実験の域を出ないビッグデータ対応
ビッグデータ活用の成功を左右するのは「人」──米調査会社
米Ventana Researchが実施した調査によると、ビッグデータプロジェクトに新技術を採用する場合の課題として多く挙げられたのは、人材配置とトレーニングだったという。
既に多くの企業が“ビッグデータ”対応を始め、他の企業もそれに続こうとしている。ただし、新興の技術には付き物だが、ビッグデータにもIT担当者やデータウェアハウス(DWH)担当者が対応に配慮すべき事項や潜在的な問題が多数存在する。
例えば、米調査会社Forrester Researchのアナリスト、ブライアン・ホプキンズ氏によると、企業はビッグデータの管理に飛びつく前に、従来のDWHの戦略と手法がビッグデータにも有効かどうかを見極める必要があるという。ビッグデータは、往々にして非構造化データであり、主流のリレーショナルデータベースでの処理には適さない可能性があるためだ。ホプキンズ氏は、「従来のDWHプロセスが、ビッグデータの管理に使えない場合は、Hadoop(関連記事:Hadoopがビッグデータの分析基盤として注目されるわけ)、MapReduce、NoSQLデータベース(関連記事:NoSQLデータベースがビッグデータ対象のDWH基盤に適しているわけ)などのオープンソース技術を使いこなす必要がある」ことを示唆している。
米Ventana Researchのアナリスト、デイビット・メニンガー氏は、特に新しい技術を導入する場合、ビッグデータプロジェクトの成功を左右するのは、組織内の“人”だと指摘する。Ventanaでは最近、複数の国のIT部門およびビジネス部門の163人を対象に、Hadoopの導入をはじめ、ビッグデータの管理と使用に関するトピックについて調査を実施した。「最も多かったのは、最大の課題が人材配置とトレーニングであるとする回答だった。ビッグデータ関連の技術は従来の技術と異なるため、これまで学習した内容を拡充するトレーニングだけでなく、全く別のトレーニングが必要になるからだ」とメニンガー氏は説明する。
メニンガー氏によると、例えばHadoopクラスタ上で処理がどのように分散されるかが分かっていれば、余分なデータの移動を防止でき、分析クエリの精度や速度を向上できる可能性があるという。しかし、何といっても、まず「それができる人間が必要だ」という(関連記事:Hadoopなどのビッグデータ技術が本当に普及するための条件)。
このVentanaの調査では、ビッグデータの管理にも、リレーショナルデータベースが主に利用されていることが分かった。回答企業の90%がリレーショナルソフトウェアを使用しており、75%はビッグデータをサポートする基本の技術としてリレーショナルソフトウェアを使用している。一方、50%以上はHadoopを評価中で、既にHadoopを導入して運用を開始している企業は22%、今後1年以内に利用開始を計画している企業は12%となった。また、Hadoopは「テキストやソーシャルメディアデータも含め、ログデータやイベントデータを中心とする、緩く構造化されたデータ」の格納に使われるケースが最も多いことが分かった。
メニンガー氏が驚いたのは、ビッグデータを管理する技術として、次に多く利用されているのがフラットファイルだったことだ。実に、回答企業の約70%で採用されている。「これは、Hadoopにつながる動きだと思う。フラットファイルなら、Hadoopの導入も視野に入れやすい。Hadoopは、本質的にはフラットファイルデータベースだ。フラットファイルデータベースよりも洗練されているが、突き詰めれば、同じものといえる」
メニンガー氏によると、DWHのビッグデータ対応において、注意すべき落とし穴は他に2つあるという。1つはソフトウェアライセンス費用で、データ量に合わせて跳ね上がる可能性がある。もう1つは、ビッグデータ技術とビジネスインテリジェンス(BI)ツールの不適切な統合だ。
荷が重過ぎる? ビッグデータ対応
IT関連のコンサルティングと専門サービスを提供する米Avanadeも、最近、ビッグデータのトレンドと課題に関する調査結果を発表した。この調査には、17カ国から543人の最高経営幹部とIT責任者が参加した。同社でBIおよびコラボレーション業務担当グローバルディレクターを務めるマーカス・シュプレンガー氏は、ビッグデータをさばく第一のポイントは、保持する価値のあるデータとそうでないデータを見極めることだという。「どのようにして関係のあるデータを特定するか、また、それを意思決定プロセスにどのように反映させるかの問題だ」とシュプレンガー氏は語る。
メニンガー氏の話にもあったが、シュプレンガー氏も、非トランザクション型のビッグデータを管理する経験や知識のあるITワーカーやDWHワーカーが不足していると指摘する。これは、回答企業に限らず、市場全体にいえることだ。一般に、構造化されたトランザクションデータの処理については、成熟したプロセスが存在しているが、構造化されていない多量のデータを体系的に管理する方法については学び始めたばかりという企業が大半だ。
これは、技術部門の現状からも見て取れる。シュプレンガー氏のクライアントの多くは、いまだにHadoopとMapReduceをベースとするビッグデータ基盤の導入・運用方法について理解しようと奮闘しているさなかだ。組織内のIT部門とDWH部門が導入ノウハウを把握し、ビッグデータの管理を担当するべきだが、実際はそうできない場合が多い。
「IT部門は、ビッグデータ関連のサービスに関してSLA(サービス品質保証)を提供できる状態に至っていない。その状態に達するには、あと1、2年かかるだろう」とシュプレンガー氏は予測する。「大半の企業では、(ビッグデータ対応は)いまだに実験の域を出ていない」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
8
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
9
AIで人を減らした企業がもう心変わり 「AIブーメラン現象」の実態
-
10
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー