デスクトップ仮想化導入のガイドライン【第1回】
企業の成長を維持、加速させるデスクトップ仮想化の真価
生産性向上や事業継続性などさまざまなメリットが取り沙汰されるデスクトップ仮想化。だが、本当の価値は「企業の成長を維持、加速させる」ことに他ならない。デスクトップ仮想化が持つ2つの側面からその真価を解説する。
CIO(最高情報責任者)や経営層が企業の成長戦略のために検討するIT投資の対象にはどのようなものがあるだろうか。本稿にて解説するデスクトップ仮想化はその選択肢の1つだ。今回から6回にわたりデスクトップ仮想化を実践するためのポイントを解説する。このソリューションがもたらす価値、費用対効果の考え方、費用の抑え方、課題解決の例、技術的に準備しておくべきポイントなどを整理する。今後、デスクトップ仮想化に取り組む方々に基本的なガイドラインとして参考にしていただきたい(連載インデックス:デスクトップ仮想化導入のガイドライン)。
連載インデックス
- 第1回:企業の成長を維持、加速させるデスクトップ仮想化の真価
- 第2回:デスクトップ仮想化のトータルコストを削減する効果的な手段
- 第3回:業界別に見る デスクトップ仮想化による課題解決
- 第4回:5つの仮想化方式を一覧表で比較 ~デスクトップ仮想化導入で準備すべきこととは
連載インデックス:デスクトップ仮想化導入のガイドライン
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デスクトップ仮想化がもたらす価値とは何か
このソリューションの価値を一言でいうと、「企業の成長を維持、加速させる」ということだ。第1回ではデスクトップ仮想化の2つの側面を挙げて、このソリューションがどのような価値をもたらすのか整理する。
まずはデスクトップ仮想化の仕組みを簡単に説明しておこう。デスクトップ仮想化とは、PC上で動作しているOSやアプリケーションをデータセンターやサーバ上で仮想化して動作させ、ユーザーはデバイスからネットワークを介してこれらにアクセスする技術だ。一度データセンター上で動作させてしまえば、ユーザーはいつどこにいても、OSやアプリケーションをサービスとして呼び出せる。この技術がもたらす本質的な価値について、下記2つの側面から解説したい。
1.ビジネスのやり方、働き方を変える
1つ目の側面は「ビジネスのやり方と働き方を変える」ということだ。その目的は収益拡大や競争優位性の維持など企業の成長のためにある。「仮想化」という言葉を聞くとサーバ仮想化がもたらす効果と同様に、管理の効率化やITコストの削減を目的とした技術ではないかとイメージしがちだが、デスクトップ仮想化はそれだけではない。ビジネスや働き方に直接インパクトを与えるという点を認識していただきたい。この点こそがデスクトップ仮想化がもたらす貢献の最も大きな要素なのだ。
サーバ仮想化は物理サーバを仮想化して集約管理する技術であり、その目的は管理効率とコスト削減にフォーカスされている。一方でデスクトップ仮想化はPC上のOSやアプリケーションをデータセンターに仮想化して集約する。重要な違いは、デスクトップ仮想化は仮想環境への移行だけではなく、ネットワークを介した仕組みの変革、つまりシステムアーキテクチャの変革であるという点だ。このシステムアーキテクチャの変革こそが、いつどこにいても、必要なOS、アプリケーションへのアクセスを可能にし、ビジネスのやり方、ユーザーの働き方を変えることにつながるのである。また、(管理者の生産性だけでなく)働き方を変えることによってユーザーの生産性を向上させるという点も重要なポイントだ。
では、デスクトップ仮想化がどのようにビジネスのやり方や働き方を変え企業の成長に貢献するのかをイメージしていただくために、3つのシナリオを挙げて解説しよう(もちろん、この例はほんの一部である。皆さまのビジネスを踏まえ、どう活用ができるのかをぜひご検討いただきたい)。
・生産性向上による業務効率化とビジネス機会の増大
顧客訪問先からセキュアに社内情報を参照・処理できるようにすることで、顧客訪問数、商談スピードを向上させることができる。つまり営業活動のスピードを高め、生産性を向上させ、さらなるビジネス機会を得て企業の成長に貢献するというシナリオだ。また、リアルタイムな情報提供によって接客の質を向上させることにもつながる。
ユーザーの働き方という視点では、事務処理のためにオフィスに戻ることも不要となり、顧客と直接接する時間が大幅に増え、自身のパフォーマンスを向上させやすくなる。このシナリオはスマートフォンやタブレットの導入と同時に検討されることが多い。営業活動に限らず、社外で行う業務、作業については同様の効果が見込めるだろう。
・グローバルでのコラボレーションをセキュアに実現
国内に重要な技術情報を保護しながら、世界中の優れた提携会社と情報共有して、競争力ある製品の開発や質の高いプロジェクトの遂行ができるようになる。より広範囲の組織から高度な専門知識やノウハウを活用することで、他社との差別化や競争優位の維持に貢献するシナリオだ。ユーザーは物理的に分散した地域からバーチャルでプロジェクトに参加することができる。このシナリオは情報共有の範囲を拡大させることで相乗効果を狙うさまざまなビジネスシーンに応用できるものだ。
・短いビジネスサイクルに対応する俊敏性と柔軟性の獲得
