2014年はフラッシュ、データ管理、オープン化に注力
フラッシュがあらゆるストレージを変える――IBM幹部が熱く語る理由
米Texas Memory Systemsを買収するなど、フラッシュストレージ分野での存在感を強めているIBM。ストレージ事業の統括責任者が語った今後の展望でも、同社の本気度が伝わってくる。
米IBMに勤続31年のベテラン、アンブシュ・ゴヤール氏は2013年1月、システムストレージ&ネットワーキング担当のゼネラルマネジャー(GM)に就任し、同社のストレージ事業の統括責任者となった。
ゴヤール氏がそれまでに就いた同社の役職は、システムズアンドテクノロジーグループのグローバル開発・製造担当GM、情報管理ソフトウェア担当GM、ワークプレース、ポータル、コラボレーションソフトウェア担当GM、ソフトウェアソリューションおよび戦略担当GM、ソフトウェアサービス担当副社長、コンピュータサイエンス担当ディレクターなどだ。
IBMのストレージ担当GMとしての最初の1年を終えようとしているゴヤール氏に、IBMのフラッシュストレージや、ストレージ分野における今後の変化の見通し、IBMが近い将来どこに向かうかの展望について聞いた。
――2013年初めにGMに就任したとき、ストレージの事業展開において大きな目標としていたことは何ですか?
アンブシュ・ゴヤール氏(以下、ゴヤール氏) 変えていきたいことが幾つかあった。われわれは多くの製品を持ち、処理速度やフィード、容量などで勝負していた。私がやろうとしたことは、「これはストレージをめぐる戦いではなく、データをめぐる戦いだ」という認識を社内に浸透させることだった。
顧客の関心の焦点は、「どうやってデータを管理するか」だ。顧客のさまざまなワークロードには、さまざまなデータ管理のニーズがある。人々がデータについてまず求めるのは「私のデータが失われないこと」だ。2番目に求めるのは「私のデータが私のワークロードで利用できること」。3番目は「容量やパフォーマンスのアップが必要になったら、実現されること」だ。そこでわれわれは、データ管理にフォーカスすることにした。それは製品ポートフォリオの合理化につながっている。
――製品を絞り込む必要があったということですか?
ゴヤール氏 処理速度、フィード、容量の競争に走ると、重複したような製品ばかりになってしまう。
データ管理の3つのシナリオを説明しておこう。第1のシナリオは、ビジネスクリティカルなデータを扱うものだ。これはビジネスの存続に不可欠なデータで、もしこれがないと、元帳を開いたり決算を報告したりといったことができない。こうしたデータについては、可用性と安全性を確保しなければならない。
第2のシナリオは「大量のデータがあり、それを理解して活用すること、迅速に付加価値を生み出すことを目指す」というものだ。どのデータを取っておくべきか、どのデータは捨ててもよいか、費用対効果分析にどのデータが使えるか、どこでリアルタイムアナリティクスが必要か、といった考慮点がある。
第3のシナリオは、膨大な分散データがあり、手掛ける商品が多岐にわたっており、既存の全ての減価償却データの活用に向けて新しいプロジェクトを迅速に始めたいというものだ。
ビジネスクリティカルデータを扱う第1のシナリオのポイントは「マルチコピーデータ管理」だ。マルチコピーデータ管理は、データのコピーにどうやってアクセスするか、そしてどうすれば高速にコピーを作成できるかにかかわっている。以前はバッチ処理と呼ばれていた。今では「アナリティクスコピーの作成」と呼ばれており、このコピーは、関連するアナリティクスに使われる。われわれの「DS8000」ファミリーは、ビジネスクリティカルデータのコピー管理に便利だ。
迅速な付加価値創出を目指す第2のシナリオでは、われわれが提供する世界で最もポピュラーな仮想化プラットフォームが威力を発揮する。その最初のものは「SAN Volume Controller(SVC)」で、われわれはここ3~4年でこれを大幅に改良し、データセンターでのスムーズな統合などを実現した。このプラットフォームを導入すれば、アプリケーションを短時間で起動できる他、データ圧縮によってリソースの大幅な有効活用が可能になる。この製品ラインは現在、「Storwize」と呼ばれている。
