米TechTarget調査から見える仮想化の最新動向【後編】
アンチ仮想化は劣勢に、サーバ統合だけではない仮想化のメリット
仮想化の最大の目的はサーバ統合だろう。だが、仮想化の目的はそれだけではない。システム管理の改善やディザスタリカバリなどでも効果を発揮する。一方で、仮想化の必要がない企業も存在する。
前編「VMwareはなぜ選ばれるのか? 仮想化上位3製品の動向をひも解く」では、今日のハイパーバイザー市場における主要プレーヤーを確認するとともに、それらが選ばれる理由、そして自社のインフラに最適な製品を選択をするための基準を示した。後編では、仮想化がもたらす効果と、仮想化が必要ない理由について取り上げる。
仮想化の目的
仮想化を行う最大の目的は統合だ。すなわち、より少ないリソースでより多くのものを提供することだ。最も分かりやすい例がサーバの統合だろう。これは、同じ物理ホストサーバ上に複数のワークロードを実行できるようにするというもの。サーバ統合は、サーバの処理リソースの利用率を大幅に高めると同時に、物理サーバの台数を減らすため、初期投資の抑制ならびに電力コストと冷却コストの削減につながる。米TechTargetの調査の結果、ITプロフェッショナルの59%がサーバ統合の目的で仮想化を利用していることが明らかになった。
ストレージの統合も仮想化の重要なメリットの1つだ。これは異なるアレイに含まれるストレージを特定し、未使用のストレージを1つのプールに集約するというもので、物理ストレージが置かれた場所にかかわらず、このプールをプロビジョニングすることができる。一方、ネットワークの統合は物理LANを複数のネットワークに分割することを可能にする。また、複数の物理ネットワークを1つの論理LANに集約することも可能だ。いずれのケースでも、セキュリティとトラフィック制御にメリットをもたらす。
ストレージ仮想化のメリットが分かる記事
ユーザーの端末上(エンドポイント)でも、アプリケーションの仮想化とVDI(仮想デスクトップインフラ)製品は、デスクトップ用のリソースをサーバに置くことによってアプリケーションの配信形態を大きく変えた(関連記事:デスクトップ仮想化の仕組みとメリット)。これによりネットワーク管理者は、デスクトップの管理とセキュリティを強化することができる。TechTargetの調査では、回答したIT管理者の20%近くが「エンドポイントの仮想化を導入する(あるいは拡大する)」と答えた。
統合はシステム管理の改善にもつながる。例えば、50台以上のサーバで50個のワークロードを管理するよりも、10台あるいは5台のサーバ上で動作する、仮想化された50個のワークロードの挙動を監視し、最適化するソフトウェアツールを利用する方が効率的だ。「up.timeやMicrosoftのSCCM(System Center Configuration Manager)2012などは、仮想インフラの管理作業を改善し、簡素化することを狙った製品だ」とクレイマン氏は話す。
システム管理の改善はデータセンターの俊敏性を高めることにもなる。従来の物理ハードウェアの場合に必要な購入承認や発注、受け入れ、配備といった作業に掛かる時間とは比べものにならないほどの短時間で新しいワークロードを配備して設定することが可能になるのだ。調査回答者の少なくとも28%がリソース割り当て用として仮想化を利用しており、さらに20%がVM作成のベースとなる「ゴールデンイメージ」を維持するために仮想化を利用している。
仮想化による俊敏性は、ディザスタリカバリのようなミッションクリティカルな作業にも役立つ(関連記事:仮想化で得られる節電効果、「電気料金は4分の1以下に」)。調査では、ITプロフェッショナルの43%がディザスタリカバリと可用性改善のために仮想化を利用していることが分かった。VMは保護と複製が容易に行えるので、従来のディザスタリカバリ対策を講じるよりも、VMを保護し、遠隔地にあるデータセンター施設に仮想環境を複製する方がずっと簡単だ。こうしておけば、管理者は必要に応じて、複製された仮想インスタンスを実行したり、複製されたインスタンスを本来の場所に復元したりすることができる。
仮想化の必要性がない企業も
大多数の企業のIT部門は仮想化の導入と利用拡大を急いでいるが、この技術を避ける理由が存在することも認識しておく必要がある。TechTargetの調査では、仮想化を導入しない方針を決めた数少ないITプロフェッショナルは「仮想化の採用は現実的ではない」と答えている。
仮想化が必要ではないと回答した人は、「サーバやエンドポイントの数が少ないので仮想化する意味がない」「IT規模の拡大が問題にはなっていない」「既存のアプリケーションは仮想化に向いていない」「経営幹部の承認が得られない」「予算がない」といった理由を挙げている。
「業務環境を仮想化することに対して、根拠のない不安感を抱いている企業はまだ多い。これは主として安定性をめぐる懸念によるものだ」と指摘するのは、金融・不動産関連の情報サービスを扱う米Kroll Factual Dataで主席技術アーキテクトを務めるクリス・ステファン氏だ。「仮想化環境では動作しないような時代遅れのプロセスやアプリケーションを運用している企業もまだ存在する」
しかし仮想化のメリットを否定する主張の論拠は薄れつつある。クレイマン氏によると、ソフトウェアおよびデータベースの大手ベンダーは現在、自社のアプリケーションパッケージを仮想化に対応したデザインに修正しており、各社とも仮想化のベストプラクティスをソフトウェアデザインの一部として認識するようになったという。
「この状況はわずか5年前とは全然違う。当時は、多くの企業がソフトウェアを仮想プラットフォームに移行するのを禁じていた。今ではそれが歓迎されるようになった」と同氏は語る。この意識の変化は主として製品の成熟化によるものだ。各社の仮想化製品は安定性が改善されただけでなく、最近のサーバでは非常に優れたパフォーマンスを発揮するようになったのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
米TechTarget調査から見える仮想化の最新動向
この記事の著者
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
3
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
8
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
9
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
10
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー