障害のある人でも簡単に使いこなせる時代に
思わず試したくなる「iOS 7」の画期的なアクセシビリティ機能
「iOS 7」には年齢や身体障害の有無に関係なく、誰でも必要とする情報に簡単にたどり着ける「アクセシビリティ」機能が多く搭載されている。意外と知られていない画期的な機能の概要を紹介する。
日常生活で使うツールとして、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末を持ち歩く時代になった。障害のある人や高齢者にも多く使われ始めている。その理由の1つに「アクセシビリティの高さ」がある。厚生労働省は「アクセシビリティとは、年齢や身体障害の有無に関係なく、誰でも必要とする情報に簡単にたどり着け、利用できる」ことと定義している。
2013年9月にリリースされたiPhone/iPad用OS「iOS 7」では、アクセシビリティをより向上させる多くのサポート機能が標準搭載された。2013年9月に開催された「国際福祉機器展」では、特別支援教育が必要な児童がiOS 7搭載端末を使いこなすノウハウを紹介する講演「知って得する標準アクシスビリティ機能 ~最新タブレット/スマホ編~」(e-AT利用促進協会 田代洋章氏)が開かれた。本稿ではその内容を基に、iOS 7の代表的なアクセシビリティ機能を紹介する。
画期的なアクセシビリティ機能を搭載した「iOS 7」
e-AT利用促進協会は、障害のある人や高齢者にICTを生活に役立ててもらうことを啓発する団体だ。東京大学先端科学技術研究センターとソフトバンクモバイル、エディアスなどとともに、携帯電話やスマートフォンなどのモバイル端末が障害のある児童/生徒などの生活や学習支援に役立つことを目指す「魔法のプロジェクト」に2009年から取り組んでいる。魔法のプロジェクトでは、特別支援学校などにモバイル端末を貸し出して授業で使用する実証実験を実施し、その研究成果を発信している。2013年4月から校内だけでなくモバイル端末を校外に持ち出すことも想定した「魔法のランプ」プロジェクトを実施中だ。
田代氏は「クライアントPCやタブレット、スマートフォンには障害のある人でも使いやすくするためのお助けツールが搭載されている。しかし、そのことを知らない人が非常に多い」と説明する。特に「iOS 7では画期的なサポート機能が搭載された」という。
iOS 7のアクセシビリティ機能は、ホーム画面の「設定」→「一般」→「アクセシビリティ」画面で設定する(画面1)。「視覚サポート」「聴覚サポート」「学習サポート」「身体機能サポート」のカテゴリに分かれている。
「VoiceOver」による音声読み上げでサポート
フラットな画面であるiOS端末は「画面を見ることが困難な人にとって、どこを触っているかが分からないことがある」(田代氏)。iOS 7では、そうした人でも使いやすくなるように文字サイズを大きくしたり、文字を太くしたりする「視覚サポート」機能を利用できる。
例えば、「VoiceOver」機能(画面2)。この機能をオンにすると、画面の操作や表示内容を音声で読み上げてくれる。1回タップするとその部分の情報を音声で返し、ダブルタップすることで選択項目を使用できる。また、指3本でスワイプすることでページスクロールなどが可能になる。
端末のホーム画面をタッチすると、その位置のアイコンが選択されて読み上げられる。Webブラウザ「Safari」を起動したい場合、「サファリ」と読み上げられた部分をダブルタップすることでSafariが起動できる(画面3)。
また、VoiceOverには「ローター」機能を利用できる。ローター機能は、2本の指でつまみを回すような感じでひねるジェスチャをすることで表示される。「見出し」「行」「読み上げ速度」「リンク」「フォームコントロール」「表」などで機能を切り替えることが可能だ(画面4)。
その他、視覚サポートとしては以下のような機能を利用できる。
| 機能名 | 概要 |
|---|---|
| ズーム機能 | 画面表示を拡大する(指3本でダブルタップして拡大したり、倍率を変更できる) |
| 色を反転 | 背景色と前景色を反転する(「白地に黒文字」から「黒字に白文字」)。文字や画像にも適用される |
| 選択項目の読み上げ | テキストを選択すると、読み上げボタンが表示される |
| 自動テキスト読み上げ | 入力した文字を自動的に読み上げ、自動修正や大文字変換などができる |
iPhoneを補聴器と連動させることも可能
iOS 7の「聴覚サポート」(画面5)には、耳に受話器を当てて通話しているときに周囲のノイズを軽減する「電話ノイズキャンセリング」機能や、字幕に対応しているアプリケーションの字幕表示を可能にする「字幕とキャプション」機能などがある。
田代氏は、意外と知られていない便利な機能として「モノラルオーディオ」機能を挙げる。「iOS端末の通常設定は、左右別々の音が出る“ステレオモード”。モノラルモードに切り替えることで、片方の耳が聞き取りづらい人でもよりはっきりと音声を聞くことができる」。また、左右の音量バランスを調整することも可能だ。さらに「補聴器モード」を設定することで電話中の補聴器への干渉を軽減したり、補聴器の内蔵マイク経由でiPhoneから音声を受信できる。
Appleは「Made for iPhone補聴器」をメーカーと共同で開発中であることを表明している。
アクセスコントロールで学習を支援
知育教材としても利用できるiPhone/iPad。AppStoreから学習支援アプリをダウンロードして利用できる。しかし、「アプリの広告をクリックしてしまったり、有害なWebサイトにアクセスしたりするなど学習の妨げになる機会も多い」(田代氏)。
iOS 7の「学習サポート」で提供される「アクセスガイド」を利用することで、iPhoneで使えるアプリを制限したり、利用できる機能を管理することができる(画面6、7)。
アクセスガイドが有効な状態では、タッチしても反応しなくなり、ホームボタンも機能しなくなる(トリプルクリックとパスコードの入力で解除できる)。
ピンチアウト操作も簡単に
iOSには肢体不自由のある人の端末操作を支援する「身体機能サポート」を搭載している。例えば「AssitiveTouch」機能では、画面をタッチすることが困難な場合や外付けのスイッチなどの支援アクセサリが必要な場合の端末使用を支援する。ホームボタンや側面の音声調整ボタンといった物理的なボタンの操作を代替する機能を提供する(画面8)。
2本の指を広げて写真や画像を拡大する「ピンチアウト」。AssitiveTouchの「よく使う項目」にある「ピンチ」を利用して操作する(画面8、9、10)。矢印の片側を指1本でタッチしてスワイプすると拡大したり、縮小したりできる。
また、操作手順(ジェスチャ)をカスタマイズして利用できる。AssitiveTouchのメイン画面の「新規ジェスチャ」を選択して実際の操作を行い登録する。登録したジェスチャはよく使う項目から選んで利用できる。
iOS 7の新機能「スイッチコントロール」を試してみた
身体サポート機能の目玉として、田代氏は新たに搭載された「スイッチコントロール」機能を挙げる。これは、指定したスイッチをオン/オフにする動作を組み合わせることで端末を操作する機能だ。
スイッチは「外部」「画面」「カメラ」などの種類がある(画面11)。外部スイッチでは、押しボタン式のスイッチなどの支援アクセサリを利用。画面スイッチでは、画面タッチなどの操作でiPhone自体をスイッチとして利用する。カメラスイッチでは、非接触型のカメラを通して頭を左右に動かすことで端末操作が可能になる。
以下、画面タップによるスイッチ操作で「Googleマップ」を表示する例を示す。スイッチコントロールをオンにすると、ホーム画面のアイコンが一列ずつ青枠で囲われ、事前設定された秒数間隔で青枠が移動する(画面12)。青枠で囲まれた内容を音声で読み上げることもできる。
Googleマップのアイコンがある上から3段目を青枠が囲んだときに画面をタップして列を選択すると、3段目の各アイコンを青枠が移動する(画面13)。タップを繰り返すことで選択項目を絞っていく。青枠がGoogleマップのアイコンを囲んだときに画面タップすることで、Googleマップが起動する(画面14)。
田代氏は、今後さらにアクセシビリティ機能が強化され、広く普及することで「車いすを利用している人や肢体の不自由な人でもスマートフォンを使いこなせる時代が近いうちに訪れるだろう」と語る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
6
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
9
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
10
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー