AMDはARMライセンス取得に動くか
ARM・x86統合プロセッサも視野!? AMD巻き返し戦略の中身
タブレット向けプロセッサ市場で出遅れた米AMDは、新プロセッサの投入で巻き返しを図る。さらに同社は競争力向上の切り札とすべく、英ARMとの関係強化の可能性を探っているようだ。
米AMDは、タブレット市場への対応という点ではやや動きが鈍かったものの、ここにきて同社は方針を大きく転換。同市場で基盤を確保する構えを見せる。しかし(同社にとってはいつものことだが)、その可能性には疑問符も付く。
米IntelがAtomプロセッサでNetbook市場に全力を傾注していたとき、AMDはそのチャンスをみすみす見逃した。スマートフォン市場で支配的地位を築く英ARMは、新たに認知されたタブレット市場に覇権を広げた。
AMDの出遅れは、Netbook市場とタブレット市場への進出に消極的だったダーク・メイヤー元CEOを辞職に追い込む結果となった。長引いた後継者選びの末、2011年8月に中国Lenovoの元幹部であるロリー・リード氏が同社のかじ取りを任された。
それから6カ月後にAMDが開催した年次イベント「Financial Analyst Day」において、同社は「Hondo」と呼ばれる新プロセッサを柱とするタブレット戦略を発表した。同社でタブレット担当製品マーケティングマネジャーを務めるクリス・サトフェン氏は、「ダーク(メイヤー)が去ってロリー(リード)が来るまでの間、われわれは省電力技術の開発に注力していた。そしてロリーの就任後、この取り組みをさらに強化している」と語った。
実は、AMDは2011年にNetbook用プロセッサを市場に投入している。「Z-01」(コードネームはDesna)という、デュアルコアの1GHzプロセッサだ。Z-01は一部の製品で採用されたものの、市場で注目を集めるには至らなかった。HondoはZ-01をベースとし、性能を犠牲にすることなく電力効率の改善が図られるという。
Intelは2008年以降、Atomプラットフォームを推進してAMDに3年の差をつけた。いや、3年というのは必ずしも正しくない。Hondoは、「Brazos」と呼ばれる同社のプロセッサから派生した技術だ。Brazosは、AMDが開発する省電力ノートPC用プロセッサ「Fusion」(同社はCPUではなくAPUと呼んでいる)の1種で、数年前から開発が進められてきた。Fusionは、AMDの命令セット「AMD64(x86-64)」と、同社が買収した米ATI Technologiesのグラフィック技術をベースに開発された。ATIのグラフィック技術は、IntelのGPUに対して十分以上の競争力を持っており、ARMの技術よりも明らかに優れている。
「BrazosはNetbook分野でAtomベースのソリューションを圧倒している。18ワット部品を使用する低価格ノートPCや8ワット部品を使うNetbook製品の分野では市場を支配した」と話すのは、米市場調査会社Insight64のリサーチフェロー、ネイサン・ブルックウッド氏だ。
「Intelは2012年後半にタブレット用プロセッサ『Clover Trail』を投入する予定だが、Hondoはこの製品といい勝負をするのではないだろうか。IntelがClover TrailでAMDと互角のGPU性能を実現できるかどうかは不明だが、グラフィック性能に限れば、AMDの優位は今後も続くと思う」とブルックウッド氏は付け加える。
プロセッサのパフォーマンスを維持しつつ消費電力を削減することに注力するAMDは、ARMとIntelの両社に対抗できると考えている。「APUの真価は、別個のGPUとCPUを1個のダイに統合できる点にある。メディアの閲覧や再生、軽いゲームといった利用形態が中心のタブレット市場では、われわれは競争相手と互角に勝負できると思っている」とAMDのサトフェン氏は語る。
ARMと浮気?
AMDの方針転換はタブレット市場への参入だけではない。Analyst Dayでのプレゼンテーションでは幾度となくARMに言及するなど、ARMとの「浮気」の可能性もちらつかせた。
多くの強みを持っているARMだが、弱点も抱えている。まずARMプロセッサは32ビットCPUであり、64ビット化は2013年か2014年になる見通しだ。つまり、それまでは従来の最大4Gバイトメモリという制約が付きまとう。これに対し、一部のAtomプロセッサやHondoは64ビットだ。また、ARM搭載のWindows 8タブレットは従来のx86コードが動作しないため、新しいMetroアプリ専用のプラットフォームとならざるを得ない。
一方、サトフェン氏は「市場で競争力を獲得するための方策を幾つか検討中だ。ロリーと経営幹部が長期的な成功につながる方針を打ち出すだろう」と話す。
ブルックウッド氏によると、ARMからライセンスを受ければAMDは競争相手に対して独自の強みを手にすることになるという。「AMDはこの可能性を“俊敏性”という言葉で幾度となく示唆した。これは、同社が唯一の命令セットとしてx86に縛られないことを意味する。同社では、ARMとx86を統合したチップをユーザーが求めるのであれば、それに応えるつもりだとしている。そして、それができるのは世界中でAMDだけだ。Intelはもちろんそんなことはやらないだろうし、ARMライセンシーでx86技術を利用できる企業は他に存在しない。この点についてはAMDの独壇場だ」と同氏は話す。
今のところ、AMDは2012年内に予定されているWindows 8のリリースに照準を合わせている。「現在、Hondoが各社の製品で採用されるよう取り組みを進めている。HondoはWindows 8と同じく2012年中にリリース予定だ。それまでに顧客企業が製品を市場に投入できるようにするつもりである」(サトフェン氏)
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