米国への国際電話が1分3円から
導入効果を知る! スマートフォンIP電話サービス
通話料金の大幅削減がウリのスマートフォンIP電話サービス。その導入効果や課題を検証する。
スマートフォンでIP電話が利用できる「スマートフォンIP電話サービス」が充実してきた。特に固定電話や国際電話への通話料金が通常の携帯電話と比べて大幅に抑えられること、3G回線だけでなく無線LANでも電話の発着信ができることなどが、スマートフォンIP電話サービスの魅力だ。
本稿はスマートフォンIP電話サービスの仕組みやメリット、注意点などを紹介する。
サービスの仕組み:パケット通信で通話を実現
スマートフォンIP電話サービスは、050番号のIP電話をスマートフォンで利用できるサービスだ。通常のIP電話はIP電話機を用意する必要があるが、スマートフォンIP電話サービスは、スマートフォンにIP電話の発着信機能を持つアプリケーションを導入して利用する。IP電話サービスだけでなく、3G回線やスマートフォン端末を併せて提供するサービスもある。
スマートフォンIP電話サービスと通常の携帯電話の通話との大きな違いは、通信にパケット交換方式を利用する点だ。
通常の携帯電話の通話で利用する回線交換方式は、端末間を1対1の回線で結び、通話が終了するまで回線を占有する。スマートフォン向けIP電話サービスが利用するパケット交換方式はそれに対して、音声データをパケットに分割して送信する。これにより回線に対する負荷や通話料金を抑えている。
サービス構成の概要を図に示した。IPアドレスと電話番号の変換などを担うSIPサーバはサービス事業者が用意するため、ユーザー企業はSIPサーバを設置・運用する必要がない。電話の発着信に利用する専用のIP電話アプリケーションは、SIPサーバを介して固定電話や携帯電話などに接続する。
導入効果(1):通話料金を大幅削減、特に国際電話が安価に
スマートフォンIP電話サービスの最大のメリットは通話料金の安さだ。サービスによって多少幅があるが、国内固定電話への通話料金は1分当たり3円~8円程度、国内携帯電話への通話は1分当たり17円程度が主流である。加入者同士の通話を無料にしているサービスもある。
料金プランによって差はあるが、携帯電話から国内固定電話や携帯電話への通話は1分当たり42円程度なので、スマートフォンIP電話サービスを使えば通話料金を大幅に抑えることができる。国内固定電話から国内固定電話への通話は1分当たり3円~26円程度、携帯電話への通話は1分当たり16円~17.5円程度なので、固定電話と比べても安価な通話料金だといえる。
携帯電話と比べて最も通話料金が抑えられるのは国際電話を利用する場合だ。例えば米国本土への国際電話の場合、スマートフォンIP電話サービスの通話料金は1分当たり3円~8円。携帯電話事業者の国際電話サービスを利用すると1分当たり44円~78円掛かることを考えると、通話料の大幅な削減となる。
携帯電話事業者は法人向けに料金割引サービスを用意したり、料金プランによっては基本料金に無料通話分が含まれるケースもあるため、場合によっては通常の携帯電話の通話の方が通話料金を抑えることができるケースもある。例えばKDDIの「プランLLシンプル」というヘビーユーザー向け料金プラン(基本使用料1万3400円/月)を利用すれば、国内携帯電話への通話は1分当たり15.75円に抑えられ、最大800分の無料通話も利用できる。
よって、スマートフォンIP電話サービスは、国際電話を多用したり、上記のような料金割引サービスや料金プランの無料通話分を超えるほど通話を利用するユーザーにとってメリットがあるといえるだろう。
導入効果(2):回線交換よりも災害時に使える可能性が高い
前述したように、スマートフォンIP電話サービスが利用するパケット交換方式は、回線交換と比べて回線に対する負荷が少ない。そのため、災害時など回線の使用量が急激に増大した際にも利用できる可能性が高いことをサービス事業者各社はアピールする。
2011年3月に発生した東日本大震災では、回線交換方式の通信については携帯電話事業者が軒並み通信規制を行った。だがパケット交換方式の通信については、NTTドコモが宮城県で一時的に最大30%の発信規制を実施したのみで、他の事業者は通信規制を実施しなかったという。
ただし、最近多発している携帯電話事業者の通信障害ではパケット交換方式の通信も使用できなくなった。「パケット交換を使っているからいつでも通話できる」というわけではないことに注意しなければならない。
導入効果(3):無線LANでも通話が可能
3G回線が利用できない場合でも、無線LANを使った発着信が可能なのもスマートフォンIP電話サービスのメリットの1つだ。ユーザー企業内の無線LANに加え、通信事業者などが提供する公衆無線LANサービスを使って発着信をすることができる。
このメリットを生かすべく、公衆無線LANサービスを標準サービスとして利用可能にするサービスも多い。3G回線と比べて利用可能なエリアは限られるが、3G回線の状態に依存せずに電話の発着信ができる点は大きなメリットになるはずだ。
最近のトレンド:MDMや内線電話オプションなどが充実
企業向けのスマートフォンIP電話サービスの場合、企業利用を見据えたオプション製品を充実させつつあるのが最近のトレンドだ。例えばIP-PBXを併用することでスマートフォンから内線番号を使った発着信を可能にしたり、セキュリティ強化のためにモバイルデバイス管理(MDM)サービスを提供する動きもある。
