仮想化で限界に達したVLAN
「VXLAN」入門──VLANを拡張する新標準とその必要性
仮想化の発展により、従来のVLANでは識別子が足りなくなる可能性がでてきた。また、VLANでは物理的に離れたデータセンター間での仮想マシンの移動にも対応できない。そこで登場したのが「VXLAN」だ。
米Cisco Systemsと米VMwareが9月に提案した「Virtual Extensible VLAN(VXLAN)」標準は、地理的に分散したデータセンター間で仮想マシン(VM)の長距離マイグレーションを行うための論理ネットワーク(拡張VLAN)の構築を可能にする。
CiscoとVMwareは提案中のVXLAN標準を既に製品に組み込んだが、VXLANのドラフトはIETF(Internet Engineering Task Force)による標準認定を待っている段階だ。同ドラフトの作成には、CiscoとVMwareの他、米Arista Networks、米Broadcom、米Citrix Systems、米Red Hatが協力した。
VXLAN標準はなぜ必要なのか
VLANは長い間、データストリームを分離するために用いられてきたが、IEEE 802.1Q VLAN標準では4096個のVLAN識別子しか使えない。しかしラック上段に設置されたスイッチは40台以上のサーバに接続されることがある。各サーバが複数のVMをサポートし、各VMは複数のVLAN上で通信する場合もある。そしてデータセンターには多数のラックが配備されているかもしれない。このため、VLANの総数が4096という制限を超える可能性がある。また、1つのアプリケーションを構成するVMが地理的に離れたデータセンターに置かれる場合もある。これらのVMは、レイヤー2ネットワークを通じて接続しなければならないため、地理的に分散したVLAN識別子は一義的でなければならない。
アプリケーションデータを隔離するVXLAN標準
RFCドラフトにその概要が記載されたVXLAN標準は、特定のアプリケーションに関連したVLANを1つのセグメント内にまとめる。このセグメントは、「VXLAN Network Identifier(VNI)」と呼ばれる24ビットの識別子で定義される。管理ドメインの中で最大1600万のVNIを定義でき、各VNIには最大4096のVLANを含めることができる。同じVNIで動作するVMだけが互いに通信できるので、顧客データを隔離できる。
VMから見えるレイヤー2ネットワークは、UDPパケットを使ってレイヤー3ネットワークに移行する。このため、各データセンターを異なるIPサブネット内で運用することができる。VMにはレイヤー2ネットワークしか見えないので、VMがアプリケーション内で異なるデータセンターに移動しても、そのVMおよびアプリケーションを構成している他のVMにはその変化が見えることはない。
VXLAN環境におけるVM間の通信
VMソフトウェアは修正することなくVXLAN環境内で動作できる。サーバ上で動作するVMには、Virtual Tunnel End Point(VTEP)によってVNIが割り当てられる。VTEPはサーバのハイパーバイザー内に置かれ、VNIを指定するのに必要なヘッダを生成する。このヘッダはレイヤー3ネットワーク上で通信する際に使用される。
セグメント内の他のVMと通信するVMは、非VXLAN・非仮想環境で生成されるものと同じパケットを生成する。これらのパケットは標準のMACフレームで構成され、イーサネットヘッダ、ソース/デスティネーションMACアドレス、イーサネットのタイプが含まれる。VMが複数のVLANを利用する場合はVLANタグも含まれる。
VMをサポートするVTEPはさらに、8バイトのVXLANヘッダでパケットをカプセル化する。このヘッダは、1ビットのVXLANフラグ、24ビットのVNI、そして将来の予備用の39ビットで構成される。カプセル化されたパケットは、UDPパケットに含められる。デスティネーションIPアドレスは、パケット送信先のVTEPのアドレスとなる。ソースIPアドレスは、送信側VTEPのアドレスとなる。
さらにこのパケットは、送信先サーバあるいはパケットを転送するルータのデスティネーションMACアドレスが記述されたイーサネットパケットに含められる。
VM間の通信にはIPマルチキャストが必要
VMが他のVMと通信する際は、非VXLAN環境の場合と同じように動作する。すなわち、通信相手が同じサブネット内にあるときは、宛先を対象としたARPリクエストをブロードキャストする。VMが互いに異なるサブネット内にあるときは、最初のホップルータを対象としたARPリクエストをブロードキャストする。VTEPはこのARPリクエストをVXLANヘッダとUDPヘッダでカプセル化し、互いに通信を行うVMが属するVXLANセグメントに関連したIPマルチキャストグループにブロードキャストパケットを送信する。IPマルチキャストグループに対するセグメントの割り当ては管理レイヤーが行う。
宛先VMをサポートするVTEPがUDPヘッダとVXLANヘッダを取り除いてARPリクエストをVMに渡すと、このVMはリクエストに応答する。この応答が送信元のVTEPとVMに届くことで、双方のVTEPとVMが通信に必要なIPアドレスとMACアドレスを知ることになる。これ以降の通信はVTEP間でやりとりされ、マルチキャストの必要はない。
VMがVXLAN環境の外部と通信を行う必要が生じる可能性もある。この場合、VXLANゲートウェイがVXLANヘッダとUDPヘッダを取り除いた上で、VMによって作成されたパケット内で指定されたデスティネーションMACアドレスにパケットを転送する。送信元のVMも宛先の機器も変更なしで通信に参加できる。VXLANはソフトウェアに実装できる他、スイッチやルータに実装することもできる。
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