PACS市場調査リポート(2013年)
2016年のPACS市場は460億円規模、クラウドサービスが本格化
各種撮影装置の画像データを管理するPACS(医用画像管理システム)。高詳細化・大容量化する画像データの管理にはなくてはならないシステムだ。市場調査を基にその現状や今後の動向予測などを紹介する。
シード・プランニングは2013年4月、市場調査リポート『2013年版 電子カルテの市場動向調査 ―電子カルテ/PACS市場規模予測とシェア動向―』を発表した。このリポートは、同社が電子カルテシステム(病院向け、診療所向け、歯科向け)とPACS(医用画像管理システム)の市場動向を調査し、今後の市場規模を予測したものだ。本稿では、PACSの市場規模や導入シェア、主要ベンダーの最新動向、今後の展開などを解説する。
PACSとは、X線撮影装置やCT、MRIなどの各種診断機器(モダリティ)で撮影された画像を電子化してデータベースに保存し、必要なときに参照できるように管理するシステムのこと(関連記事:フィルムレス化を促進する医用画像管理システム(PACS))。医療機関がPACSを導入することで、フィルムの保管スペースやフィルム費用を削減できる他、フィルムの運搬や管理などの作業が不要となる。2008年の診療報酬改定で「フィルムレス加算」制度が導入されたことで、2009年にかけてPACS市場は一挙に拡大した。現在では、モダリティを利用するほとんどの大規模病院がPACSを導入している。
また、2010年2月、厚生労働省医政局長・厚生労働省保険局長の通知「診療録等の保存を行う場所について」の一部改正により、民間企業が医療分野でのクラウドサービスを展開する環境が整備された。さらに2012年4月、仮想化ストレージの運用が認められ、クラウドの本来のメリットであるスケールアウトも実現可能となった。これにより、他分野で広がっていたクラウドサービスがPACS分野でも利用できるようになった。クラウドサービスの需要が広がる背景には、高詳細・大容量化する画像データの保管・運用の問題、ディザスタリカバリへのニーズなどがある。
導入件数は緩やかな増加
PACS市場の現状と今後の規模予測を以下のグラフに示す。2011年から2012年にかけて、PACSの導入件数は緩やかではあるが増加傾向にあった。一方、システムの価格が下がっており、金額ベースではマイナス成長となった。
ここからは病院、診療所別に特徴的な市場傾向を紹介する。
大型案件が減少傾向にある病院向け市場
病院向けPACS市場は2009年に450億円規模となったが、2010年以降は大型案件が減少している。2011~2012年の病院向けPACS納入件数は1020システムで前年比2.0%増、金額ベースでは約420億円となり前年と同水準となった。今後は、大規模病院ではリプレース需要が中心となり、中小病院(200床以下)では新規導入を見込めるものの、案件の規模は小さくなると予想される。
拡大傾向にある病院向けPACS
2011~2012年の診療所向けPACS納入件数は650システムで、その金額は46億円となり前年と比べてわずかに増えている。安価で使い勝手の良いオールイン型の製品が投入され、地域の中核病院を核にした遠隔読影支援サービスも広がり市場が拡大している。
参入メーカーのシェアやメーカー動向は?
病院向けPACSの累計納入数では、富士フイルムメディカルが1700件を超えトップ。次いで、東芝メディカルシステムズとGEヘルスケア・ジャパンが850施設、上位3社で市場の4割近くを占めている。その他、400~500施設への納入実績を持つのが、ピー・エス・ピー、コニカミノルタヘルスケア、横河医療ソリューションズ、イメージワンなど。この上位7社で市場の約6割近くを占めている。
今後のメーカー動向について、大規模病院向けでは既存ベンダーに大きな順位の変動はないと予想される。また、クラウドサービスの本格化や医療情報システム、業務系システムとの統合などを背景に、ITベンダーの参入が進むと予想される。新規参入として、キヤノンマーケティングジャパンがPACSシリーズ「PRIMITUS」を発表しており、中小病院やクリニックを対象に2013年度で50施設の納入を目標としている。
拡大要因、阻害要因が混在するPACS市場
現在のPACS市場は、市場の拡大要因と阻害要因が混在する状況にある。
拡大要因:新サービスの登場やカスタマイズ需要
フィルムレス加算制度の導入がPACSシステム市場を押し上げたように、厚生労働省のガイドライン改正による「民間のデータセンター事業者が提供するクラウドサービスによる医療情報の外部保存」が可能になったことで、中小病院や診療所のPACS導入を後押ししている。その結果、PACS導入が病院・診療所の経営効率化に貢献するシステムであるというのが、中小規模の病院経営者層に認知されてきた(関連記事:【製品動向】連携機能が拡充している診療所向けPACS)。こうした遠隔画像診断や画像データの施設間連携などの新しいサービスはプラス要因となるだろう。一方、大規模病院向けのオンプレミス型PACSは、高機能化や院内IT環境の整備・統合などにより、カスタマイズ需要が安定して生まれている。
阻害要因:データ移行がネックとなる場合も
地域医療連携や画像データの外部保存が可能になり、クラウドやデータベースの外部保管サービスなどPACS周辺のシステムには追い風となっているが、既存システムとの接続やデータ移行サービスの料金体系が明確にならないと、その導入は進まない。また、施設関連携が広がったことで、データのやりとりに関するルール策定が課題となっている。画像データの標準規格には「DICOM」があるが、データベースに保存する際のヘッダ情報はベンダーごとに異なる。そのため、データ移行がスムーズにできないという問題もある(関連記事:「単なるIT化は医師の負担が増えるだけ」 日本版EHR研究班が指摘)。
成長のカギを握るクラウドサービス/クラウドPACS
オンプレミス運用型のリプレースのサイクルは、5年から7年と長い。大規模病院向けPACSは普及の限界となっている。他方、中小規模病院(~200床)病院では、まだPACSが導入されていない病院も多く見られる。ハードウェアが進化してシステム価格は年々下がっており、金額ベースでは横ばいで推移すると推測できる。また、周辺システムの増設などでも、価格競争は一段と厳しくなっている。今後は「PACS単体型ビジネス」から「総合・複合システム」や「クラウドサービスの提案」でのビジネス展開になると予想される。中でも、クラウドによる新しいサービスメニューがPACS市場成長のカギを握るといえる(関連記事:【製品動向】医用画像クラウドストレージサービスのメリット/デメリット)。
既に多くのPACSベンダーがクラウドサービスの提供を始めている。主なPACSベンダーのクラウドサービスは次の通りだ。
| ベンダー名 | PACS/クラウドサービス名 |
|---|---|
| ケアストリームヘルス | ケアストリームVueクラウドサービス |
| 富士フイルムメディカル | クラウドサービス「ASSITA Portal」、地域医療連携サービス「C@RNA Connect」、外部保管サービス「SYNAPSE+STORAGE」 |
| GEヘルスケア・ジャパン | 外部保管サービス「医知の蔵」 |
| イメージワン | 遠隔読影支援サービス「Ocean-io」 |
| ジェイマックシステム | 遠隔読影支援サービス「FAINWORKS」 |
| コニカミノルタヘルスケア | 遠隔読影支援サービス「NEOVISTA」 |
| ピー・エス・ピー | 外部保管サービス「CirA-S」 |
| テクマトリックス | 外部保管サービス「NOBORI」 |
| 東芝メディカルシステムズ | 外部保管サービス「Healthcare@Cloud」 |
| 横河医療ソリューションズ | 外部保管サービス「ShadeQuest/Unlimited」 |
しかし、大規模な病院向けの画像の外部保管クラウドサービスは、既存オンプレミス型との費用対効果やセキュリティ面などの検証を進めている段階にあると推測でき、その採用は進展していないのが現状だ。
今回紹介した調査結果の詳細は、シード・プランニングが発行している市場調査リポート『2013年版 電子カルテの市場動向調査 ―電子カルテ/PACS市場規模予測とシェア動向―』に記載されている。
筆者紹介
林 和夫(はやし かずお) 株式会社シード・プランニング エレクトロニクスITチーム 研究員
医療画像システムのPACSや治験電子化システムEDC、医療機器分野などの市場調査を担当する。
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