については各店舗が管理の責任を持つ。一方、後方支援部門のコストが含まれる「共同運用経費」については各部門で組織する統括部門が管理するようにした。予算勘定科目の削減や配賦基準の簡素化なども実行し、「店舗縦割りから、統括部門の横ぐし管理」の体制を完成させた。
同時にシステムについてもHyperion Planningを活用することで、紙ベースの定期帳票やExcelベースの予算編成の仕組みを廃止した。2005年の導入時には、Hyperion Planning選択の他に、「現行の財務会計システム+Excel」の改修、「財務会計システムの導入に合わせた新システムの導入」という選択肢があった。しかし、岡田氏は「柔軟性と即時性の観点から新たな管理会計システム(Hyperion Planning)の導入を選んだ」と話した。三越伊勢丹ホールディングスは財務会計のERPに「Oracle E-Business Suite」を使っているが、システムとしては分離して運用している。岡田氏は「管理会計の利益体系は管理会計システム側に分離し、財務会計とは異なる利益体系の管理を実現してきた」と説明した。
地域の百貨店にも管理会計を展開
統合後のシステムはこの伊勢丹の管理会計システムを拡張した。管理会計システムは2010年度に統合し、旧三越の店舗も同じ管理会計の仕組みで管理できるようにした。三越伊勢丹ホールディングスの首都圏の店舗だけではなく、地域の百貨店にも管理会計システムの対象を拡大。全ての百貨店を横ぐしで管理できるようにした。またグループ内取引を管理会計に反映させる仕組みなども導入した。
岡田氏は「成長戦略に応じた管理会計の進化」として、管理会計の仕組みを海外店舗や他事業へ展開する方針を表明した。また、IFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)への対応として、管理会計でも組織別のバランスシートやキャッシュフロー計算書を導入したり、複数年度での業績評価の検討などを行うとしている。
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