あらためて見直す中小企業にとってのサーバ仮想化【第3回】
中小企業がサーバ仮想化の投資対効果を最大化するには?
中小企業がサーバ仮想化活用で直面する課題のうち、管理・運用や社内における意思決定など「モノ」以外に関する事項について明らかにし、それらの解決策を探る。
「中小企業にとってのサーバ仮想化とは何か?」をテーマとした本連載、第2回となる前回「サーバ仮想化導入の障壁、ハードウェアコストの課題を解決する」では、サーバ仮想化における課題を大きく3つ挙げ、そのうちの「1.サーバ仮想化に必要な『モノ』に関する課題」について詳しく見てきた。ハイパーバイザーやストレージに関する工夫によって、サーバ仮想化に必要なモノのコストを軽減できることがお分かりいただけただろう。
しかし、既に利用している物理サーバをそのまま利用できるとは限らず、何らかのコスト負担はどうしても発生する。従って、モノのコストを抑えるという発想だけでなく、「導入効果を最大化する」という視点が必要になってくる。その点に深く関係してくるのが、「2.サーバ仮想化環境の導入・運用に関する課題」と「3.社内における意思決定に関する課題」といった残る2つの課題グループだ。第3回となる今回は、これらの解決法を探りながらサーバ仮想化に必要な具体的なコスト感を俯瞰し、導入効果を得るためのポイントについて考えていく。
まずは残る2つの課題グループを振り返り、それらの解決策を見ていくことにしよう。
2.サーバ仮想化環境の導入・運用に関する課題
- ハイパーバイザーの扱いが難しい
- ストレージ環境の扱いが難しい
- ネットワーク環境の扱いが難しい
- 適切に管理・運用できるか不安である
- どこから着手すればよいか判断できない
- システムがサーバ仮想化に対応していない
- 提案してくれる販社/SIerがいない
3.社内における意思決定に関連する課題
- 得られる投資対効果が不明確である
- 事例が少ないため踏み切れない
- 社内からの抵抗や反感がある
サーバ仮想化環境の導入・運用に関する課題
「ハイパーバイザーの扱いが難しい」「ストレージ環境の扱いが難しい」「ネットワーク環境の扱いが難しい」「適切に管理・運用できるか不安である」といった課題は、第2回で挙げた「モノ」の管理・運用に関連する。中小企業でも容易に導入できるようにハイパーバイザーを事前に組み込んだサーバがあることは、第2回でも述べた通りだ。その際、サーバ仮想化環境の管理・運用についての詳しいマニュアルが付属するケースが多い。また、サーバ納品時に顧客のオフィスまで出向いてレクチャーを行う付加サービスを提供しているケースもある。自社の予算やITスキルに合わせて適切な製品を選ぶとよいだろう。
また、「システムがサーバ仮想化に対応していない」という事態もあり得る。業務パッケージによっては仮想サーバ環境における動作確認が取れていないものもあるので注意が必要だ。ハイパーバイザーを提供する主要な企業が、以下のように対応アプリケーションの一覧を確認できるWebサイトを提供しているので利用するとよいだろう。
- VMware製品対応アプリケーション一覧
- Windows Server 2008 R2対応アプリケーション一覧([Hyper-V]にチェックを付けて確認)
- Windows Server 2012対応アプリケーション一覧([Hyper-V]にチェックを付けて確認)
第2回のグラフにある通り、「提案してくれる販社/SIerがいない」という課題を挙げる割合は2.7%と最も低い。昨今はサーバ仮想化に取り組む販社/SIerも徐々に増えてきている。この課題については解消が進みつつあると考えられる。
そうなると、「2.サーバ仮想化環境の導入・運用に関する課題」については「どこから着手すればよいか判断できない」が残された最も大きな課題ということになる。第1回「【導入効果】台数削減だけではないサーバ仮想化のメリット」では、サーバ仮想化には物理サーバの台数削減以外にも多くのメリットがあることを述べた。だが、そのうちのどれから着手すればよいのか? どのシステムを対象とすればよいのか? の判断が難しいというのは当然の疑問だろう。この判断を間違うと、期待された導入効果が得られないといった結果になる可能性もある。これに対する答えを与えてくれるのが以下のグラフだ。
