バイナリ非互換性は問題ではない?
ARM版Windows 8モバイル端末のメリットとデメリット
ARM搭載端末向けのWindows 8がもたらすものはメリットかデメリットか。ARMとx86の非互換性をデメリットとして挙げる声に対して、ARM搭載端末向けWindows 8のメリットはあるのか?
企業のIT部門が対応しなければならないモバイル端末がまた1つ増えた。ARMプロセッサ搭載のWindows 8モバイル端末だ。
米Microsoftは最近、Windows 8のおおよそのリリース時期と、米Intelや米AMDが提供する従来のx86プロセッサを搭載したデスクトップ/ノートPC向けのバージョンに加えて、将来的にはARMプロセッサを搭載したモバイル端末やタブレット向けのバージョンを用意することを発表した。
Microsoftのこの決定がもたらす効果を企業が心底実感できるようになるまでには、数年かかる可能性があると専門家は口をそろえて言う。しかし、IT担当者はこの変更の持つ意味を早く理解するに越したことはない。x86用に開発されたアプリケーションはARMプロセッサでは動作しないし、逆にARM用アプリケーションはx86で動作しないからだ。
米ITコンサルティング会社Cornerstone TechnologiesでITエンジニアリングサービス担当ディレクターを務めるユージン・アルファーロ氏は「アーキテクチャの変更は世の常だが、信頼性と安定性に関して大きなリスクを伴う。IT担当者は、電話対応ができなくてお払い箱になることはないが、コンピュータを無事に運用できなければ首になる」と新技術を迎え入れる準備の重要性を説く。
Windows 8の展望に変化あり
Microsoftは2011年12月に、Windows 8のβ版を2012年2月にリリースすると発表した。Windows 8は、リリースされれば従来のWindowsインタフェースを刷新する初めてのバージョンになる。結局のところ、Windows 95とWindows 7のユーザーインタフェース(UI)には、ここまで大きな違いはなかった。
ARM版Windows 8では、UIとしてタッチ操作対応のタイル型のMetroのみがサポートされる。一方、x86版のWindows 8では、Metroの他に従来のデスクトップインタフェースも用意される。
従って、デスクトップ版であれば、否が応でもMetro UIへの対応が必要になることはないが、私物端末の業務利用(BYOD)を推奨する企業では、デスクトップ版のWindows 8でMetro UIに慣れておくようエンドユーザーに働き掛けるのも一案だ。それにより、Android端末やiOS端末よりもARM搭載のWindows端末の使用が促され、管理負荷を軽減できる可能性がある。
米Gartnerのアナリスト、マイケル・シルバー氏は、この点をIT部門にとってのメリットの1つに挙げている。
「Windows 8端末であればWindows PCの保護ノウハウを応用できるため、セキュリティ対策や監査を比較的容易に実施できる。AndroidやiPadと異なり、企業にはWindowsタブレットの保護に使えるポリシーやツールが既にある。フォームファクタは違っても、WindowsがOSであることに変わりはない」というのがその理由だ。
ARM版Windows 8のメリットとデメリット
RISCアーキテクチャに基づくARMには、x86と比べてさまざまなメリットがある。中でも、高速処理、バッテリー持続時間、低発熱といった特徴は、スマートフォンやタブレットだけでなく、プリンタやデジタルカメラに至るまで、あらゆる機器に理想的なCPUだ。
近年ではマルチコアのARMプロセッサも登場し、通常のx86プロセッサに匹敵する処理性能を実現している。
デメリットは、Microsoftのいう“リッチ”アプリケーションをARMプロセッサでは実行できないことだ。リッチアプリケーションはマウスとキーボードを使った操作に適しているアプリケーションであるため、ARM版Windows 8では、タッチ操作専用のMetro UIしか採用されない。
また、ARMとx86は同じではないため、ソフトウェアの互換性が懸念されている。しかし、カナダのマネージドサービスプロバイダーLevel Platformsでパートナーコミュニティー担当ディレクターを務めるデイブ・ソーベル氏は、「MicrosoftはARM端末でもWindows認定プログラムを展開すると思われるので、ソフトウェアの互換性という意味では想定外の事態に見舞われることはないはずだ」と話す。
他にも、かなりの数のアプリケーションがWebベースであることから、互換性の問題は起きないのではないかとする見方がある。ローカルマシンに保存されるプログラムや機密情報が少なくなれば、ARMベースのWindowsタブレットで仮想デスクトップ環境を利用して、従来型ソフトウェアを実行することもできるだろう。
米コンサルティング会社Directions on Microsoftのマイケル・チェリー氏は「Officeをはじめとするアプリケーションをローカルで実行する意味は薄れてきており、この傾向はさらに強まるだろう。エンドユーザーにとっては、生産性を上げ、バッテリー残量を気にせずに1日中端末を使えることの方が重要だ」と話す。
「それこそが、ARM版Windowsの最大のメリットだ」とチェリー氏は言う。
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