DR/BCP対策に仮想化を
仮想化で得られる節電効果、「電気料金は4分の1以下に」
ヴイエムウェアが東日本大震災を受け、仮想化でできる企業のDR/BCP対策について提案している。
VMware製品のプレミアパートナーである日立情報システムズは4月20日、仮想化やプライベートクラウドをテーマに「第32回 VMware理解が深まるセミナー」を開催した。その中でパートナーであるヴイエムウェアは、東日本大震災を受け、有事における仮想化の活用について講演を行い、仮想化が災害復旧(DR)と事業継続計画(BCP)にどう役立つのかについて語った。講演したヴイエムウェア パートナーマネージャの筒井昭夫氏は、「震災をテーマにすることで不謹慎という批判も出るかもしれないが、日本のために仮想化ベンダーのヴイエムウェアとしてできることを提案したい」という思いから講演を決めたと話した。本稿ではその講演の模様をリポートする。
今回の震災で分かったこと
筒井氏の話によると、東日本大震災を経て明らかになった企業のITの利用に関する現状は4つにまとめられた。
1つ目は、DR/BCP対策をしている企業が少なかったこと。例えば、宮城県南三陸町では全戸籍データが消失した可能性が高いと報じられた。戸籍を電子化して保存していても、地震や津波で建物が全壊した場合、別の場所にバックアップを取っていない限り復元は不可能だ。自分でデータを抱えることが必ずしも安全ではないことを意味する。
2つ目は、多くの企業では非常時の働き方のルールがきちんと整備されていなかったことだ。大地震があった3月11日の翌週は、計画停電の影響で首都圏の鉄道が通勤時間帯に大混乱に陥った。ホームに人があふれ返り入場規制をした駅もあった。もし企業が在宅勤務環境を整備していれば、こうした大混乱は軽減できたのではないだろうか。
3つ目は、首都圏のデータセンターが震災の影響をほとんど受けなかったということだ。筒井氏は「今後、企業データのクラウドへの移行が加速することは間違いない。また、クラウドと仮想化はセットで実施されるもの」と述べた。
4つ目は福島原子力発電所の事故による企業の節電だ。「東京電力の電力需要のうち65%が業務・産業用途。そのうち68%はオフィスの空調・照明だ」(筒井氏)
これらの課題解決を支援するためにヴイエムウェアが提案するソリューション、それはもちろん仮想化だ。
仮想化の特徴をおさらい
まずは仮想化の特徴をおさらいしよう。VMwareの仮想化の特徴は3つ。
(1)隔離
同一基盤上で動作している仮想マシン同士が、安全に隔離され相互に影響しない。
(2)カプセル化
仮想マシンにある全ての情報はファイルとして格納される。このファイルの特性を生かし別のハードウェアにコピーできる。
(3)ハードウェア非依存
ハードウェアと、OSより上の層が隔離されているので、仮想マシンを別のハードウェアに移動させてもそのまま動く。
これら3つの特徴の上に、コンピュータリソースの調整と動的な割り当てを行う「VMware DRS」、実行中の仮想マシンを別の物理サーバに移行する「VMware vMotion」、物理サーバ障害時、他の物理サーバで仮想マシンを自動的に起動させる「VMware HA」といったVMwareソリューションを組み合わせることで、複数種の物理マシン間でプールされた仮想マシンが自動的に移動を繰り返し、負荷分散や高可用性を実現する。
仮想化でできること
筒井氏によると仮想化でできる支援は2つ。企業の節電の支援と、DR/BCP対策の支援だ。
節電
仮想化による節電には2つの考え方があるという。まずはサーバ仮想化のサーバ統合で、物理サーバ台数を削減することによる節電だ。「最近の平均的な統合率は10~20分の1。また、インテルのNehalemを搭載したサーバなど、サーバ統合に利用される最近のサーバは、低消費電力かつ低発熱。よって冷却に使用する電力も少ないという二重のメリットがある。数値的な節電効果は、控え目に言っても電気代は従来の4分の1以下、冷却コストは2分の1以下まで下がることが一般的」(筒井氏)。具体例もある。「稼働物理サーバ30台を3台に削減した場合、電気代は月間141万円、年間1701万円削減できた事例がある」(筒井氏)
次に、サーバ仮想化実施後の節電も重要だという。VMware DRSで仮想マシンの統合率を上げれば、電気代を削減できる他、稼働率が低い仮想マシンを片寄せする「VMware DPM」により、サービスレベルを保証しつつ消費電力を最小限に抑制できる。「ベンチマークテスト(VMmark)で、2割程度のコスト削減を見込める」(筒井氏)ことも分かっているという。
DR/BCP対策
BCP対策では、「VMware View」を用いたデスクトップ仮想化による在宅勤務体制の整備で、いつでもどこでも仕事ができる環境作りを支援するという。先に述べた通り、大地震があった3月11日の翌週、首都圏の鉄道は大混乱に陥った。「もはや在宅勤務体制の整備は福利厚生の一環ではなく、多様な働き方を認め、ビジネス継続性を強固にする企業の社会的責任である。これまで官公庁や金融機関の導入が多かったデスクトップ仮想化だが、今後は全ての業種で導入が増えるだろう」(筒井氏)
DR対策では、DRサイト構築のステップとして仮想化を有効な手段として勧めている。先述した仮想化の特徴であるカプセル化によって、データの移行やリカバリステップを短縮できる。またハードウェア非依存の特徴のために、DRサイトのハードウェアに依存しない一貫したDRプロセスを踏める。仮想化はDRサイトの構築を容易にする手段といえる。
VMwareソリューションで見るDRシステム導入プロセス
この他ヴイエムウェアは、複雑なリカバリプロセスを自動化し、リカバリプランやリカバリテストを容易にして迅速なDRを実現するための製品「VMware vCenter Site Recovery Manager(SRM)」を用意している。VMware SRMは2008年の発売以来、世界で5000以上の導入実績があり、VMware vSphereの次に売れている製品だという。2010年度では対前年比で50%以上の販売実績だった。
とはいえ、DRサイトの構築は、保険的意味合いが強い一方で、ネットワーク回線やハードウェア投資などでコストが掛かるため、多くの企業にとってハードルが高い。筒井氏はDRソリューションの導入の仕方について「DRソリューションは順を追って取り組んだ方がいい。仮想化によるカプセル化→VMware vMotionなどのライブマイグレーション機能→VMware HAやVMware DRSによる高可用性→VMware FT→VMware vCenter Site SRMによるサイト間でのDR対策といったように、可用性やビジネス継続性を実現するソリューションを1つずつ検討していくのがDR対策の近道」とアドバイスした。
DRサイトを構築した後も、ビジネスや環境の変化に応じて定期的にDR体制を見直す必要がある。業種や企業にもよるが全てのシステムを保護する必要は必ずしもないだろう。データの保護、バックアップは優先順位を明確にすることが大切だ。
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