変わる経理、CFOの役割(後編)
CFOとCIOの垣根がなくなる未来企業
CFOの役割が拡大している。今やCEOのビジネスパートナーであると同時にテクノロジーに関する重大な意思決定にも関わるようになっている。
前編記事「経理のプロが考える『数字ではなく人を見ろ』」に引き続き、企業におけるCFO(最高財務責任者)の役割の変化について解説する。CFOにとっては経理以外の業務経験が重要になりつつあるのが現実だ。
経理部門が戦略的な機能を果たすには、道を切り開く精力的なCFOがいなければならない。これが、「CFOの役割の変化を理解する」と題されたパネルディスカッションのキーポイントだった。セッションの中で、英国に本拠地を置く監査サービス、Ernst & Youngで財務アドバイザー部門のマーケットリーダーを務めるマイルス・コーソン氏が実施した調査結果が披露された。調査のテーマは、現在のCFOが自らの役割をどう定義しているか、CFOのポジションがどう進化しているかであった。
コーソン氏はまず、CFOの責務を大きく「実践」「有効化」「開発」の3つに分けた。「実践」は財務に関する知見と分析の提供に関与すること、「有効化」は事業戦略の資金を提供すること、そして「開発」は組織の戦略の定義と戦略の進捗をステークホルダーに発信することである。2012年10月にErnst & Youngが米国の業界団体Financial Executives Internationalと共催したWebセミナーで、コーソン氏がこの3つの機能の中で最も重要なものはどれであると考えるか、参加者にアンケートを取ったところ、回答者の42%は「実践」と答えたという。「開発」と答えたのは35%、「有効化」は23%だった。
パネリストの1人、Heineken USAのCFO、ガブリエル・ジウディチ氏は、「実践」の割合が高かったことについて驚きを隠さなかった。「個人的な感覚では、“実践”はやって当然で、優れたCFOとして周りに認められる理由にはならない。ゲームに参加するための入場券のようなもの」と語った。同氏によれば、CFOは今後数年以内にビジネスパートナーへの移行を迫られる可能性が高い。さらに、ビジネスパートナーのような戦略的な役割と、従来の企業内の会計処理の役割は、より明確に区別されるようになるという。
コーソン氏は未来のCFOが持つと予想する、9つの強みを挙げた。
- 会計スキル
- 企業の合併買収(M&A)の経験
- リーダーシップ
- 市場および株主に対する露出
- 経営幹部との効果的な関係
- 経営に関する洞察力
- 国際的な露出
- 財務上の革新的なイニシアチブの経験
- 「前例にとらわれない」経験
要約すると、財務部門以外の業務上の役割から得るスキルである。ジウディチ氏は即座に、「前例にとらわれない」経験が特に重要であることに同意した。
CFOのキャリアパスについて、「一般的に、CFOは最終目標の1つと考えられている」とコーソン氏は話す。Ernst & Youngの調査によれば、CFOの大半はこの役職を最後に引退する。「ただ、CFOがCEOのパートナーの役割を果たせたと自覚できたとき、CFOは大きな達成感を感じるものだと、コーソン氏は言っていた」と、ジウディチ氏はCFOの本音を明かした。「CEOの右腕となって働くのが好きだ。自分の考える中で、最高の役職だ」とコーソン氏は言う。
ガバナンスの効率アップはITのイノベーションにつながる
米ニューヨーク市を拠点とする国際証券取引所、NYSE EuronextのCFO兼総務部長、クリシュ・ヴェンカタラマン氏も、「財務部門は、ITとの連携以外の点では、チーム内の組織構造を見直すべきだ」と話す。ヴェンカタラマン氏は、「経費を抑えながらテクノロジーをもっと有効に活用する方法: CFOとCIOの垣根を取り払う」と題したプレゼンテーションで、最高情報責任者(CIO)にリポートを送信し、CFOに財務報告を提出する従来のITモデルに代わって、両方の役割を果たす人物を上司に据えた混成チームを作ることを勧めている。このように組織を再編すれば命令系統は統合され、組織の透明性が増してIT部門の悪影響を排除できるというのが、同氏の主張だ。
またヴェンカタラマン氏は、IT部門が社内で頂点に位置する組織ではないとしても、IT戦略ではCEOの行動を考慮に入れるべきだという。「IT部門が成功を収めるには、CEOと経営幹部をIT部門の活動に巻き込まなければならない。また、財務部門はIT部門の人員配置を前年度と同じでいいと考えてはいけない。それは“ITの最大の消費者を(最大の消費者のまま)温存する”ことになる」とも同氏は語る。それよりも、成長している業務部門に人員を割り当てることを、同氏はイベントの出席者に勧めた。
さらに同氏は、IT戦略の中では、IT部門と経理部門が互いに相手部門の悪口を言い合うよりもガバナンスを強化することが、経理部門の本質的な役割であると話す。「ガバナンスがイノベーションを阻むというのは、一種の神話だと思う。実際には、ガバナンスが強化されると、イノベーションの原動力となるテクノロジーが有効に活用できる。テクノロジーを活用して組織の透明性を高めたいと考えるならば、まずはガバナンスを強化することが前提になる」
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