電子カルテ市場調査リポート2013(病院編)
病院向け電子カルテ市場、2017年には約1200億円の規模に
2000年代初頭から病院で普及し始めた電子カルテ。現在はそのリプレースが着々と進んでいる。その間、電子カルテに対する病院の意識に変化が見られたという。最新の市場予測とともにその背景を考察する。
シード・プランニングは2013年4月、市場調査リポート『2013年版 電子カルテの市場動向調査 ―電子カルテ/PACS市場規模予測とシェア動向―』を発表した。このリポートは、電子カルテシステム(病院向け、診療所向け、歯科向け)とPACS(医用画像管理システム)の市場動向を同社が調査し、2017年までの市場規模を予測したものだ。本稿では、病院向け電子カルテの市場規模や導入シェア、主要ベンダーの最新動向、ユーザー会がもたらす価値などを紹介する。
2017年の市場規模は約1200億円に
1999年に厚生省(現 厚生労働省)が電子カルテを認め、2001年からの補助金制度により本格的に電子カルテ市場が立ち上がった。現在では初期に導入した病院で電子カルテのリプレースが着々と進んでいる。
2012年単年の病院向け電子カルテ市場の規模は約985億円、納入数は約400件である。今後は緩やかに推移し続け、2017年には市場規模が約1200億円、納入数が570件になると予測される。今後は市場規模、納入数ともに増加するものの、リプレース需要の比率の高まりや価格競争などを背景に1件当たりの金額は減少していく。
「他の産業と比べてIT化が遅れている」といわれる医療分野だが、電子カルテ市場は確実に伸びている。特に、診療情報と医療画像のデジタル化、すなわち電子カルテとPACSを両輪として、地域医療連携・EHR(Electronic Health Record:生涯健康医療電子記録)の実現を目指したIT化が進んでいる。
電子カルテに対する病院の意識の変化
「医療の質向上や経営改善のためにIT化・電子カルテ導入が必須」という考え方は、病院の半数以上を占めるDPC(Diagnosis Procedure Combination:診断群分類別包括評価)導入病院を中心に共通認識となりつつある。長く電子カルテを利用していると「電子カルテのない状況は信じられない。もう紙カルテには戻れない」と言う医師も多い。
以前は、病院の情報化として電子カルテを導入し、診療データを分析しクリティカルパス作成や経営改善に役立てるなど、診療の質向上につなげることが大きな目的であった(関連記事:患者状態に応じた多様な診療を可能にするクリニカルパスの実現へ)。しかし、東日本大震災以降、政府の地域医療連携ネットワークの取り組みが活発化し、地域医療連携に参加するインフラとしての電子カルテの整備が大きな目的の1つに加わった。
IT化された地域医療連携ネットワーク参加には、電子カルテ導入が条件となる。すなわち、電子カルテを導入していない病院は地域の医療連携から取り残される可能性もあるのだ。また、それ以前に「電子カルテ未導入のままでは、優秀な医師が集まらない」という現実もある。
一方、電子カルテ導入における最大の課題はコストである。特に、導入コストに見合った費用対効果(特に収入面)についての課題が残っている。「電子カルテの必要性は十分認識していても投資余力のない」病院も多く、「電子カルテ導入を検討した結果、予算的に導入を先延ばしにせざるを得ない」ケースもある。診療記録の医療施設外保管が可能になり、初期導入費が比較的低く抑えられるASP/SaaS型の電子カルテ新製品の動向が注目されるが、クラウドを活用した病院向け電子カルテの納入実績はまだ少ない。
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ベンダーの動向
累計納入数300件以上の主なベンダーは、富士通、シーエスアイ、ソフトウェア・サービス、NECの4社である。富士通は大規模病院、中小規模病院向けから診療所向けまで幅広く製品をそろえている。シーエスアイとNECは、地域医療の連携を強化する「電子カルテ/地域医療連携ソリューション」の製品化などで協力体制にある。ソフトウェア・サービスは、独立系の電子カルテベンダーである。
その他、実績の多いベンダーは、亀田医療情報(2013年2月にアピウス、シーメンス亀田総合情報システム、国際疾病管理研究所が事業統合)、ワイズマン、日立グループ(日立メディコ、日立製作所)、日本アイ・ビー・エム、ベータソフトなどである。大手ベンダーの営業体制としては、大規模病院(300床以上など)への電子カルテ納入は本社および支店が直販し、中小規模病院には直販の他に代理店やディーラーが担当する場合もある。
病院間のコミュニティーにもなる電子カルテユーザー会
顧客の認知を高めるために、各社は大規模な展示会や雑誌広告を活用している。しかし、最近では病院の電子カルテ導入方針が決定するとインターネットや展示会で情報収集し、導入済み病院の見学に積極的に参加するなど、ユーザー側が製品について十分勉強しており、展示会から受注につながる事例は減少しているとみるベンダーもある。
ベンダー各社は導入済み病院の見学会を開催している。導入されている現場を実際に見てもらうことが機種検討に大きく影響するため、導入検討中の病院関係者に対しては個別に見学を実施することもある。また、自社製品を導入している病院を対象にユーザー会を組織し、活発に活動している
例えば、富士通の「電子カルテフォーラム 利用の達人」、NECの「MegaOakHRユーザーフォーラム」、ソフトウェア・サービスの「SSユーザー会」などがある。ユーザー会は納入した電子カルテシステムの有効活用促進やリピート需要獲得を目的とし、新製品・新機能説明会を実施するとともに、病院間の貴重な交流の場となっている。
ユーザー会に参加している病院は、活用事例を互いに紹介し合う勉強会などでの情報交換を進め、ベンダー側はユーザー会でとりまとめた要望を機能向上などにつなげている。ベンダーにとっても、顧客である病院にとっても、ユーザー会はなくてはならない存在となりつつある。
今回紹介した調査内容については、シード・プランニングが発行している『2013年版 電子カルテの市場動向調査 -電子カルテ/PACS市場規模予測とシェア動向-』に詳細が記載されている。
著者紹介
加藤鈴佳(かとう すずか) 株式会社シード・プランニング エレクトロニクス・ITチーム 主任研究員
電子カルテを中心とした医療ITやディスプレー、デジタルサイネージ市場などのエレクトロニクス分野を担当する。
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