DaaS vs. VDI
VDIの前に立ちはだかるクラウドベースのアプリとDaaS
初期インフラコストは高く、投資効果が現れるまでに数年を要するVDIに比べ、手軽に導入できコストも安価なDaaSが注目を集めている。
2012年にデスクトップ仮想化を検討するIT部門もあるだろうが、企業におけるクラウドベースのアプリケーションの利用拡大は、仮想デスクトップインフラ(VDI)をテストしようという意欲に水を差すことになるかもしれない。この状況は、DaaS(Desktop as a Service)にとって追い風になる可能性がある。
クラウド上でホストされた仮想デスクトップは、以前からVDIに対抗する低価格な選択肢であったものの、広範に利用されていたわけではない。それは主として、クラウドのセキュリティが不十分だという懸念によるものだ。しかしITのコンシューマー化、そしてクラウドサービスへの信頼の高まりというトレンドは、クラウドベースのVDIに対するITマネジャーの警戒心を和らげることになりそうだ。
クラウドベースのアプリ vs. VDI
サーバ上でホストされたVDIは、一元的なデスクトップ管理、データセンターレベルのセキュリティ、インターネット端末上でエンドユーザーに本格的なデスクトップを配信する機能などを提供する。しかし数千あるいは数万もの仮想デスクトップをサポートするための初期インフラコストは高く、投資効果が現れるまでには何年もかかる。
「クラウドベースのアプリケーションは、サーバホスト型VDIへの需要の一部を奪い取っている。これはWebアプリがサーバホスト型VDIと同じメリットを幾つか提供するからだ。例えば、どこからでも任意の端末上でデスクトップアプリにアクセスできることだ。しかもインフラは一切不要なのだ」と説明するのは、米Tier1 Researchのクラウドコンピューティング担当アナリスト、カール・ブルックス氏だ。
ブルックス氏によると、例えば、Google Apps、Microsoft Office 365、Zohoなどのオフィスプロダクティビティスイートは、仮想デスクトップ環境で実現される機能をユーザーとIT部門に提供するという。すなわち、ユーザーが自由にファイルを共有したり共同作業を行ったりできる仮想作業空間だ。
「VDIは柔軟性とコントロールを提供してくれるが、インフラを構築するのが大変だ」とブルックス氏は語る。「クラウドはアプリと機能に簡単にアクセスできるが、Googleなどの企業にデータを預けなければならない」
しかしクラウドサービスのメリットは、必ずしもVDIのメリットとぴったり重なるわけではない。ブルックス氏によると、社内でデスクトップを仮想化する目的は主として、セキュリティの改善、デスクトップ管理コストの削減、メンテナンスとサポートの迅速化などだ。これに対し、企業がSaaSを利用してアプリケーションや複雑なITサービス(GoodDataなど)を配備する場合、それはエンドユーザーおよび組織全体の要求を満たすことが最大の目的だという。
「VDIはITプロフェッショナルにとってメリットがあり、クラウドサービスはエンドユーザーにメリットがある」と同氏は話す。
ワークスペース技術を専門とする米コンサルティング企業Entelechy Associatesの創業者で主席アナリストのサイモン・ブラムフィット氏によると、企業はローカルにインストールされたアプリケーションをクラウドアプリに置き換え、また新たに設立された企業では当初からクラウドを利用しているが、既存企業が近い将来、全てのデスクトップアプリケーションをクラウドアプリに置き換えることは考えにくいという。
クラウドベースの仮想デスクトップ
一方、DaaSは、仮想デスクトップとクラウドの両方の長所を兼ね備えているといえそうだ。
米DesktoneなどのDaaSプロバイダーは、クラウドからインターネットを通じて任意の端末に本格的な仮想デスクトップとアプリを配信する。DaaSプロバイダーの数も増えている。米IBMはDesktoneのプラットフォームを使ってホステッドデスクトップを提供しており、米Dellでは「Virtual Desktop-as-a-Service」と呼ばれるクラウドベースの製品でこのトレンドに乗じる考えだ。一方、米VMwareは2011年10月にDesktoneと提携し、仮想DaaS製品の「VMware View 5」(関連記事:3D対応やVoIPも実現、VMware View 5の新機能とライセンス)をリリースした。
DaaSホスティングプロバイダー各社は、エンドユーザー側での遅延とパフォーマンスという問題に対処する必要があるが、「それを解決できれば、大きなビジネスチャンスがある」とブルックス氏は語る。「VDIを検討する段階から、全てアウトソースすることを検討する段階への移行は、大きな飛躍ではない」
その移行を行った組織もある。リベラルアーツカレッジの米フリードハーディマン大学(FHU)は最近、Citrix XenDesktop(関連記事:柔軟な操作性を備えたCitrix XenDesktop、仕組みとライセンス)ではなくクラウドベースの仮想デスクトップを選んだ。
DaaS vs. VDI
FHUは以前から、Google DocsやGmailなどのクラウドサービスを利用しており、学生が利用する学習システムは全てWebベースになっている。
「システムにクライアントを一切インストールしないようにしている」と話すのは、FHUでネットワーク運用ディレクターを務めるグレッグ・メープルズ氏だ。「また、全てをWebブラウザで実行するようにしている。その結果、学生がどんな種類の端末を使っているかは問題にならなくなった。彼らは何を使ってもよいのだ」
学生数1500人の同大学では最近、WindowsデスクトップからMacに移行し、新入生にはMacBookが与えられる。学生はこのマシンが気に入っているという。多くの学生が他のApple端末を使っているからだ。しかし移行は容易ではなかったようだ。というのも、教職員はWindowsアプリを使い続けており、学生に対して特定のMicrosoftソフトウェアを使うよう指示していたからだ。
メープルズ氏は、Mac上でWindowsを実行できる米Parallelsの仮想マシンでこの問題を解決しようとした。しかしこのアプローチはリソースを大量に消費するとともに、パフォーマンスを低下させるという。
「これはユーザーに受け入れられなかった。もっと良い方法を見つける必要があった」と同氏は話す。
FHUではCitrix XenDesktopもテストしたが、少数のデスクトップ(当初は約150個)を配備するのに初期インフラコストが掛かり過ぎることが分かったという。同氏はDesktoneのクラウドベースの仮想デスクトップを検討し、数個のデスクトップを配備した。この実証試験は成功した。
「5年間で計算すると、Citrix XenDesktopベースのモデルと比べて経費を節減できることが分かった。それに機器を購入した場合、時とともに価値が減少する」とメープルズ氏は語る。「リースの場合は、ベストな機器を常にリースすることができる」
FHUの学生はブラウザ経由で自分のデスクトップにログインし、IT部門もブラウザ上で仮想デスクトップの管理を行う。メープルズ氏によると、帯域遅延問題のためにデスクトップのパフォーマンスが時々低下するが、これはIT部門が帯域割り当てという定量困難な問題を解決できていないからだという。FHUではデスクトップの数を追加しているため、まだ帯域ニーズを正確に把握できないようだ。
同大学は当初、クラウドのセキュリティを心配していたが、その不安は解消したという。「われわれよりも当然セキュリティを気にしている米Merrill Lynchでも問題ないのだから、われわれにとっては十分セキュアだと確信している」と同氏は話す。
「結局、クラウド上でホストされた仮想デスクトップのメリットはデメリットを上回っているということだ」(同氏)
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