企業向けモバイルアプリの開発と管理
アプリストアには頼らない――モバイルアプリ社内開発の利点を聞いた
企業向けアプリケーションの多くは、モバイル端末のアプリストアで提供される。だが、特定の業務プロセスを簡素化する必要がある場合は、社内で開発する方が適していることもある。
現代のモバイル世界では、従業員が仕事のために利用できるアプリケーションやツールの相当量が端末のアプリストアで提供されている。しかし、特定のプロセスの簡素化が必要な場合、アプリストアで必要なものが入手できるとは限らず、社内でモバイルアプリを開発する方が適していることもある。確かにそのためのアプリは存在する。だが、特定の問題を解決するためには、恐らく自分でそれを開発しなければならない。
企業向けモバイルアプリのニーズを見極めたら、それとは別に、モバイルの複雑な部分に取り組まなければならない。アプリをどうやってユーザーに配信するか、どのような配信オプションを用意するか、会社の細部をどうやって調べるのか、そしてそれを掘り起こす必要があるのか。企業向けモバイルアプリ開発を手掛ける米Propelicsのアダム・ブックマン氏に話を聞いた。
――従業員は現在、どのような企業向けアプリを使っているのでしょうか?
アダム・ブックマン この市場はバリエーションに富んでいる。多くの企業は電子メールと予定表を手始めにモバイル化を進める。一般的に、ITチームがある程度のセキュリティやリスクに対する不安を克服すると、その企業が次に向かうのは、CRM(顧客関係管理)システムへのアクセス、Microsoft SharePointへのアクセス、ビジネスインテリジェンス(BI)リポーティングシステムへのアクセスなど、デスクトップPCで使っているツールをモバイル端末に持ち込むことだ。
(企業は)基本的に、従業員の生産性向上を支援するもう1つの画面としてモバイルを利用している。つまりモバイルの真価は、プロセスを見直すためにモバイルを使ってこそ発揮できるものであり、中にはそこに到達している企業もある。業務プロセスの簡素化に関する素晴らしい活用事例は幾つかある。極めて複雑な業務でも、本当に優れた必要最小限のモバイルアプリを構築して、バックエンドシステムの制約のために3時間も費やしていた作業を(手早く)こなせるようになったケースなどだ。
その例を紹介しよう。ある製薬会社の研究室では、研究者が薬品を開発するために、化合物IDを検索する必要があった。研究者はそのために、研究室を出て、コンピュータに向かい、3、4種類のシステムにログインし、化合物についての情報を入手しなければならない。このプロセスには約3時間かかっていた。われわれはこの会社のためにモバイルアプリを構築し、研究室の中でiPhoneから化合物IDを入力し、必要な情報を全て1秒ほどで入手できるようにした。それこそがモバイルの素晴らしさだ。複雑である必要のない複雑な作業を簡素化できる。企業とは複雑なもので、プロセスのまずさによって制約を受けているシステムが多数存在する。
――ユーザーとIT部門が望んでいる企業向けアプリとはどのようなものでしょうか?
ブックマン 事を簡単にしてくれるもの、あるいは自分の仕事をさせてくれるものだ。われわれがアプリを開発した大手小売チェーンは、それぞれの管轄地区の責任者が現場に出向き、毎月店舗監査を実施しなければならない。照明が壊れていないか、接客係に問題はないか、床の掃除が行き届いているかなどをチェックする。紙の書類を使ったプロセスはそれぞれの地区責任者によってやり方がバラバラで、あまり真剣に受け止められていなかった。
われわれは地区責任者が、携帯電話を使って全てのプロセスをこなせるようにした。かつては1つの店舗のチェックに15分かかり、地区責任者は自分が記入した内容を覚えておいて、自分の走り書きを解読し、それをシステムに入力しなければならなかった。今ではそれが携帯電話を使って3、4分で済む。必要があれば壊れた照明の写真を撮り、全ての情報が送信される。全員が同じプロセスに従うようになったため、一貫性も生まれた。今では9割以上の地区責任者がこのやり方に従っている。
――企業はどのようにしてモバイルアプリを管理し、導入しているのでしょうか?
ブックマン まずは、「どの端末のためのアプリを構築し、送受信する情報のセキュリティをどうやって確保するのか」というところから話が始まる。「BYOD(私物端末の業務利用)を認めるか、それとも端末を支給するか」という話が出発点になることも多い。これに対する組織の見解は分かれる。次いでモバイル端末管理(MDM)について話し合う。われわれの顧客のほとんどは、MDMツールを検討中か、既に調達済みだ。MDMツールを使って端末を管理し、ポリシーやセキュリティを設定している。こうしたツールのほとんどにアプリストアが付いている。われわれが構築している企業向けアプリの多くは、Google PlayやApp Store経由ではなく、企業向けアプリストアを通じて配信している。
――モバイルアプリケーション管理は使われているのでしょうか?
ブックマン ある程度は。この分野は融合が進んでいる。これまでモバイル端末管理(MDM)を手掛けていたベンダーの多くが、製品にモバイルアプリケーション管理機能(MAM)を取り込むようになっている。MAMを手掛ける優良な企業も存在するが、われわれが見たところでは、特に大企業では、モバイル端末管理のルートをたどっている。AirWatch、MobileIron、Good Technology、Zenpriseなどの米国のMDMベンダーは、先を見越して自社の技術に(MAM機能を)取り込んでいる。端末を管理するだけでなく、アプリも管理する必要があるということだ。アプリレベルで個人のデータと非公開のプライベートデータは区別されていなければならない。
――企業はアプリケーション仮想化を使っているのでしょうか? あるいは配信技術を検討しているのでしょうか?
ブックマン アイデアの観点から、この技術が好まれるのは最もセキュアだからだ。だがモバイルに関しては、特にビジネスユーザーにとって、この方向は間違っていると思う。確かに仮想化が理にかなうケースもあるかもしれない。例えば社外への持ち出しができない機密性の高いデータがある場合や、自宅作業用に支給したタブレットで仮想プライベートネットワーク(VPN)が必要な場合もある。しかしこれは業務プロセスを簡素化するという理念に反する。仮想化は非常に使いにくく、とてもイライラさせられる。
――社内でモバイルアプリを開発するのは、大量購入に比べてどれだけ難しいのでしょうか?
ブックマン 大抵の場合、こうした業務用アプリは既成のものよりも社内で開発することの方が多い。アプリストアで購入して多少手を加えられるアプリもある。時間追跡や経費管理といった業務用アプリの多くはアプリストアで見つけて購入し、自分たちのニーズに合わせて手を加えられる。だが特定プロセス用のアプリはモバイルライフサイクルのごく初期段階にあり、ユーザーは自分たちのニーズに合わせてアプリを組み合わせているようだ。
――社内でのモバイルアプリ開発は高くつきますか?
ブックマン 高くつくこともあるが、非常に優れたメリットも多い。モバイルアプリ開発のコストはそれほどかさむものではない。コストが掛かるのはインテグレーションと、会社との間のデータのやりとりだ。データの移動は極めて複雑であり、もしSAPシステムへの接続を望む場合、モバイルアプリのために必要とされる方法でデータを取得するためのWebサービスが存在しなければ、話し合いが長引き、関わる人が増えることもある。単に幾つかの画面と美しいデザインを作るよりはやや複雑だ。その部分は非常に手早く済むかもしれないが、大規模で込み入った企業向けシステムに取り掛からなければならない場合は複雑になってくる。アプリそのものは難しくない。
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