第3のシナリオでは、膨大なデータ、クラウド、ビッグデータといった要素を踏まえる必要があり、桁外れの容量とグリッドスケールのアーキテクチャが求められる。多数のアプリケーションが利用されるが、それらの調整やプロビジョニングが自動的に行われるようにし、人の介在を不要にする必要がある。その一方で、クリティカルデータの暗号化のような機能も確保しなければならない。これらの要件を全て満たすのが、われわれの「XIV」ファミリーだ。XIVファミリーは現在、OpenStack、ビッグデータ、クラウド、アナリティクスのシナリオで最も使われている。
われわれの戦略はシフトしてきている。ワークロードを出発点に据え、特定のワークロードデータのニーズを理解した上で、速度やフィードではなく、ソリューションを前面に打ち出すようにしている。われわれの顧客の多くは、以前は「Gバイト当たり単価が一番安いものが欲しい」と言っていたが、今では、「適切なデータアーキテクチャを実現するものを買いたい」と言ってくるようになった。
われわれの営業チームは、そうした買い方をしてもらえるようによく教育されている。そのおかげで、われわれは競合他社からシェアを奪いつつある。
――そのような市場動向を示す数字は見たことがないのですが。
ゴヤール氏 IDCなのかGartner Dataquestなのかは分からないが、彼らからそうした数字が発表されるだろう。しかし、私が注目しているのは競争状況の変化だ。われわれは、以前は営業をかけても、「社内標準にしている技術が既にある。あなた方の技術の価値を証明してくれたら、検討してもいい」といった返事しか返ってこなかった多くの顧客に食い込み始めている。ライバルに取って代わりつつあるということだ。
その意味で、われわれは前進し始めている。例えば、われわれはeBayを訪問したばかりだが、同社はわれわれのビッグデータおよびクラウドソリューションを使って膨大なグリッドスケールデータを管理している。このソリューションはXIVをベースに構築されたものだ。
ストレージは、10ギガビットイーサネットやファイバーチャネル、6TバイトのDASD(Direct Access Storage Device)、eMLC(エンタープライズマルチレベルセル)やSLC(シングルレベルセル)フラッシュを超えたものだ。ストレージの本質はデータ管理にある。
――フラッシュはストレージ技術の中でどのような位置を占めますか?
ゴヤール氏 フラッシュはあらゆるものに影響を与えている。ただし、フラッシュはわれわれにとって製品ではない。単体製品として売ることができるのは確かだが、フラッシュはStorwizeやSVCに採用されており、オールフラッシュ技術がDS8000でマルチコピーデータ管理のシナリオに利用されている。フラッシュはXIVでもビッグデータとクラウドのシナリオに利用されている。
われわれがフラッシュを使うのは、データセンターオペレーションを変更せずに、最も早くROI(投資対効果)を実現するためだ。つい最近もオールフラッシュのDS8000製品を発表している。パフォーマンスが大きく向上しており、これは、極めて一貫したレスポンスタイムを要求する顧客にとって重要な改良だ。
アプリケーションの観点から見たオールフラッシュDS8000の利点は、ソフトウェアを一切変更せずにメインフレームでDS8000を使えることだ。ソフトウェアを1行も書き換えることなく、素晴らしい、一貫したレスポンスタイムが得られ、フロアの省スペース化も可能だ。これに対し、APIや管理環境が異なる新製品を導入する場合は、データセンターの運用への影響が避けられず、ROIの実現に長い時間がかかってしまう。
――買収したTexas Memory Systemsの製品をベースにしたオールフラッシュプラットフォームの「FlashSystem」は、どんな特徴がありますか?
ゴヤール氏 FlashSystemは、「企業がデータのバックアップやレプリケーション、データ損失防止といったことは自社のソフトウェアで対応済みで、超高速なデータアクセス機能だけを求めている」というシナリオに適している。このシナリオに当てはまる企業では、オールフラッシュへの高い関心が見られる。
半年で1000以上の組織がFlashSystemを購入しており、購入総量は容量換算で100P(ペタ)バイトを超えている。
――IBMの顧客はバックアップに関してどのような課題を感じていますか?
ゴヤール氏 顧客は安価で高度なバックアップソリューションを求めている。彼らとしては、アクセスしたいデータには素早くアクセスできなければならない。また、特定のメディアに依存するのは避けたい。彼らの要望はこんな具合だ。「テープやフラッシュ、コントローラーを売ろうとしないでほしい。問題はデータ管理だ。バックアップしたいデータはPバイト規模。RPO(復旧時点目標)とRTO(復旧時間目標)を伝えるから、メディアを選定して、費用の総額を見積もってほしい」
われわれは以前、顧客がバックアップ用にディスクだけ、あるいは本物のテープだけを使いたい場合に、一部のシナリオでは仮想テープライブラリによるバックアップを勧め、別のシナリオでは他のバックアップソフトウェアの利用を勧めていた。今では、「Long Term File System」というメカニズムにより、テープ、フラッシュ、ディスクを自由に組み合わせて使えると説明している。顧客から必要な容量を聞き、われわれはこれらを組み合わせて必要最小限の容量をGバイト当たり単価で提供し、RPOとRTOを満たす最良のパフォーマンスを実現する。
例えば、監査上や法律上の理由でデータをアーカイブ用に保存する場合は、フラッシュとテープの組み合わせが効果的だ。人々が動画の再生などを行う必要があるメディア資産管理においては、ディスクとテープの組み合わせが有効だ。
われわれは、テープ、ディスク、フラッシュに関連する独立したメディア事業を手掛けるつもりはない。解決しようとしている問題に集中し、適切なソフトウェアとメディアの組み合わせを見つけ出していく。
――IBMのクラウドストレージ戦略はどのようなものですか?
ゴヤール氏 クラウドについては2つのアプローチがある。1つは、クラウド提供者向けのサプライヤーになることだ。これらの提供者にはMSP(マネージドサービスプロバイダー)が含まれる。また、クラウドオプションが付属するわれわれのXIVをベースに、プライベートクラウドを構築している組織も多い。もう1つのアプローチは、われわれのIaaS「SoftLayer」を通じてストレージを使ってもらうことだ。
――ストレージ分野では以上の他にどのような動きがありますか?
ゴヤール氏 IBMは何事にもオープン志向で取り組んでいく。テープに関しても、われわれがLTFSを採用するドライブは、他社のライブラリ上でも動作する。OpenStack、Cinder、Swiftに関するどの取り組みでも、プロプライエタリなAPIを作成しない。
多くの顧客がこう言っている。「自社ではプロプライエタリAPIを使わざるを得ず、今では多くのアプリケーションがプロプライエタリベンダー関連のAPIに縛られている」。IBMではオープン標準を支持し、その実践を行うことがビジネスの成功につながるという状況を望んでいる。
このため、人々を縛らないようにオープンであることが、われわれの戦略となっている。StorwizeやSVCでも、非IBMストレージの仮想化が可能だ。フラッシュベンダーや従来のライバルの多くが、自社ストレージをIBMの仮想化エンジンに対応させている。また、オープンソースアプリケーションは変更を加えることができ、アプリケーションに対応づけられたストレージも変更できる。私は全てのオープンなものを支持するつもりだ。
実際、われわれが扱っている全てのアーキテクチャでフラッシュが広く利用されていると述べたように、オープン技術もIBMのソリューションに広く浸透しつつある。eBayは、OpenStackがサポートされていなければ、IBMのストレージを買ってくれなかっただろう。
IBMは、顧客のデータセンターをコントロールすることによってではなく、こうしたオープン化の実践によってビジネスで成功したいと考えている。
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