通信料削減のために導入が進んだIP電話だが、多くの企業は通話以外の用途を見いだせないでいる。「使いにくい、音質が良くない」という段階はもう過ぎた。IP電話本来の価値を引き出すソリューションを考える。
5年ほど前から、企業内電話の世界では「IP電話」という言葉が脚光を浴び始め、PBX(構内交換機)を利用していた世界から、その後は一気にIP電話が当たり前の世界へと変わっていった。この流れに乗って多くの企業がIP電話を導入したが、電話機をIPベースに置き換えることに終始してしまい、本来のIP電話らしいメリットを得られることなく移行プロジェクトが終了しているユーザーもいる。
本連載では、この導入済みのIP電話をいかに活用するか、IP電話の先にあるユニファイドコミュニケーション(UC)という新しいキーワードを使って、事例も交えながら解説していく。
今回は、IP電話が活用されていない問題の原因が何なのかを考える。まず、VoIP(Voice over IP)の技術が登場してから現在のUCに至るまでの、それぞれの問題点を整理してみよう。
VoIPとは、拠点間のPBXをIPネットワーク上で接続する技術である。その導入の目的は、単純にPBX間をIPネットワークで結んで拠点間の通信コストを削減することだった。技術的にネットワーク側の問題点はさまざまあったのだが、ユーザーにとっては、時々障害が発生する程度で、使い勝手の面では従来と変わらず利用することができていた。しかし、そもそもの導入の主眼が拠点間通信費の削減のため、生産性の向上などコスト以外の利点は得られなかった。つまり、VoIP導入において訴求されたポイントは、「コストと安定性」である。
VoIPの次に、電話機を直接IPで収容するIP電話が登場した。呼制御装置としては、PBXベースのIP-PBX、IP電話のセントレックス(※)、サーバベースのunPBXといった種類がある。
※IP電話のセントレックス:企業の内線通話や拠点間の通話をIP化するための手法やサービス。固定電話のほか、携帯電話を内線電話として利用するモバイルセントレックスがある。
IP電話機が出始めた当初は、コスト削減を実現した上で、従来の電話機で実現していた機能をどのようにIP電話で置き換えるのかに重点が置かれていた。この時点でPCサーバを利用するunPBXも登場していたが、電話機能が十分ではなかった(unPBXの初期のタイプでは保留音が出なかったり、代理応答ができなかったりしていた)。当時は、導入に際して電話機能の比較が活発に行われており、いかに多くの機能を提供できているかが重要な比較項目だった。そのため、電話機の機能をそのままIP電話へと置き換えるからには、価格も従来よりも安いか同等でなければならない。このような背景もあって、製品選定のポイントがコストと電話機能にフォーカスされたため、安価に導入できるIP-PBXやサービスとして提供されるIPセントレックスが選択の中心になっていた。
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