オブジェクトストレージを理解する(1)
拡張性に差がある、オブジェクトストレージとスケールアウト型NAS
オブジェクトストレージは、スケールアウト型NASに代わる有力な選択肢となりつつある。その理由を解説する。
現在、オブジェクトストレージは、スケールアウト型NAS(Network Attached Storage)に代わる有力な選択肢となりつつある。その理由として以下の点が挙げられる。
- 拡張性に制限がない
- サーバの処理能力やネットワークの帯域幅への依存度が低い
- ストレージコマンドが不要でインターネットプロトコルでアクセスできる
- 独自のメタデータが使える
- 市販の標準的ハードウェアをそのまま利用できる
また、ファイルベースあるいはブロックベースの従来のストレージがオブジェクストレージにリプレースされるケースもある。こうした動きは、特にパブリック/プライベートクラウドの分野で進んでいる。今回から3回にわたり、オブジェクトストレージの仕組みを詳しく解説するとともに、このシステムがクラウドインフラの基盤技術になった背景について述べる(関連記事:ストレージの理想的な管理要件を満たす「オブジェクトストレージ」)。
オブジェクトストレージ vs. 従来型ストレージ
ブロック/ファイルベースのストレージに幅広い選択肢がある今日、新たなストレージ技術の必要性はどこにあるのか、という疑問が生じるのは当然だ。いずれも実証済みの成熟した技術であり、分散化が進むクラウド対応のエコシステムのニーズを満たすように既存技術を改良すればいいのではないかとも思える。
ブロックベースのストレージでは、下位レベルのストレージプロトコル(SCSIコマンドなど)を使ってディスク上のブロックにアクセスする。オーバーヘッドは少なく、抽象化レイヤーが付加されることもない。この方式はディスク上のデータへのアクセスが最も高速であり、上位レベルのタスク(マルチユーザーアクセス、共有、ロック、セキュリティなど)は通常、OSに委ねられる。言い換えれば、ブロックベースのストレージは、下位レベルの基礎部分を担当し、それ以外の機能は全て上位レベルのアプリケーションに任せている。一方、オブジェクトストレージはブロックベースのストレージノードを備え、オブジェクトストレージ用ソフトウェアスタックが他の全ての機能を提供する。
ブロックベースのストレージがオブジェクトストレージを補完する技術と見なせるのに対し、ファイルベースのストレージは直接的に競合する技術といえるかもしれない。その最大の特徴である拡張性は、スケールアウト型NASによってサポートされる。スケールアウト型NASはオブジェクトストレージと同様、ノードを追加することで水平的に拡張できる。しかし名前空間に制限がある階層型ファイル構造をベースとしているため、オブジェクトストレージと比べると拡張性に限界がある。純粋なオブジェクトストレージは、ほぼ無限に拡張可能なフラットな構造を採用し、オブジェクトIDのビット数のみに制限されるだけだ。
スケールアウト型NASは制限があるものの、オブジェクトストレージの特徴の多くを備えており、ベンダー各社は自社のスケールアウト型NASをオブジェクトストレージに分類されるようにするために、REST(Representational State Transfer)プロトコルなど、欠落していた機能の追加を急いでいる。
米Hewlett-Packard(HP)のストレージ部門でシニアプロダクトマネジャーを務めるパトリック・オズボーン氏は「HP IBRIX X9000 Storageは、CIFS、NFSおよび高い拡張性のサポートに加え、WebDAVとRESTもサポートしている。当社がオブジェクトストレージの分野をリードしているのは明らかだ」と主張する。
しかし、オブジェクトストレージの意味するところは人それぞれであり、共通に認められた定義は存在しない。あるストレージシステムがどの程度までオブジェクトストレージであるかどうかを判断するには「必須要件となる属性」と「有用ではあるが必須ではない属性」を区別する必要がある。次回は、そうしたオブジェクトストレージの属性を紹介する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
オブジェクトストレージを理解する
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
6
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
9
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
10
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー