OpenStackを使いこなすユーザー企業たち
SamsungやBestBuyがOSSでクラウド構築、ぶつかった壁とは
オープンソースのクラウド管理プラットフォーム「OpenStack」を本番環境で運用している企業が集まり、同プラットフォーム活用のメリットと課題を語った。歴史が浅い製品のため、構築・運用におけるさまざまな苦労が垣間見られた。
オープンソースのクラウド管理プラットフォーム「OpenStack」を本番環境で運用している企業が2013年4月中旬、米国オレゴン州ポートランドで開催されたOpenStack Summitで、同プラットフォーム活用のメリットと課題を語った。
これらの企業は、OpenStackは、独自のクラウドコンピューティング環境を構築するための最も柔軟な選択肢だとの見解を示した。一方で、このプラットフォームでは、「DIY(Do It Yourself)」の姿勢で機能の不備を補う必要があるとも指摘されている。
メディア大手の米Bloomberg
メディア大手の米Bloombergは、約200カ所のグローバル拠点を結ぶ世界最大級のプライベートネットワークでOpenStackクラウドを展開した。だが、「スタックの下と上で」問題にぶつかったと、同社の最高技術責任者(CTO)兼セキュリティアーキテクト、プラビア・チャンドラ氏は、基調プレゼンテーションの中で語った。
スタックの下では、可用性の高いデータベース、オープンソースツールの「RabbitMQ」によるアプリケーションメッセージング、米Inktankの「Ceph」ストレージをセットアップする必要があった。スタックの上では、ハードウェア監視のログの集約と評価指標が問題になった。ハードウェア監視はオープンソースユーティリティの「Graphite」を使って行われた。
「われわれはこうした多くの問題を自力で解決しなければならなかった」とチャンドラ氏。Bloombergは、同社が使っている米Opscodeのオープンソース構成管理ツールである「Chef」のクックブック(設定手順集)を「GitHub」で公開し、他の企業や組織が参考にできるようにした。
アジア最大級の情報通信技術プロバイダーの韓国Samsung SDS
アジア最大級の情報通信技術プロバイダーである韓国Samsung SDSは、モバイルアプリケーションを顧客に提供するためのプライベートクラウドプロジェクトでOpenStackを試用してきた。2013年7月までにOpenStackクラウドが実運用に入る見込みだ。
Samsung SDSは2年前、OpenStackをDiabloリリースから試し始めたが、まだ非常に不安定だったと、ディレクターのカーク・キム氏は振り返った。その後のリリースでは改善されたが、これらも、SANボリュームの自動ブート機能や、IaaS(Infrastructure as a Service)基盤を提供するOpenStackコンポーネントであるOpenStack Compute(Nova)のバックアップサービス、IPテーブルを使ったネットワークメータリングなどのカスタマイズが必要だった。
また、Samsung SDSでは、自社のプライベートおよびパブリッククラウド環境を包括的に管理するため、米RightScaleのマルチクラウド管理ソフトウェアを導入しなければならなかった。「OpenStackは非常に柔軟でさまざまな構成が可能だ。しかし、まだ歴史が浅い製品であるだけに、複雑でエラーが起こりやすい」(キム氏)
キム氏は、リリース間のアップグレードの難しさにも触れた。OpenStackクラウドプラットフォームのコンポーネントの再設計と再構築が必要になったこともあるという。
大手家電量販店チェーンの米BestBuy
大手家電量販店チェーンの米BestBuyのWebサイトであるBestBuy.comは、1年に及ぶ評価および開発プロセスを経て、今では完全にOpenStackベースで運用されている。このプロジェクトの目標は、クライアント側でレンダリングされるJavaScriptの量を減らし、クラウドによってページを中央から配信し、パフォーマンスを高めることにあった。
「コスト削減という目的もあった」と、BestBuy.comのWebアーキテクチャディレクター、スティーブ・イースタム氏は語った。「ITコストの社内調査により、管理対象仮想マシン(VM)1台当たりのコストが平均2万ドル、自社の品質保証プロセスのコストがメジャーリリース当たり50万ドルに上っていたことが分かった」と、同氏は説明した。
BestBuy.comのOpenStackクラウドでは現在、平均約500台のVMインスタンスがアクティブで、そのコストはハードウェアラック当たり9万1000ドルとなっている。しかし、他のOpenStackユーザーのケースと同様に、カスタマイズが必要だった。
BestBuy.comのプロジェクトにおけるその最たる例の1つが、米Red Hatのオープンソース分散ファイルシステムであるGlusterからCephストレージへの移行だった。この移行の背景には、従来のストレージシステムでは、サイズが200GバイトのものもあるVMイメージのリカバリに時間がかかりすぎていたことがある。
また、BestBuy.comは、カスタムChef管理ツールの「Ginsu」も開発した。Ginsuは、Opscodeの「knife-openstack」(※)の代替プラグインであり、NovaのAPIと緊密に統合されている。
※ Chefを管理するためのコマンドラインツールであるKnifeのOpenStack Compute(Nova)用プラグイン
さらに、BestBuy.comは、「Sensu」や「collectd」、Graphiteの他、「Sinatra」(RubyでWebアプリケーションを作成するためのドメイン固有言語)ベースのカスタムダッシュボードなどの監視ツールも使っている。このダッシュボードは、BestBuy.comの全40の開発チームが一斉にログインしようとしたとき、問題を引き起こした。「DDoS攻撃を仕掛けられたような状況になってしまった」(イースタム氏)
BestBuy.comは、まだ「OpenStack Essex」を運用しているが、数カ月以内に最新の「OpenStack Grizzly」にアップグレードする計画だ。
「一般に、OpenStackクラウド環境では、自動化は、あれば便利な機能ではなく、必須の機能だ」と、SaaS(Software as a Service)型マーケティングサービスを提供する米HubSpotの最高情報責任者(CIO)、ジム・オニール氏は語った。同社はChefとIT自動化ソフトウェアの「Puppet」を使って、独自に自動化を実現している。
オニール氏はOpenStackのDIY性を気に入っている。「何かが思い通りに動かない場合、われわれは内部を調べ、問題のある部分を修正し、その部分をコミュニティーに寄贈する」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
6
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
9
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
10
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー