ERP比較ガイド:クラウドERP(前編)
月額料金は? 海外進出を支援するクラウドERPのコストを比較する
海外進出した企業で最初に必要となるERPの機能といえば会計と人事。本稿では、企業が海外拠点で利用する場合を想定し、主要なクラウドERPの機能紹介と、コスト比較をお届けする。
日本企業の海外進出が活発だ。これまでの工場進出に加えて、現地での販売や研究開発を目的に進出するケースもあり、多彩になっている。海外進出した企業がまず必要になるのが会計と人事の管理システムだ。現地生産や販売など、どのような進出目的であっても、「ヒト・モノ・カネ」のベースとなる会計と人事システムは必要になる。本稿では、海外進出する企業が利用することを想定し、主なクラウドERPの会計、人事システムの機能を紹介し、そのコストを比較する(後編:比較表で一覧可能、クラウドERPのコストを比較する)。
想定しているのは本社で「SAP ERP」や「Oracle E-Business Suite」などの大規模向けERPを使っている企業が海外拠点を設けるケースだ。この場合、海外拠点で利用するERPの利用ケースは4つが考えられる。
- 本社と同じERPをオンプレミスで使う
- 本社と同じERPをクラウドサービスで使う
- 本社とは別のERPをオンプレミスで導入する
- 本社とは別のERPをクラウドサービスで利用する
ERPとしてグループでの統合性が最も高まるのは1だ。しかし、本社で使っているERPが高コストだと海外拠点での運用コストも高まる。2はそのコスト問題を解決できるが、本社で使っているERPがクラウドサービスに対応していないと利用できない。3は、製品によってはコストを抑えられるが海外拠点でERPの運用管理をする必要があるなどランニングコストが増大する。今回取り上げるのは2と4の形態だ。低コスト、短期間に会計と人事システムを立ち上げることができる。また、ハードウェアが不要で、運用管理の手間がないなどTCO(総所有コスト)の低減が期待できる。以下から主要製品の機能とコストを見てみよう。
今回紹介するのは以下の6つのクラウドERPだ。前編ではNetSuite、BusinessACXEL for SAP ERP、EXPLANNER for SaaSを取り上げる。
- NetSuite
- BusinessACXEL for SAP ERP
- EXPLANNER for SaaS
- SuperStream
- GRANDIT
- GLOVIA smart
NetSuite
クラウドERPとして最初に名前が挙がるのは「NetSuite」ではないだろうか。クラウドERPの専業ベンダーで、世界では米国を中心に7000社、1万拠点以上で導入されているという。NetSuiteでは、会計、人事の機能を「ERP/財務会計」モジュールで提供する。ERP/財務会計では、主に財務会計、在庫、購買、注文発注、従業員の管理などの機能を用意する。これらの複数の機能が統合的に利用できるのが特徴だ(関連記事:クラウドERPの先駆け「NetSuite」が探る次の成長機会)。
価格は、利用規模によって異なる。小規模ユーザー向け(5~10ユーザー)の「Limited Edition」、中小企業向け(2~99ユーザー)の「Midmarket Edition」、100ユーザー以上の大規模向けの「Enterprise Edition」の3つのエディションがあり、それぞれで基本ライセンス料金とユーザーライセンスの料金が異なる。
Limited Editionであれば、月当たりの基本ライセンスが5万5000円、ユーザーライセンスが1人当たり8700円となる。Midmarket Editionでは、基本ライセンスが10万5000円、ユーザーライセンスが1万400円。仮にMidmarket Editionの5ユーザーで会計と人事を使うことを想定すると、月額15万7000円の計算になる。ただ、他にサポート費用としてライセンス価格とオプション価格の総額の27.5%が掛かることに注意が必要だ。また、NetSuiteは、17言語、190種類以上の通貨で利用できるグローバル対応製品の「NetSuite OneWorld」も用意している。
BusinessACXEL for SAP ERP
本社でSAP ERPを使っている場合、海外拠点での有力な選択肢となるのがSAPのクラウドサービスだ。SAP自体は日本ではERPのクラウドサービスを行っていないため、パートナー企業のサービスを利用することになる。電通国際情報サービス(ISID)の「BusinessACXEL for SAP ERP」はSAP ERP 6.0をコアにしたサービスで、SAP ERPのフル機能をクラウドサービスで利用できる(関連記事:「SAP ERPは月額料金で利用」が当たり前になるか)。
