App Storeの評価を本当に信じてる?
米Appleもお手上げ? アプリストアにはびこるステルスマーケティング
アプリストアでアプリの評価を不正に引き上げる業者とストア運営者は今も水面下でイタチごっこを続けている。ストア業者はこうした不正業者の存在を認めていなかったが、米Appleが2月にある声明を発表した。
タブレット端末用に出張アプリをお探しだろうか? それならばまず、米AppleのApp Storeや米GoogleのGoogle Playといったアプリストアで探してみるといい。こうしたアプリストアには、ユーザーによるさまざまな口コミ情報とともに多数の人気アプリが紹介されている。実際、こうしたストアでは数回のクリックで実に豊富な情報を入手できる。
ただし、問題が1つだけある。そうした情報の中には、信頼性に欠けるものが含まれているかもしれないということだ。
モバイルアプリストアの大成功の裏では、ありがたくない副作用も生まれているのだ。「第三者が不正な手段を用いてアプリストアのランキングを吊り上げるという、新手の商売が誕生している」とITおよび金融業界の分析を専門としている米ArnoldIt.comの業務執行社員、スティーブン・アーノルド氏は指摘する(関連記事:Web2.0型消費者主導の口コミ広告に規制の動きが始まる米国)。
不正業者の手口
この新産業が誕生した理由は、ずばり金だ。とりわけAppleのApp Storeは2012年3月初めの時点で登録アプリ数が60万本を超え、累計ダウンロード数が250億件を突破するなど、大成功を収めている。そうした幅広い人気のため、開発者は誰もが皆、モバイルストアで自分のアプリに注目を集めたいと切望している。
だがこれほど多くのアプリが提供されている状況では、それは気が遠くなるほど難しい取り組みになりかねない。「ベンダーは自分たちが開発したモバイルアプリに目を留めてもらうことの難しさを痛感している」と米ITコンサルティング会社J. Gold Associatesの主任アナリスト、ジャック・ゴールド氏は指摘する。
そこで「手助け」を買って出ているのが、一部の不正業者だ。そうした業者はストアのランキング操作を有料で請け負い、顧客のアプリをトップ25(場合によってはトップ10)にランクインさせている。報酬は通常は1000ドル程度から。ランキングが上位になるほど高くなる仕組みだ。
こうしたアングラ業者がランキングの不正操作に用いる手法には、幾つか種類がある。例えば、人を雇って1日に何度もアプリをダウンロードさせているところもあれば、ダウンロードプロセスを自動化するプログラムを優秀なハッカーに開発させているケースもある。あるいは、アプリの評価システムの欠陥を見つけ出し、結果を改ざんして、アプリが実際よりも多くダウンロードされているように見せ掛けるという方法もある。
こうした操作は秘密裡に行われるため、不正が実際にどの程度行われているのかは判断し難い。「ランキングを引き上げるための不正なテクニックは、アプリストアが誕生したその日から使われているはずだ」とJ. Gold Associatesのゴールド氏は指摘する。こうした不正手段を用いているアプリは、少なめに見積もれば上位アプリの幾つかにとどまるが、多めの見積もりでは人気アプリの半分は疑わしいという。
運営者側の対応は?
ではアプリストアの運営者は、こうした不正行為を抑止するためにどのような対策を講じているのだろうか? 実はその点も定かではない。「より良い結果を提供できるよう、ストア運営者は評価のメカニズムに常に微調整を加え、改良を心掛けている」と指摘するのは、ArnoldIt.comのアーノルド氏だ。ただし、こうした評価メカニズムはストア運営者にとっては競争上の差別化要因でもある。そのため、各ストアがどのようなアルゴリズムや測定基準を使用しているのかは一般には知られていない。マイナスの評判が立つのを嫌い、ストア運営者はおおむね、不正行為の抑止措置についても説明を拒否している。そのため、消費者はこの問題についてほとんど情報を与えられていないというのが実情だ。
だが2012年2月には、この問題の重大性が示される出来事があった。自社ストアの評価システムが完璧ではないことをAppleが認めたのだ。Appleは開発者向けページにメッセージを掲載し、次のように警告している。「何か素晴らしいアプリを開発したら、そのアプリを皆に知ってほしいと思うのは、誰でも同じだ。だがアプリを売り込む上で、App Storeのランキング上位入りを宣伝したり請け負ったりするサービスを利用することは避けるべきだ。直接はランキング操作ややらせレビューにかかわらなくても、そうしたサービスを利用するだけで当社の開発者向けプログラムのメンバー登録を抹消される可能性がある」
また伝えられるところによれば、AppleはApp Storeで幾つかのアプリの登録を解除し、一部のハッカーによる不正なランキング引き上げ行為をブラックリストに載せているという。ただしAppleはそうした措置について公式には認めておらず、不正業者を名指しもしていない。そのため消費者には、自分が参考にした口コミ評価が本物かどうかを知るすべはない。
実際、アプリストアと不正業者の間ではいたちごっこが繰り広げられている。まず業者が評価システムの欠陥を見つけ、それを悪用する。そしてベンダーがその欠陥に気付き、修正を施す。その後は、また最初から同じプロセスの繰り返しだ。
そしてこの争いは基本的には投資の戦いとなっている。つまり、相手を出し抜くのに必要な資金を十分に投じられるのはどちらかということだ。不正業者にとってはランキング操作が本分であり、それに専念することが可能だ。だがストア運営者には、ランキングの他にも考慮すべき事柄が幾つもある。「アプリストアの運営者は恐らく、評価システムの監視より、例えば、発注システムの改善の方に関心があるはずだ」とJ. Gold Associatesのゴールド氏は指摘する。そのため、この問題はすぐには解決しそうにない。
では、消費者はどうすべきか? まず大切なのは教育だ。新しいアプリを探す際には、ストアで提供されている口コミ情報が真実とは限らないという点を認識しておく必要がある。アプリの評価は複数のストアでチェックし、ランキングに不審な点がないかを確認することも重要だ。またストアのアフィリエイトではない情報サイトの第三者の意見であれば、ストアで提供されている情報よりも参考になるだろう。最後にもう1つシンプルな方法としては、友人に尋ねるという手もある。この方法であれば少なくとも、情報が不正なものでないことだけは確かだ。
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