既存DaaSとの違いを分析
「Amazon WorkSpaces」が再発明するかもしれないDaaSの可能性
Amazon Web Servicesが新しく打ち出したDaaS「Amazon WorkSpaces」は、従来のDaaSプロバイダーにとって脅威になるのだろうか。既存DaaSにあってAmazon WorkSpacesにないもの、またその逆を探る。
米Amazon Web Services(以下、Amazon)が「Amazon WorkSpaces」でDaaS(Desktop as a Service)市場に参入した。だが、AmazonはIaaS(Infrastructure as a Service)市場で優位を占めているものの、この新サービスが競合DaaSを打ち負かす保証はない。
AmazonはVDI(Virtual Desktop Infrastructure)のワークロードに慣れていないため、DaaSはAmazonに新たなビジネス機会だけでなく、新たな課題ももたらすと、米Gartner Researchの仮想化・調査担当副社長、マーク・マージビシャス氏は指摘する。Amazon WorkSpacesは、多額の投資を行わずにVDIを試したい企業や、契約業者向けにデスクトップを迅速に用意したい企業にアピールしそうだ。しかし、既存のDaaSプロバイダーは、競争力の維持に役立つ付加価値提供型の管理サービスも手掛けている。
既存DaaSにあってAmazon WorkSpacesにないもの
クラウドプロバイダーはDaaSにより、顧客にとって一般的に導入のネックとなる問題(初期コストの高さや展開の複雑さなど)を避けながらVDIを提供する機会が得られると考えている。
VDI市場の2大ベンダーである米Citrix Systems(以下、Citrix)と米VMwareは、DaaSへのアプローチがAmazonとは異なっている。「われわれの一般的な顧客は、Amazonのサービスは簡素すぎると思うだろう」と、Citrixの製品マーケティング担当シニアディレクター、ケン・エストライク氏は語る。「われわれの顧客は通常、包括的なモバイルデバイスサポートおよび管理サービスに加え、HDグラフィックスを求める」
Amazon WorkSpacesは、シンプルなWindows 7風のデスクトップサービスだと、エストライク氏は評する。Amazon WorkSpacesを使う顧客は、サービスプロバイダーの助けを借りずに仮想デスクトップを自ら管理しなければならない。
サービスとサポートは、他のDaaSプロバイダーがクラウド型VDI市場で自社を差別化する(あるいは自社の地位を維持する)のに役立つ。Amazon WorkSpacesにより、企業顧客の多くはすぐにサブスクリプションを購入して仮想デスクトップを起動できるが、基本的な機能に絞り込まれたこのサービスには、サービスプロバイダーなら提供できるはずの保証が含まれないと、米nGenxの社長兼最高執行責任者(COO)、デーブ・ギブソン氏は語る。同社はマネージドサービスプロバイダー(MSP)で、Citrixのパートナーとしてホステッドアプリケーションおよびデスクトップに力を入れている。
nGenxの顧客の中小企業は、同社がホステッドDaaSサービスの一環として、VDI管理を行うことを求める。だが同社は、顧客が単純なユーザーやアプリケーションのプロビジョニングから、サーバやアプリケーションの構成まで、必要に応じて各種の管理を行うこともできるようにしている。
「われわれは管理機能を提供することで、顧客が自社で管理を行うコストや手間を一部省きながら、一貫したデスクトップエクスペリエンスを享受できるようにしている」とギブソン氏。「技術はあくまで技術。肝心なのは、誰がより良いサポートサービスを提供し、顧客とより良い関係を築いているかだ。Citrixとパートナーを組んでいることが、われわれがそうした点で優れている理由の1つだ」
DaaSの広告塔として期待されるAmazon WorkSpaces
Amazon WorkSpacesは、機能は簡素ながらも、DaaSへの関心を高めるのに一役買う可能性がある。
「『これまでDaaSの導入は考えたこともなかったが、Amazon WorkSpacesなら試してもよい』というアーリーアダプターが出てくるだろう。それは市場にとって良いことだ」と、Citrixのエストライク氏は語る。
Amazon WorkSpacesは、VDIの基本的な有効性を実証してくれるだろうと、VMwareのエンドユーザーコンピューティング製品マーケティング担当副社長、エリック・フリーバーグ氏は語る。
VMwareは、VDIプラットフォームを持つプロバイダーが独自のDaaSを提供できるようにしており、これはAmazon WorkSpacesが、AmazonプラットフォームをベースにAmazonから提供されるDaaSであるのとは対照的だと、フリーバーグ氏は説明する。「われわれのサービスプロバイダーパートナーは、ベースOSと付加価値(サポートや企業セキュリティのような)の提供を精力的に進めている。こうしたサービス内容の充実度は、シンプルな仮想Windowsデスクトップサービスのはるかに上を行っている」
(Amazon WorkSpacesのような)基本的なクラウド型VDIサービスは、プロバイダーが付加価値サービスとセットで提供するDaaSほど強力ではないだろうと、フリーバーグ氏は指摘する。企業は、自社で使っているアプリケーションの多くが、ユーザーの期待とは裏腹に、パブリッククラウドインフラをベースにしたVDI上では動かないことに気付く羽目になるという。
第1世代のAmazon WorkSpacesは、VDIサービスに多くを求める経験豊富なDaaSユーザーではなく、「特定の部門内(コールセンターなど)でVDIを試したい企業や、DaaSが持つリスクをあまり冒さずに、このサービスを使い始めたい企業にアピールするだろう。これらのリスクには、例えば、多大なコストが掛かるインフラ変更の他、セキュリティやレイテンシといった問題がある」と、Gartnerのデスクトップ、アプリケーション、サーバ仮想化担当リサーチディレクター、グンナー・バーガー氏は指摘する。
Amazon WorkSpacesはDaaS市場の競争のハードルを上げるか
Amazon WorkSpacesは、従来のDaaSプロバイダーにとってすぐには脅威にならないかもしれない。しかし、Amazonが同サービスを進化させれば、脅威に変わる可能性がある。「規模、量、スコープの点で、Amazonに匹敵するプロバイダーはあまりない。Amazonは、他のプロバイダーが太刀打ちできないほど、このサービスの一部コストを引き下げることができる」と、Gartnerのマージビシャス氏は見る。
IaaS市場と同様に、クラウド型VDI市場でも再編が進もうとしており、企業規模が重要になりそうだ。Amazon WorkSpacesは、現在市場でDaaSを提供している小規模プロバイダーを脅かす可能性があると、バーガー氏は指摘する。
「Amazonの巨大でグローバルな規模は差別化の武器になる」と同氏。「Microsoftのような大規模クラウドプロバイダーは心配ではないだろうが、小規模な零細プロバイダーは心配かもしれない」
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