専門家が不気味な予想
「稼げる金額は無限」――金融市場がサイバー犯罪に狙われる
窃盗やクレジットカード詐欺を通じて稼げる金額には限りがあるが、「金融市場を操作することによって稼げる金額に限りはない」と専門家は言う。
サイバー犯罪集団は次の展開として国際金融市場を操作するようになる――。非営利の米調査機関U.S. Cyber Consequences Unit(US-CCU)を率いるスコット・ボーグ氏はそう予想する。同氏は米シカゴで開かれた「ASIS International」と「(ISC)2」の年次会合のジョイントセッションで講演した(ASIS Internationalはセキュリティ専門家から構成される国際組織でセキュリティ関連の教育プログラムや情報を提供、“(ISC)2”は国際的な情報システムセキュリティ資格の認定組織)。
サイバー攻撃で特定企業の信用失墜
サイバーセキュリティに関する国際ポリシーの円卓会議に出席したボーグ氏は、犯罪集団が窃盗やクレジットカード詐欺を通じて稼げる金額には限りがあると指摘。「だが金融市場を操作することによって稼げる金額に限りはない」とした。
まず市場で構えを取り、サイバー攻撃を仕掛けて特定企業の信用を失わせれば、サイバー犯罪集団はほぼ無限の利益を上げることが可能だとボーグ氏は言う。
「たとえ利益を得た者が特定されたとしても、市場のうわさに基づいて行動したと言えば済む」(同氏)
ボーグ氏は2002年の時点で、集団騒乱型のサイバー攻撃からプロ集団による組織的なサイバー犯罪へのシフトを予言した人物。金融市場への次のシフトはサイバーセキュリティの分野を変革させると予想する。
米コンサルティング会社Booz Allen Hamiltonの執行副社長、クリストファー・リン氏はこれに関連して、世界は情報システムの完全性に対する信頼喪失の可能性に直面していると語った。
一方、サイバー犯罪対策を支援する英非営利団体、International Cyber Security Protection Alliance(ICSPA)のプロジェクトリーダー、クローフォード・サミュエル氏によれば、今後数年はインターネット上の個人情報管理が最大の課題になるという。
「正しく管理しなければ、ネット上の個人情報は個人に対する攻撃を招くだけでなく、勤務先の組織に対する攻撃経路にもなる」とサミュエル氏。
米セキュリティ企業CrowdStrikeのインテリジェンス担当ディレクター、アダム・メイヤーズ氏は、サイバー攻撃ツールの氾濫も今後の課題になりそうだと述べ、「使いやすく、自分で組み立てられるマルウェアキットの出現をわれわれは目の当たりにしている。新興国が大国のサイバースパイの実例の後を追うのは時間の問題だ」と話す。
知的財産を盗むことによって一気に先に出ようとする複数の国家主体を相手に、「何に重点を置くべきか見極めることは大きな課題になる」と同氏は言い添えた。
「情報セキュリティ専門家は効率性の追求から効果の追求へと切り替える必要がある」と指摘したのは米SC Johnson & Sonの情報セキュリティ部門を率いるデイブ・タイソン氏。「もはや効率性とコストだけの問題ではなくなる」との見方を示す。
タイソン氏はまた、民間セクタのセキュリティに関する知識が向上すれば、サイバー防衛にどう投資するかを決めるに当たって、誰が自分たちを攻撃しているかを手掛かりにするようになるとも予想した。
(ISC)2のエグゼクティブディレクター、ホード・ティプトン氏は、こうした課題全てに対応する上での根本的な課題は、必要なスキルを持った十分な人材を見つけることだと話している。
こうしたスキルを習得してサイバーセキュリティ専門家の仲間入りできる機会を増やすことに加えて、未来のサイバー防衛のためには国際的、業界横断的な協力が不可欠になりそうだ。
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