本格普及には10年か
正真正銘の4G「LTE-Advanced」が変える携帯ネットワークの未来
正真正銘の4G規格ともいわれる「LTE-Advanced」に関する話題が多くなってきた。LTE-Advancedによってスマートフォンやタブレットが利用する携帯ネットワークはどう変わるのか?
皆さんはLTEについて聞いたことがあるに違いない。ほとんどのキャリアはこの規格に基づく携帯サービスを4Gとうたっている。LTEは「Long Term Evolution」の略語。この技術の開発が2004年に始まった当時は良い名前と思われた。だが、今は2013年であり、LTEの後継の「LTE-Advanced」が日の目を見ようとしている。
Advanced(高度な)が付かないLTE自体も優れた技術だ。理論上の最大スループット300Mbpsや、オールIPのコアネットワークといった特徴を持つ。「4G」という言葉には国際電気通信連合(ITU)の正式な定義があるが、携帯業界のマーケティングでは、LTEに加えてHSPA(High Speed Packet Access)、HSPA+、その他幾つかのネットワーク技術を指す総称として使われており、ほとんどの人にはこの意味での4Gの方がなじみがある。LTEはこれらの技術の代表格だ。
これに対し、LTE-Advancedは正真正銘の4G規格だ。その実効速度は必ずしもユーザーをうならせるものではないだろうが、この規格により、キャリアは帯域需要の増大に対応していける。数年はかかりそうだが、LTE-Advancedの幾つかの課題が克服されれば、当分はこの技術で全てのトラフィックが伝送されるようになるだろう。
携帯ネットワークの需要拡大で実効速度が伸び悩み
LTE-Advanced技術は、最大1Gbpsのスループットを提供する。基地局から加入者端末への下り方向の通信速度が毎秒10億ビットということになる。だが、こうしたパフォーマンスはすぐには望めない。現在のLTEの実装でも、提供されるスループットは300Mbpsのポテンシャルを下回っている。しかし、LTE-Advancedは、キャリアがモバイルブロードバンドサービス需要の世界的な急増に対応していく上で重要な役割を果たすだろう。個々のユーザーが数十Mbpsの通信速度を利用することは、理論的には可能だが、実際にはありそうもない。
ここに問題があり、「使用可能な周波数帯域幅が広いほど、スループットが高くなる」ことに関係している。この普遍的な真理は、通信チャンネルのスループットを規定する重要な方程式であるシャノンの法則の最も重要な要素だ。毎秒10億ビットのスループットを実現するには、少なくとも100MHz幅の周波数帯域が必要だが、この帯域幅を確保するのはかなり難しい。基本的に、3GHz以下の無線周波数帯は各種用途に割り当てられており、3GHz以上の周波数帯の電波は、モバイル用途では送信しにくい。
さらに、この問題にどのような技術で取り組むとしても、多くのユーザーが多くのアプリケーションにアクセスすることによる混雑や、信号の劣化などの問題にも対処しなければならない。このため、これらを踏まえて期待を設定することが重要になる。
われわれは現在、LTE-Advanced技術がほとんどのユーザーに提供するスループットは、20Mbps程度にとどまると見ている。無線サービス需要が拡大を続け、使用可能な帯域幅のオーバーサブスクリプションが発生するからだ。LTE-Advancedは、大きな総回線容量を提供するが、その容量は大抵が既に予約されている。このため、LTE-Advancedは、ユーザー当たりのスループットを高める技術ではなく、キャリアが需要に対応していくために利用できる技術と考えるのがベストかもしれない。
しかし、ネットワーキングやモバイルコンピューティングにおける他のトレンドを考慮すると、スループットの向上に期待が持てるかもしれない。そうしたトレンドとしては、より小さなセルを採用する動きや、Wi-Fiネットワークのユビキタス化が挙げられる。前者は、短距離における無線周波数の効率的な再利用を可能にする。後者は、携帯ネットワーク需要の軽減につながる可能性がある。LTE-Advancedが広く利用できるようになれば、こうした先進的な携帯アーキテクチャや展開戦略への移行が促進されそうだ。
LTE-Advanced技術の普及の障害
多くの既存LTE基地局は、ソフトウェアのみでアップグレードできるため、LTE-Advancedは、少なくとも100MHz未満の周波数帯域幅を使用する方式では、今後数年の間に本格的に実用化されそうだ。こうしたLTE-Advancedサービスは、既に世界各地で運用に入っている。
しかし、現在の規格や技術、キャリア設備の高度化が、LTE-Advancedサービスの開発に道を開いたが、その前途は平たんではない。このサービスの普及には、以下のようなさまざまな要因が影響する。
採算性
携帯ネットワークの構築は、巨額の費用を要する事業だ。大きなコスト要因となるのが無線周波数。世界のほとんどの地域で、無線周波数は競売で売却される。政府が複雑な措置を講じなければ、100MHz幅の空き帯域が見つかることはまずない。そうした帯域幅が使用可能になっても、競売で高値で落札されるのは間違いない。キャリアがその投資の元を取るには、どのような料金設定をすればよいのか。LTE-Advancedサービスのビジネスモデルは、まだ十分に確立されていない。
バックホール
LTEはかなり理論スループットが高いが、現在の実装されているLTEネットワークの多くは、基地局とコアネットワークとを(ひいては外部ネットワークとも)接続する回線に、限られた帯域しか用意していない。そのため、実際のスループットは制限されている。一般にバックホールと呼ばれるこの回線の容量はアップグレードできるが、上で述べたように、こうしたアップグレードの経済的側面は、LTE-Advancedサービスの採算計画を立てる際に考慮する必要がある。
機器
現在の市場には、携帯電話、タブレット、無線ルータなど、LTE-Advancedに対応する機器は存在しない。米Qualcommなど、大手ベンダーによるLTE-Advanced対応部品の設計はかなり進んでおり、近いうちにこれらを搭載した製品が登場する見通しだ。LTE-AdvancedはLTEと下位互換性があるため、こうした機器のことを、LTE-Advancedインフラが構築されるまでの間は、「LTE-Advanced Ready」と呼ぶことになりそうだ。
LTE-Advancedのように大きく進歩した技術は、提供されるまでのリードタイムが長いのが常であり、ほとんどの場合、提供の開始と展開の時期の見通しは、楽観的なものになる。以上の考察を踏まえると、LTE-Advanced技術が携帯ネットワークの標準として普及するまでに今後10年はかかるだろう。しかし、個々のユーザーが利用できるスループットではないにしても、回線容量が飛躍的に増えようとしていることが分かっているのは心強い。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
3
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
8
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
9
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
10
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー