増えるクラウド、モバイルへのIT投資
財務データを社外に置いても気にしない――変わるCFOの意識
クラウド、モバイル、ビッグデータ――企業のCFOはこれらの技術への投資を増やす意向だ。ITに対する意識が変わりつつある中でCFOの今後の役割を探る。
英国を拠点とする調査会社Longitude Researchが、米Oracleと米Accentureからの委託で最近実施した、「The CFO as a Catalyst for Change(変革の推進役としてのCFO)」と題した調査によると、景気がゆっくりながら上向いている情勢を踏まえて、今後数年、最高財務責任者(CFO)は、業務拡大の推進に現在よりも多くの時間をかけられそうだと予測していることが分かった。世界中の930社のCFOから回答を得た調査によれば、CFOたちは、業務拡大計画に当たって、クラウド、モバイル、ビッグデータといった分野のテクノロジーへの投資を増やしたいと、大きな関心を寄せている。
しかし、最新鋭のシステムはただ購入すれば、業績が上向くことを保証するものでもない。CFO向けに情報を提供している米CFO Magazineは、この調査結果から得られた知見を検証するWebセミナーを開催し、その中でパネリストが、CFOがITプロジェクトを円滑に管理する方法や、CIOと協力しながら革新的なITイニシアチブを推進する方法についてヒントを提供した。
CFOはアナリティクスとクラウドに関心
調査結果から見ると、CFOが現時点で投資を優先させたい分野のトップは、ITインフラストラクチャで、モバイル技術とITセキュリティがそれに続く。これを念頭に置くと、「自社の現在の技術的な資産およびインフラの中で、あなたが最も深刻な課題を抱えていると考える分野はどれか」という質問への回答にも納得できる。最も多かった回答は「保守の費用」(30%)、そして「システム統合の費用」(29%)、「システム間の連携が不十分」(28%)と続く。
その一方で、「向こう3年間の技術への投資では、どの分野を優先するか」という問いに対しては、アナリティクス/BI(ビジネスインテリジェンス)とクラウドコンピューティングの2つの回答が目立つ。アナリティクス/BIについては現時点では32%であるのに対して3年後は37%に、クラウドコンピューティングは15%から22%に、それぞれ数字を伸ばしている。これに対してITインフラへの注目度は、45%から38%へと数字が落ちている。モバイル技術への関心は安定して高めで、現在も3年後も40%前後である。同じ質問をWebセミナーの参加者に投げかけたところ、参加者の80%はアナリティクス/BIが将来の最優先分野だと答え、クラウドコンピューティングと答えたのは34%だった。
Accentureのエグゼクティブディレクター、スコット・ブレナン氏は、クラウドコンピューティングに対するCFOの関心が高まっていることについて次のようにコメントした。「昔の財務部門は、会計データをクラウドのような社外に置くことには抵抗を示していたものだが、(今回の調査結果は)実際に自分が日頃接している顧客の意見の傾向とほとんど一致している。クラウドコンピューティングでは、特に多次元のアナリティクスと予測を実現することに対する関心が高まっていると感じる」
またこの調査では、「他社との差別化要因となるテクノロジーはビッグデータとアナリティクスである」とCFOは考えていることも明らかになった。半数余りの回答者が「これらの分野への投資が競争力で優位に立つことにつながる」という見解に同意した。しかし、英国を拠点とする日用品メーカーReckitt Benckiserの食品部門で財務責任者を務めるスチュアート・キング氏はすかさず、単純に革新的なシステムを導入することで全てが解決するわけではないと指摘した。
「確かにソリューションの一環にはなるが、われわれが求める答えはデータだけから得られるものではない。数字の羅列を見つめれば答えが浮かんでくるわけではない」と、Webセミナーとは別の機会に行ったインタビューの中でキング氏は語った。「まず現場を把握することに勝るものはない。他の従業員と話したり、店舗を歩いたり、商品の検査をしたりすることだ。そういう行動もなしに、ただ報告書を提出するのでは意味がない」
CFO調査の回答者は、キング氏のこの思いに共感を示した。また、CFOがスキルギャップ(自社社員が実際に持つスキルと管理職が期待するスキルとのギャップ)を感じているところについては、「業界の専門知識」がトップで、31%の回答者が「ギャップを感じる」とした。これに「テクノロジーの知識」と「戦略の立案能力」が小差で続いている。
IT部門の成功にはCFOとCIOとの密接な関係が必須
革新的なITプロジェクトに関与したいという熱意のあるCFOが増えつつある中で、そうしたCFOはやがて、IT部門の最高責任者(CIO)との共同作業に今よりも多くの時間を割くようになるだろう。CFOの調査結果から判断すると、CFOとCIOとの関係は強化されてきている。この3年間でCFOがCIOと業務上で協力しあう機会が増えたと答えた回答者は、なんと84%にも上る。オーストラリアの電気通信事業者Telstra International GroupのCFOで、Webセミナーのパネリストを務めたヘンリー・ホン氏は、この関係を維持することが重要だと強調した。「私はテクノロジーの専門家ではないので、味方になってくれて自分のそばで何かとアドバイスをくれる人がいるとありがたい。CIOと良好な関係を築けなければ、仕事の初日から途方に暮れることになる」(同氏)
ホン氏は、ITプロジェクト管理に関するヒントも提供してくれた。同氏は財務部門の社員に対して、社内のあらゆる立場の人間、経営幹部から一般社員に至るまで、とにかく多くの人から話を聞くことを勧めている。どんな形であれシステムを導入すると、どこかの部門からは不満の声が出るものだと同氏は認めながらも、同時に、ステークホルダーに対しては彼らの意見がプロジェクトに反映されていると実感してもらうこと、そして一部の人の希望に反する決断が下されたときに、それを適切に説明することが非常に重要であると強調した。ホン氏は、継続的に意思決定に関わることでプロジェクトを推進し続けることの重要性も強調した。「自分が実践しているモデルは、是非はどうあろうと、民主主義が原則だ。そのシステムに対して全員が望んでいる要件を全て盛り込まなければ、効果は出ない」(同氏)
そのために、ホン氏はシステムのカスタマイズを最小限にするよう心掛けていると説明した。「システムをカスタマイズすると結局は(導入)作業が長引き、次期バージョンにアップグレードする場合やさらに新しいテクノロジーを適用したくなった場合に身動きが取れなくなってしまい、結果的に競合他社に後れを取ることになる」(同氏)
Webセミナーの最後に、次の質問が参加者から寄せられた。「CFOが業務の変革を起こすイニシアチブに取り組むとすれば、何から着手すればいいのですか」
ホン氏は手始めに取り掛かるステップを幾つか挙げた。「強固なチーム作りから始めることだ。自分より優秀な人がチームに加わることは全く気にしない。自分自身の成長につながるのならば」と同氏は言う。「(そして)必ず、小さい目標でも構わないから、何かをチームで達成すること。その体験でチームに活気がついていく」
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