クラウドプロバイダーのジレンマ
クラウド業界を二分するオープンソース派と商用派、双方の言い分は?
OpenStack、CloudStack、Eucalyptusなどのオープンソース系クラウドプラットフォームと商用プラットフォーム。どちらにメリットがあるか。双方の言い分を紹介する。
OpenStack、CloudStack、Eucalyptusなどのオープンソース系クラウドプラットフォームであれば、プロバイダーは豊富な開発リソースを利用でき、更新を素早く行え、ベンダーロックインが発生しない。オープンソースソフトウェア(OSS)でクラウドサービスを構築するという考えを好むクラウドプロバイダーもいれば、プロプライエタリ(商用)プラットフォームが提供するフルセットの機能と統合性、さらにはサービスレベル契約(SLA)の安心感を選ぶプロバイダーもいる。
クラウド業界は依然として、オープンソース派と商用派に2分されている。米TechTargetが実施した最近の調査では、260社のクラウドプロバイダーの22%がOpenStackを採用していることが分かった。また、OpenStackを利用していないと答えた29%は、商用ソリューションを採用していた。
英調査会社451 Researchで、グローバルクラウドコンピューティング担当のリサーチマネジャーを務めるアガサ・プーン氏は次のように話す。「クラウドプロバイダーは、VMwareなどの商用クラウドプラットフォームにとてもなじみがある。現在も進化を続けている新しいOSSプラットフォームを検討することは、プロバイダーにとって大きな変化だ」
OSS対商用プラットフォーム:クラウドプロバイダーのジレンマ
「商用クラウドプラットフォームは、テスト、開発、統合をベンダーに委ねたいプロバイダーにとって魅力的だ」と話すのは、米Forrester Researchの副社長兼主席アナリストのジェームズ・スタテン氏だ。
多くの、特に小規模なクラウドプロバイダーでは、適切な専門スキルを持つIT要員を社内で確保することが難しいため、商用プラットフォームを提供している商用ベンダーを選ぶ場合が多い。スタテン氏によると、「どの程度業務を委託する必要があるかは、プロバイダーにいるITスタッフの規模に応じて決まる」という。
しかし、スタテン氏によれば、OSSプラットフォームは今では、クラウドプロバイダーが導入できるほど十分に成熟しているという。カスタマイズ性が高く、広範にわたる開発者の協力が得られるプラットフォームを望むプロバイダーは、オープンソースの導入を進めており、これは、アップデートやアップグレードに要する時間の短縮につながる。一方、「永遠に進化し続けるというオープンソーステクノロジーの性質は、複雑なテクノロジーの管理に必要な専門スキルを持たないクラウドプロバイダーにとって問題になり得る」と451 Researchのプーン氏は指摘する。
OpenStackベースでSaaS(Software as a Service)を開発しているクラウドプロバイダー、米Metacloudのショーン・リンチCEOは、「OpenStackベースのサービスは、初期設計後にかなりの労力や時間をかける必要があるが、大抵は、(オープンソーステクノロジーを)頭で理解しようとする、かなり昔気質のITチームがいるものだ」と話す。
リンチ氏によると、OpenStackには複雑なテクノロジーが含まれこともあるが、クライアントのアップデートを処理するエンジニアが社内にいるMetacloudには適していたという。同社では、商用プラットフォームを採用することで、特定のベンダーに縛られたり、顧客が“ロックインされている”という感覚を抱く状況は避けたいと考えた。「OpenStackが提供するセルフサービス方式のダッシュボード“Horizon”は、MetacloudのOpenStackダッシュボード拡張機能があれば、驚くほどリッチで多機能だ。顧客はこのダッシュボードを使って、各自のクラウド管理とプロビジョニングができる」(リンチ氏)
いずれはオープンソース×商用のハイブリッドも
「OSSプラットフォームが成熟し、クラウドプロバイダーが専門知識を蓄積していけば、それぞれの長所を組み合わせた“ハイブリッド”なアプローチが現れるだろう」と、451 Researchのプーン氏は予想する。
現時点では、オープンソースを活用したクラウドコンピューティングに対応できないプロバイダーもいるが、商用クラウドプラットフォームは、ライセンス料が繰り返し発生するため、運用コストが高くつく可能性がある。プロバイダーは、長期にわたって特定の商用ソフトウェアにロックインされることは望まないだろうし、いずれはエンドユーザーのニーズと要件に応じて、ハイブリッドなアプローチを採用し始めるだろう、とプーン氏はコメントする。
「クラウド市場の成熟に伴い、ユーザーの多様化は今よりも格段に進み、ユーザーごとに要件は異なってくるだろう」とプーン氏は言う。「(プロバイダーは)そういったユーザーに対応できるように、複数のテクノロジーとプラットフォームを用意し、ターゲットの顧客に最適なテクノロジーを提供しなければならなくなる」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
8
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
9
AIで人を減らした企業がもう心変わり 「AIブーメラン現象」の実態
-
10
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー