企業の経理担当者はもはや「数字屋」「ビーンカウンター」ではない。テクノロジーを駆使し、企業の成長を支えるビジネスパートナーになりつつある。
経理担当者には確かに、数字を操る才能と情熱が必要だ。しかし米ニューヨーク市で2013年5月初めに開かれたCFO Forumで複数のスピーカーが報告したのは、最高財務責任者(CFO)の役割がここ数年で進化し、もはや単なる「数字屋」を超えつつあるという、新しい流れだ。「戦略的経理」とも呼ぶべきこの傾向は、効率のよい組織を育てる方法、他部門との円滑な連携、将来CFOの座に就いたときに必要なスキルを身に付けるという点で、新たな関心を集めている。
複数のセッションに共通していた考えは、企業が経理部門に求める需要は次の2点であるということだった。1つは、真のビジネスパートナーになってほしいということ。もう1つは、主要なステークホルダー(利害関係者)を特定したうえで支援することで、ステークホルダーとの関係を構築してもらいたいということだ。
「経理は単に数字を計算して社内に提供する部門としか考えていない企業も時折見かける」と、米金融サービス、Broadridge Financial Solutionsで投資家対応部門(Investor Communication Solutions)のCFOを務めるデヴ・パレク氏は語る。「だが、数字で示すことで、普通ではなかなか気付けない視点が得られることがある。組織としての意思決定に、いい意味で関与することができる。どうすればそんなことができるのかって? われわれ経理はデータを提供する。そのデータにメッセージを込める」
このイベントでは「CFOが組織を動かし、CFOの役割が戦略に関与する部分を増やすための方法」というテーマだけではなく、「経理部門が戦略的に活動して、組織のIT戦略に決定的な影響を与えるための方法」というセッションも開かれた。
パレク氏のセッションは「ベンチマークとしての経理部門を作る」というテーマで開かれ、同氏はそこで、多様性のあるチームを構築することも含め、経理部門の組織構造を変えることで企業全体の変革の先頭に立とうと提唱した。「スキルは付随的なものであると認識しておこう。1人の従業員が、必要とされるスキルを全て身に付けることは現実的ではない」と同氏は話す。
同氏は自分自身を引き合いに出して説明を始めた。「私はこの会社に入ったときに、自分の中にない資質は何かと考えた。最初に思い付いたのは、“自分には終身在職権はない”ということだった。だから、正当な終身在職権のある人たちを私のチームに確実に入れてもらうようにした。会社が他企業の買収に乗り出そうとしていることも知っていたから、買収した企業との統合がうまくできる人を雇いたいという提案もした」
また同氏は、「テクノロジーに価値があることは疑う余地がないが、その前に組織と作業プロセスを改善することはもっと大事だ」とも付け加えた。「“テクノロジーに問題がある”と指摘する人をよく見かけるが、実際のところは、その技術を使うユーザーの方に問題があることが多いと思う。(組織が)適切な人材、インフラ、プロセスに投資すれば、テクノロジーを使うこと自体を目的とするのではなく、ビジネスをサポートする仕組みとして、テクノロジーの本来の力をビジネスに活用できる」
パレク氏はさらに、財務を事業戦略と連携させることの重要性を強調し、その最初のステップとして非常に重要なのは、主要なステークホルダーを特定することだとした。(パレク氏が“全ての人”をステークホルダーと考えろと発言したことを受けて)社内のステークホルダーを優先するにはどうすればいいかという質問が、セッションの参加者から投げ掛けられた。これに対して同氏は、経理のプロなら、まず管轄範囲が最も広い人物に注目すること、そして変化を率先して起こせる行動力のある人物にも目を向ける必要があると答えた。Broadridge Financial Solutionsでは、同氏が該当人物のリストを作り、直属の上司がそのリストをチェックして、リストに加えるべき人物と加えなくていい人物を確定させたという。
後編ではCFOの役割の変化について詳しく解説する。
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