企業にとって多くの想定外が発生した東日本大震災。事前に策定していたBCP(事業継続計画)の実行にも混乱が見られた。そこから学ぶことができるBCPの課題と今後の対策とは。
2011年3月11日に発生した東日本大震災では日本国内のみならず、米国などにある海外企業でも業務が停止した。災害規模が巨大であったことにもよるが、その業務停止に至るパターンは大きく分けて3通りある。
地震、津波の被害によって、オフィスや工場の生産設備が被災し使用できなくなり、従業員にも被害が出るなどしたため、業務が継続できなくなった。
オフィスや工場、従業員などには直接的な被害がなかったが、停電や上下水道の不通、交通遮断などにより操業が中断した。被災地域での社会インフラ途絶による休業は想定範囲内のものである。しかし、首都圏においてはオフィスや設備、従業員が無傷で、かつ、近隣の社会インフラ設備も健在であったのにもかかわらず、いわゆる「計画停電」により休業を余儀なくされた企業があったことが特徴的である。
さらに、従来は社会インフラとは見なされてはいなかった、ガソリン供給・販売、ビルメンテナンス、情報システムの運用・保守といった「準社会インフラ企業」の業務停止も実質的に社会インフラ機能の途絶と同じ影響があったことが特筆される。
同じくオフィス、工場、設備などの経営リソースには被害がなく、かつ近隣地の社会インフラが健在であった場合でも、部品調達先が被災し、部品供給能力の喪失や、輸送手段が確保できなくなったことで部品不足に陥り、生産が継続できなくなった製造業が目立った。特に、首都圏以西にある自動車などの製造業各社の工場などがこれに当たる。
多くの企業がBCP(事業継続計画)を作っていたが、実際に機能したのだろうか? 被災したある県のBCP推進担当者は「県下の企業向けにBCP策定支援策を実施していたが、とてもそのBCPを発動できるような状況ではなかった」と話していた。
マスコミ報道では、少数の「BCPの成功例」を見つけることができるが、実際は「従業員の安全を第一に考えて緊急時行動計画を策定して訓練をしていたので、地震後、全従業員が即時・一斉に高台に避難して無事だった。津波が引いた後に残った一部の生産設備で事業が継続できた」というケースが多いようである。
企業は震災前、苦労してBCPを策定してきた。事業への影響度分析や、優先して継続する業務の順番、緊急時の行動計画、バックアップオフィスの立ち上げ・利用手順、情報システムのバックアップ切り替え・利用手順などだ。しかし、実際はBCP策定時のもくろみ通りにはいかなかった企業が多かったようである。
各企業における今回の大震災での被災後の実態とBCPの成果については、今後の調査結果を待ちたい。現在、入手可能な情報から推測される「BCPが機能しなかった理由」は次のようなものである。
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