このグラフは、サーバ仮想化を活用中/検討中の年商5億円以上500億円未満の中小企業に対して、まずサーバ仮想化の目的を尋ね、その目的別にハイパーバイザーやストレージに関する課題をどれだけ抱えているかを集計したものである。サーバ仮想化の目的として選択肢に挙げたのは第1回で整理した以下のような項目だ。
目的1:物理サーバ台数の削減
目的2:サーバリソースの最適化
目的3:システムの安定稼働
目的4:システムの迅速な導入
目的5:古いOSやアプリケーションの延命
「目的1,2」のようにカンマ区切りで複数の数字が書かれているものは、複数の目的を同時に実現しようとしているケースを示す。
第2回で述べたように、単に目的1の物理サーバ台数の削減を行う場合と違い、目的2以降では仮想サーバが物理サーバ間を移動するためのストレージ環境が必要となる。そのため、「目的1のみ」と比べると「目的1,2」や「目的1,2,3」のように複数の目的を同時に達成しようとする場合は、ストレージ関連の課題が多く挙げられている。
だが、よく見てみると、「目的1,3」と「目的1,3,5」を比べてみても、挙げられる課題の割合はさほど違いがないことが分かる。つまり、「目的1.物理サーバ台数の削減」と「目的3.システムの安定稼働」に取り組もうとする際、さらに「目的5.古いOSやアプリケーションの延命」を加えても、生じる負担に大きな違いがないということになる。負担が同じなのであれば、得られる結果を最大化した方がよい。
従って、「どこから着手すればよいか判断できない」に対する答えは、「サーバ仮想化によって得られる複数のメリットを同時に享受できるように、幅広いシステムを対象とする」ということになる。「まずは無難なファイルサーバだけ」ではなく、「販売管理システムは重要なのでサーバ障害が発生したら心配だ」「Windows NT Serverで昔から動いている顧客管理システムも物理サーバが老朽化してもう限界だ」「ファイルサーバやグループウェアのサーバは負荷が低いので1台のサーバを丸々割り当てるのはもったいない」といった複数の課題をサーバ仮想化によってまとめて解決するというアプローチが導入効果を得る上で極めて重要なのである。
社内における意思決定に関連する課題
次に「3.社内における意思決定に関連する課題」について考えてみよう。「事例が少ないため踏み切れない」はベンダー側の事例紹介が徐々に増えていくことによって今後の解決が期待できる。ここでの最大の課題は「得られる投資対効果が不明確である」という項目だ。本連載のテーマでもあり、サーバ仮想化における課題を尋ねた結果でも28.7%と最も多くの中小企業が挙げている(参照:第2回のグラフ)。「社内からの抵抗や反感がある」という課題も、投資対効果が明示されないことによって生じた結果といえるだろう。
第1回からここまで、中小企業におけるサーバ仮想化のポイントとして以下のような点を述べてきた。
- サーバ仮想化がもたらす物理サーバ台数以外のメリットに着目すること
- サーバ仮想化の「モノ」におけるコスト負担を軽減する商材を活用すること
- 複数のメリットを同時に生かすように幅広いシステムを対象として考えること
これまでの解説によって、「ウチの会社の場合は、▲▲システムでは●●のメリット、■■システムでは◎◎のメリットが生かせそうだ」といったイメージをおおむねつかむことができただろう。となれば、「得られる投資対効果が不明確である」という課題への答えに必要なのは「実際にどれくらいの費用が掛かるのか」というコスト感である。そこで最終回となる次回には、サーバ仮想化を実践する際の具体的なコスト感を俯瞰し、十分な投資対効果を得るためのポイントについて考えていくことにする。
岩上由高(いわかみ ゆたか)
ノークリサーチ シニアアナリスト
早稲田大学大学院理工学研究科数理科学専攻卒業後、ジャストシステム、ソニーグローバルソリューションズ、ベンチャー企業数社でIT製品及びビジネスの企画/開発/マネジメントに長年携わる。ノークリサーチでは多方面で培った経験を生かし、中堅・中小企業のIT活用全般に渡るリサーチ/コンサル/執筆・講演など幅広い分野を担当。
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