利用できる機能は財務会計、管理会計の他、在庫管理、販売管理、購買管理などで、ISIDが日本企業向けに最適化した状態で提供される。日英中3カ国語で利用でき、中国の会計慣習にも対応したテンプレート「BusinessFUSION」も月額課金で利用できる。目的別の分析リポートなどを出力できるBI(ビジネスインテリジェンス)機能や、ワークフロー機能も標準構成に含まれる。ただ、人事管理は機能に含まれないので、別の製品やサービスを検討する必要がある。
価格は、SAP ERPの利用に加えてISIDが開発したテンプレートも込みで1ユーザー当たり月額6万円から。10ユーザー以上で契約できるので、最低料金は60万円からということになる。利用ユーザー数に応じてボリュームディスカウントがあり、利用ユーザー数が多ければ、割引を受けられる。1契約当たりの利用上限は、150ユーザー。導入時のコンサルティング費用は個別見積もりとなっている。
また、オプション機能としてISIDの連結会計ソリューションとも連携可能だという(関連記事:国産連結ソフトのもう1つの定番「STRAVIS」が支持される理由)。
EXPLANNER for SaaS
NECが提供する「EXPLANNER」も多くの企業で使われるERPだ。オフコン向けアプリケーションだった時代を含めると35年以上の歴史があり、2万本以上の導入実績がある。このEXPLANNERのクラウドERPである「EXPLANNER for SaaS」が登場したのは2010年だった(関連記事:老舗ERPがSaaSに、「EXPLANNER for SaaS」の新しさとは)。
EXPLANNER for SaaSの特徴は、そのカバー範囲の広さだ。会計、人事の他に、給与、債権、債務、ワークフローと多数のモジュールを備えて企業の業務を支援する。また、製造業向けには生産管理、流通業向けには販売管理のモジュールをそれぞれ用意するなど業種展開も可能だ。
パブリッククラウドを使ったサービス提供の他に、プライベートクラウドを使った展開も可能。パブリッククラウドをEXPLANNER for SaaSを利用し、手組みアプリケーションをプライベートクラウドで稼働させて、両者を連携させるという使い方もできる。海外拠点でのビジネスが本格化しても十分に対応できるだけの機能を持つ。もともとオンプレミスのERPだけに、最初はクラウドERPで低コストに始めて、利用規模が拡大したらオンプレミスに移行するという使い方も可能だ。
価格はモジュールを問わず、3ユーザーで月額14万円(給与が含まれる場合は15万円)から。会計と人事、給与の利用を想定すると、月額15万円からとなる。仮に5ユーザーで使った場合、追加ライセンスが1ユーザー当たり9000円なので、月額16万8000円になる計算だ。
初期導入時には、コンサルティングやシステムの初期設定作業のコストが別に掛かる。その価格は導入するモジュールの数や適用業務の範囲によって異なるが、最小構成時で150万円からとなっている。
■紹介したクラウドERPの比較表
| 製品名 | NetSuite | BusinessACXEL for SAP ERP | EXPLANNER for SaaS |
|---|---|---|---|
| ベンダー | ネットスイート | 電通国際情報サービス | NEC |
| 主な機能 | 財務管理 収益認識 予算管理 在庫管理/倉庫管理 需要計画 受注管理/請求管理 出荷管理 収益管理 財務分析とリポート CRM機能 Eコマース機能 ダッシュボード機能 |
財務会計 管理会計 在庫管理 マスター管理 販売管理 購買管理 経営情報 グローバル会計テンプレート ワークフローフレームワーク データ連携フレームワーク |
会計 人事 給与 債権 債務 ワークフロー 販売管理 生産管理 |
| 月額基本料金 | 10万5000円 (Midmarket Edition:2~99ユーザー) |
― | ― |
| 1ユーザー当たりの月額料金 | 1万400円 (Midmarket Edition:2~99ユーザー) |
6万円 | 5万円(会計、人事、給与) |
| 最低ユーザー数 | 2(Midmarket Edition) | 10 | 3 |
| サポート料金 | ライセンス、オプション総額の27.5% | ―(月額料金に含む) | ―(月額料金に含む) |
| 初期導入費 | 個別見積もり | 個別見積もり | 150万円から |
次回はSuperStream、GRANDIT、GLOVIA smartを紹介する予定だ(後編:比較表で一覧可能、クラウドERPのコストを比較する)。
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