業務に必要なデスクトップ、アプリケーションを迅速に展開できるため、営業・販売拠点を競合に先駆けて容易に展開することができる。業務環境のスピーディなデプロイは、拠点の数が多く、その範囲が広いほど販売プロセスにおける大きなアドバンテージとなる。これは市場環境変化の速さに応じて短縮化されつつあるビジネスサイクルに対応できる俊敏性を獲得することに他ならない。ビジネスのやり方そのものを変えるというよりは、ビジネス展開、撤収のスピードを上げることで、競争力や効率化の面でビジネスに貢献するというシナリオだ。ユーザーはネットワークにアクセスさえできれば、いつどこにいてもアプリケーションを利用し仕事を始められるため、迅速に業務に取り掛かれる。
3つの例を挙げたが、このようにデスクトップ仮想化はビジネスのやり方を変え、企業の成長を維持、加速させることに貢献する。同時にユーザーはいつどこにいても仕事ができる環境を手にすることができ、柔軟性、効率性を追求した働き方が可能になる。
2.企業の取り組むべき課題をバランスよく解消
もう1つの側面は、昨今の企業が取り組むべき課題をバランスよく解決できるということだ。下記に重要な課題を洗い出して分類してみた。
まず、コスト圧縮による経営の健全化は常なる要求であるし、昨今は情報漏えい対策やITをベースにした業務の統制を行わなければならない。また、変化の激しいビジネス環境で企業が存続していくためには、俊敏性と柔軟性をもった組織、システムの運用が必要とされる。さらには、在宅勤務や出張先からの業務、モバイルを活用した業務への移行などワークスタイル変革の実現、生産性向上も検討しなければならない。そして企業の成長以前に、事業を継続させる仕組みにも投資をしておかなければならない。このように、課題が山積しているのが現状である(図)。
重要な点は、これらの課題を全て解決しようとすると、その中に潜むトレードオフに突き当たるということだ。IT投資の圧縮やシステム上の統制、データ保護対策といった守りのベクトル(図の1、2)は、企業の生き残りや成長に必要な俊敏性、柔軟性、モバイル活用をはじめとする生産性向上を実現するベクトル(図の3、4)とは相反する(図の5、事業継続だけは少し別の次元の話である)。
例えば、データ保護や統制力を高めるために、クライアント環境に制限を施しユーザー側の利便性を奪えば、ユーザー、ビジネスが必要としている俊敏性や柔軟性を奪うことになる。モバイルデバイスの利用や在宅勤務など、生産性を高めるような環境も実現しにくくなる。通常はこれらの課題を解決するためにそれぞれのポイントソリューションを買い足していくわけだが、個別に最適化する仕組みが複数出来上がり、このトレードオフの関係に悩まされる。つまり、企業が中長期的に解決しなければならない重要な課題であるにもかかわらず、妥協しなければならない課題が必ず残るという構造になっている(こちらを立てれば、あちらが立たずといった状況なのだ)。以上の課題解決にデスクトップ仮想化が有効な理由はこの点にある。デスクトップ仮想化はこのトレードオフを解消して複数の課題を一度に解決できるからだ。
デスクトップ仮想化は、仮想化と集約管理によって運用コストの削減、データ保護、システムの統制力強化を行いながら、業務に必要なデスクトップ、アプリケーションを瞬時に準備、撤収できる環境を整える。つまり守りのベクトルを後押しすると同時に、業務に必要なビジネス上の俊敏性を生み出せる。また、セキュアにモバイル活用ができ、ワークスタイル変革や生産性向上を実現することで成長へのベクトルも後押しすることができる。さらに、いつ、どこにいてもネットワークを介してデスクトップ、アプリケーションを利用できるため、災害時やパンデミック時においてもユーザーが業務を継続できる。
もう1点、複数の課題をバランスよく解決できるという側面は、高い費用対効果を実現することも加えておきたい(費用対効果の考え方については、第2回で解説する)。例えば、情報漏えい対策のためにこのシステムアーキテクチャを導入すれば、ビジネスへの俊敏性と柔軟性、ワークスタイルの変革や生産性の向上とともに、事業継続性の向上を同時に実現できる。つまりデスクトップ仮想化への投資は複数の課題への取り組みにつながっている。
実際にデスクトップ仮想化を導入する際は、解決すべき課題に優先順位を付け、業務内容に最適化した形で各課題を解決することになるため、それなりに時間を要するだろう。しかしながら、課題解決のプロセスを全てこのシステムアーキテクチャの上で描ける点は大きなメリットといえる。昨今、多くの企業がこのソリューションに注目する理由が納得いただけると思う。
今回は、デスクトップ仮想化の持つ重要な側面を取り上げることで、その価値を解説した。1つはビジネスのやり方、働き方を変える、もう1つは企業が取り組むべき課題をバランスよく一掃するということだ。これらの側面はまさに企業の成長を維持、加速させるためのものだ。
次回は、デスクトップ仮想化の投資対効果に関する考え方と、導入・運用コストを抑えるポイントについて解説する。
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デスクトップ仮想化導入のガイドライン
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