拡大するCFOの役割【後編】
「ノー」から始まるCFOたちの社内信頼構築法
CFOの役割が社内で広がる中で、事業部門との折衝も多くなっている。予算を考えて事業部門に「ノー」と伝えるケースも多くなるが、それでも事業部門と信頼関係を維持するにはどうすればいいのか。
さまざまな顔を持つ現代のCFOは経営幹部と現場リーダーの2者を満足させる必要がある。その際に有力なツールになるのがITシステムだ。前編「CFOのクラウド選びは「ユーザーに権限を」が合言葉」に続き、後編では財務目標の策定に業務部門をどのように巻き込むかについて、CFOの考えを紹介する。
テクノロジーの導入により、財務部門以外のユーザーにも財務データを利用しやすくすることは重要だ。もう1つ重要なのは、財務計画の策定プロセスに微調整を加え、ビジネスリーダーに予算目標の理解を促すことだ。財務管理ソフトウェアベンダーの米NetSuiteで財務担当副社長と垂直ソフトウェア担当ゼネラルマネジャーを務めるダン・ミラー氏は、指摘する。
「真に長期にわたる計画を立てる必要があるというのが、私の強い信念だ。取締役会が非公開会議で、CFOの用意したスプレッドシートに一度だけざっと目を通すというのでは駄目だ。チーム全体が関与すべきだと私は考えている」とミラー氏は語る。
ミラー氏は、「複数年計画は完成と同時にほころびが見つかるものだ。だが、そうした計画は企業の財務責任者がじっくりと考え抜き、主要なインプット基準とアウトプット基準を明確にし、常に長期的な視野に立つ上で役立つはずだ」と指摘する。「率直に言って、私の経験では、ほとんどの企業は現年度の収益を最大化しようとはしても、翌年の成長を促進するために現年度のうちから営業部員を採用するようなことはしていない。複数年計画はそうした取り組みの助けになる」と同氏は続ける。
予算策定プロセスに多くの人を巻き込むということは、ビジネスリーダーが予算目標に疑問を抱かずに済むということでもある。「事業部門の責任者に『その数字はどうやって出したのか』と聞かれることはない。事業部門の責任者自身が予算編成に参加したからこそだ」とミラー氏は語る。
複数年計画は、財務部門が組織的変化の可能性を分析する上でも役に立つ。「新たな戦略的方向性について検討したいが、そのための枠組みがないということが、ときにある。複数年計画があれば、その新たな戦略的方向性が自社のビジネスにどう影響するかを考える枠組みとなる」とミラー氏は語る。さらに同氏によれば、NetSuiteは8四半期の業績見通しをローリング方式で策定しており、この見通しは毎月見直されるという。
イエスマンにならずにビジネスリーダーと信頼構築
「Making the Most of the Evolving CFO Role(進化するCFOの役割を最大限に活用する)」と題されたパネルディスカッションでは、米JRP AssociatesのCEOであり、ペンシルベニア大学ウォートンスクールの財政学非常勤教授であるジョン・パーシバル氏がモデレーターを務め、「かつて最高執行責任者(COO)が行っていた職務を、近年は徐々にCFOが担いつつある」と語った。ということは、昨今のCFOにはビジネスを真に理解するためにオペレーション部門での経験が必要とされるのだろうか?
「CFO職に就く前に会社のオペレーションを経験しておく必要はないが、事業部門の責任者のやり方を追跡して必要な経験を身に付けておく必要はある」。非営利団体Easter Seals New JerseyのCFOを務めるシェリル・マークス・ヤング氏は、そう指摘する。
フラッシュメモリメーカーの米Spansionで財務計画および分析担当副社長を務めるラフル・マートゥル氏によれば、今ではあまりに多くの責務がCFOの権限下に置かれているため、全ての分野を1人でカバーするのは不可能だという。「こうした責務のうち、どれを自分でこなし、どの部分を人に任せるかを、われわれは各自で判断する必要がある」と同氏は語る。
パネルディスカッションでは、ビジネスリーダーとのコミュニケーションの図り方や信頼関係の築き方に関する質問も出された。
敵対的な関係をプラスの関係に変えるのに慣れているというヤング氏は、提案されたビジネスケース(投資対効果検討書)をかたくなに拒否しないよう気を付けているという。「私のノーは、『それは無理』という意味ではない。ただ、『そのやり方では無理』という意味だ」と同氏は語る。また同氏はビジネスリーダーに対し、達成目標を幾度も尋ねるようにしているという。「相手のより広範な構想を理解し、そしてその目標の達成に必要な別な方法をブレインストーミングできるよう手助けするためだ」と同氏は語る。
同様に、米TMP Worldwide Advertising and CommunicationsのCFO、トム・フィッツシモンズ氏は、ビジネスリーダーと仕事をするときにはコーチの役割を引き受けるという。同氏によれば、ビジネスケースの弱点はCFOには明白であっても、それを提案しているビジネスリーダーにとってはそうでもないことが多い。「自分が社内の情報や戦略にはるかに通じた高い立場にいることを忘れてはならない。われわれはCEOの意見や取締役会の考えまで知っている」と同氏は語る。
またマートゥル氏によれば、「対処法さえ間違えなければ、ノーと言うことは必ずしも論争の種にはならない」という。
「反対意見を言えてこそ、信頼関係を築けるのではないだろうか。われわれの仕事は選択肢を提供することだ。ビジネスや収益の面からは理解できないかもしれないが、われわれには目標達成のために選択肢がある」と同氏は語る。
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