注意点(1):通話品質は回線交換よりも低く、遅延も発生
スマートフォンIP電話サービスはパケット交換を利用するため、回線を占有する回線交換型と比べてノイズが乗りやすいなど、通話品質が劣るのが一般的だ。3G回線を利用する場合は回線状況の変動が大きいため、通話品質が安定しない場合が多い。
通話に遅延が発生するのも悩みだ。IP電話の場合、音声データのパケットを「ジッタバッファ」というメモリに一定量ため込んでから音声データに変換する。ジッタバッファにためるパケットが多くなれば、それだけ遅延も大きくなる。
各社は通話品質や遅延を可能な限りなくすべく知恵を絞っている。帯域が十分でない3G回線でも一定の通話品質を保てるように、数十kbps程度の通信速度でも通話できるようデータを圧縮するなどの工夫をしている。また遅延の発生を防ぐために、ジッタバッファのサイズをできるだけ小さくするといった調整をしているという。
注意点(2):アプリの常時起動や通信でバッテリー消費量が増加
スマートフォンIP電話サービスは電話の発着信のためにアプリケーションの常時起動が必要なのに加え、SIPサーバとの通信が頻繁に発生するためにバッテリー消費量が多くなりがちなのも課題だ。
各社はバッテリー消費量を減らすため、アプリケーションとSIPサーバの通信回数を抑えるなどの工夫を凝らす。アプリケーションレベルだけでなく、スマートフォン向けOSに搭載されているバッテリー管理機能も進化しており、バッテリー消費量の課題は少しずつ解消されていく可能性はある。
注意点(3):緊急通報は利用できないのが一般的
スマートフォンIP電話サービスの場合、一部のサービスを除いて110や119などの緊急通報は利用できない。他にも電話番号案内(104)や時報(117)、気象情報(177)も利用できないケースが多いため、こうした番号への通話が必要な際は注意が必要だ。
TechTargetジャパンでは、現在提供されているスマートフォンIP電話サービスの比較や選定のポイントを解説した記事を掲載する予定である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
技術文書・技術解説
[Jamf Japan 合同会社] MDMだけでモバイルセキュリティは十分? 不足する対策を16項目でチェック -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 世界的な家電メーカーが実践する「クリエイティブプロセス効率化」の方法とは? -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 世界的テクノロジー企業に学ぶ、プロセス標準化とプロジェクト納品自動化の秘訣 -
事例
[Wrike Japan 株式会社] ソニー・ピクチャーズ テレビジョンに学ぶ、次世代サービスデリバリーのヒント -
事例
[Wrike Japan 株式会社] ソミック石川に学ぶ、ICT浸透後に直面した「工数管理」の課題と解決策
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
2
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
3
「有線LAN環境」に関するアンケート
-
4
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
5
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
6
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
7
「自動化」で「DX」は強制的に進む? そのシンプルな理由
-
8
AWS障害でも補償ゼロの衝撃 サイバー保険で情シスが見落とす「細則の壁」
-
9
AI全部入り「Microsoft 365 E7」に企業が二の足を踏む訳 移行意向はわずか4%
-
10
「データを国内に置く」だけでは不十分 情シスが知るべきAI時代の「デジタル主権」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
2
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
3
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
4
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
5
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
6
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
7
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
8
ドラマで分かる、標的型攻撃メールの被害を受ける企業と回避できる企業の分岐点
-
9
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
10
少額減価償却資産が40万円未満へ拡大、令和8年度税制改正で押さえるべき変更点
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー