クラウドの火は消さない
【事例】Excelからクラウドへ 国際消防士連合の製品選択を見る
予算編成とリポーティングに「Microsoft Excel」を使っていた米国の国際消防士連合(IAFF)がクラウドツールを導入した。複数製品からの選択、導入のポイント、社内調整の方法などを紹介する。
2013年も残り3カ月を切ったが、企業の最高財務責任者(CFO)は、一部の専門家が2012年末に予想したように、クラウドの採用に前向きになってきているのだろうか? エバンジェリストから断固たる反対者まで、誰に尋ねるかによって、その見解は大きく異なるはずだ。だが、これまでクラウドベースのソフトウェアに対する最大の反対理由となってきた「データセキュリティ」の問題について、経理財務担当者は少なくとも姿勢を軟化させつつあるようだ。
8月下旬にニューヨーク市で開催されたカンファレンス「Proformative CFO Dimensions」では、とある大盛況の分科会セッションにおいて、出席者から数多くの質問が発せられたが、この質問の多さは、経理財務担当者のクラウドへの関心の高さ、また場合によっては変わらぬ疑念を示すものだった。ただし、驚くべきことに、データプライバシーに関する質問が上がったのは一度だけだった。
それよりも、質問者の最大の関心は、エンドユーザーの賛同、導入、機能性などにあった。つまり、経理財務の担当者たちはクラウドベースの財務管理システムを導入する準備ができているわけではないが、少なくとも、今後クラウドツールを採用する可能性は検討しているようだ。このセッションでは、国際消防士連合(IAFF)の経理責任者であるウォレン・メイ氏がスピーカーを務め、クラウド導入の成功事例を紹介した。ただし、同氏はクラウドを全面的に推奨することはせず、それどころか、「私の選択が全ての人にとって正しいとは限らない」と断言している。
オンプレミスの不確かなコスト
「From Fire Fighter to Rain Maker with Cloud Computing(消防士から雨乞い師まで、クラウドコンピューティングの採用事例)」と題したセッションにおいて、メイ氏はIAFFが予算編成とリポーティングのための新しいツールをどのように選択し、採用したかについて説明した。IAFFは米Host Analyticsのクラウドベースのソフトウェアを導入するまでは、予算編成とリポーティングに「Microsoft Excel」を使っていたという。そのため、リモートユーザーがアクセスしづらいという問題があった。
また、ユーザーはWhat-if分析を実行できず、リポートは静的で、ドリルダウン機能も用意されていなかった。メイ氏が欲しかったのは、「スプレッドシートのようなインタフェースを備え、アクセスしやすく、IT部門の関与は最小限で済み、信頼できる有望なベンダーが開発した新しいシステム」だったという。IAFFが採用している会計システム「Microsoft Great Plains」(現Microsoft Dynamics GP)と統合できることも、新ツールに求められる主要な要件の1つだった。
選択肢として浮上したのは、IAFFが既に所有はしていたが実装していなかったGreat Plainsのツール、Host Analytics、加Prophixと米Centageのオンプレミスシステムの計4つだった。メイ氏によると、Great Plainsのツールは機能性が不十分なため、すぐに候補から外れたという。だが残りの3つは機能面でほぼ互角だったため、最終的には長期コストから判断することになった。
「判断を決定付けたのは、向こう3~5年間でアップグレードのコストや保守がどうなるかという点で、候補に上がったオンプレミスのソリューションはあまり良い感触がなかったことだ。そのため、クラウドを選択するという決断は容易だった。クラウドなら、掛かるコストは毎月のサブスクリプション料だということがはっきりしていた」とメイ氏は語る。
メイ氏によれば、Host Analyticsを導入して以来、予算編成にかかる時間は月単位から週単位に短縮されたという。また、ほぼリアルタイムの財務データのおかげで、IAFFはより機敏に動けるようになっている。今後はこのツールを用いて幹部向けのダッシュボードを作成したり、文書管理システムや会員データベースと統合したりといったことも予定しているという。
IT部門とエンドユーザーの賛同を得られるか
メイ氏のセッションでは途中、1つの質問をきっかけに立て続けに10件ほど質問が飛び出し、クラウドソフトウェアをうまく活用している財務責任者から助言を得ようという出席者の熱意が伝わってきた。
質問は、導入プロセスや、メイ氏の選択肢にあったクラウドベースとオンプレミスのソリューションの機能面での差異に関するものの他、クラウドの導入に賛同してもらうための方策に関するものも幾つか上がった。
例えば、ある出席者からは、メイ氏がどのようにしてユーザーにクラウドの利用を促したかとの質問が上がった。新規のシステムについて学びたがらないエンドユーザーの存在は、導入を失敗に終わらせる可能性があるからだ。「私の場合はありがたいことに、ユーザーが皆、変化に対応する準備ができていた。残念ながら、皆さんの多くには当てはまらない状況だろうが」とメイ氏は回答し、その上で、ユーザーの賛同を得る上でのトレーニングの重要性を強調した。何しろ、ユーザーが予算編成用の新しいシステムを使うのは1年に一度だけかもしれず、その間にトレーニングを忘れてしまう可能性もあるからだという。
また別の出席者からは、IT部門と意見が衝突する可能性についての質問が上がった。プレゼンテーションの途中にメイ氏が、「Host Analyticsは事実上、社内のIT部門の継続的な関与を必要としない」と何度か発言したのを受けて、この質問者は「雇用の安定が損なわれることは、IT部門がクラウド導入に抵抗する理由になるのでは」との疑問を投げ掛けた。メイ氏は「ソフトウェアの選別においてIT部門の関与を保つように」とアドバイスしたが、結局、この懸念に対する明確な答えは出されず、同氏は「そうした問題は恐らく、そう頻繁に起きるものではない」と述べるにとどめている。
その他、IAFFがツールをどのように使用しているかや、ツールの具体的な機能について、メイ氏により詳しく質問した出席者もいた。なお、メイ氏はクラウドソフトウェアを絶賛し、クラウドを導入して以来、IAFFが享受しているメリットを称賛する一方で、オンプレミス技術もまだ間違いなく賢明かつ立派な選択肢であるとの考えを強調し、次のように語っている。
「クラウドかオンプレミスかは、それぞれの好みだ。私はクラウドを選んだ」
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