x86サーバ事業売却の裏で
Lenovoに継承されるIBMの“最後の技術”、「X6」戦略とは?
2014年1月23日、米IBMが中国Lenovoにx86サーバ事業を売却することで合意した。その1週間ほど前にx86サーバの次世代アーキテクチャを発表したばかりだった。新アーキテクチャはLenovoにどう引き継がれていくのか?
Intelベースの「X6」システム――ターゲット市場はクラウドとビッグデータ
米IBMは2014年1月17日、次世代の「X-Architecture」を発表した。クラウドコンピューティング市場とビッグデータ市場における同社の勢力を拡大するのが狙いだという。ご存じの通り、米IBMは1月23日(現地時間)、x86サーバ事業を中国Lenovoに売却すると発表している。次世代技術を発表したにもかかわらず、なぜ同社はx86サーバ事業を手放してしまったのか? 複数の関係者の声を基にその理由を探る。
サーバ技術のコモディティ化が主な理由?
大規模なサーバラック内でプロセッサとメモリを分離するという「X5 Architecture」のコンセプトをさらに進化させた「X6 Architecture」(以下、X6)では、従来のサーバラックの設計が根本的に変更され、実装密度とサーバ性能が大幅に向上する。情報筋によると、X6は「ミッドプレーンアーキテクチャ」をベースにするという。これは、米Intelの「QuickPath Internconnect」(QPI)を利用したアーキテクチャだ。QPIはメモリ間の転送を高速化する技術である。
IBMはIntelサーバに新たに注力し始めたが、2013年には同社がIntelベースの「xSeries」サーバの売却先を探しているという臆測も流れた。同シリーズによる利益が減少する一方で、同サーバの技術が一般化したためにIBMの関心が薄れたのが主な理由だとみられていた。
情報によると、今回登場するX6は「ブック(Book)」というコンセプトを採用するという。ブックというのはモジュールの一種で、IntelプロセッサまたはDIMM(Dual Inline Memory Module)メモリ(あるいはその両方)が含まれる。1個のCPUと最大24個のDIMMを搭載する「Compute Book」、そして最大6.4Tバイトの「xFlash」ストレージと最大12.8TバイトのSAS(Serial Attached SCSI)ストレージを組み込める「Storage Book」が用意される。
IBMのX6戦略に詳しい米東海岸在住のコンサルタントは「これは大きな前進だ。このアーキテクチャでは、ストレージとメモリ間およびメモリとメモリ間でほぼ同じ転送速度を実現できる。これにより、処理負荷の大きいタスクやメモリを多用するタスクを完全にメモリ内で処理することが実質的に可能になる」と語る。
新アーキテクチャの潜在的メリットの1つとして、特に金融サービスや医薬品業界の企業ユーザーが、生産性とコスト削減の観点からアナリティクスや大規模データベースを部門規模で有効活用できることが挙げられる。
「I/Oを酷使するアプリケーションに関してユーザーが抱いている不満の1つが、アナリティクスや大規模データベースを各部門単位で処理できないことだ。しかしフラッシュメモリを利用する新アーキテクチャであれば、部門単位での処理が可能になり、大幅な経費削減が期待できそうだ」と同コンサルタントは話す。
IBMの関係者は「既存のHDDを使う必要がなくなるため、これらをバックグラウンドに置いて第2階層のストレージとして利用できる」と語る。
また、同社は「アーキテクチャの改良により、多くのIT部門でコストを平均43%削減し、遅延を3分の1に減らせる」と説明する予定だったという。
「新アーキテクチャのメモリチャネルストレージは基本的にフラッシュメモリで構成され、これを利用すれば、3倍の量のメモリに直接アクセスできる」と前出のコンサルタントは話す。「メモリバスにキャッシング技術が組み込まれているので、遅延が大幅に減少する」
新しいX6アーキテクチャは、Xシリーズに「最先端技術」というイメージを与えるので潜在的バイヤーの関心を引き付ける可能性がある、という見方をする関係者もいる。
ある業界観測筋は「xSeriesはまだ有望なビジネスだが、カンフル剤を必要としているのは間違いない。今回の発表はまさにそれが狙いではないかと思う」と話している。
優れたレジリエンス
情報筋によると、新アーキテクチャには高度なレジリエンス(障害復元性)も組み込まれているという。障害を検知して回避する機能が改善された他、障害発生を予防する管理機能も搭載された。IT担当者は仮想ツールを使って広範なシステム管理タスクを実行できる。これはITサポートコストの削減にもつながる。
QPIはIntelが2008年にプロセッサに初めて組み込んだアーキテクチャだ。IBMのxSeriesにも以前に採用されたことがある。これは、サーバ内のチップ間でメモリ同士を接続することによりパフォーマンスを向上させる技術だ。X6の場合、ディスク(フラッシュおよびSAS)とCPU間をメモリ転送速度で接続するのにも、この技術が使われている。
QPIでは、「ポイントツーポイント接続」という技術を利用することにより、CPUは自身が直接接続されていないシステム内のメモリにもアクセスできる。個々のポイントツーポイント接続は互いに独立しているため、共有通信バスを必要としない。だがこれがボトルネックになる可能性もある。
X6では直接接続された大容量のフラッシュストレージとHDDストレージをxSeriesボックスに組み込み、メモリ転送速度でこれらのストレージにアクセスできる。かつては時代遅れのストレージ方式と見なされたこともある「DAS(Direct Attached Storage)」は近年、息を吹き返し、データアナリティクスに用いられるハイパフォーマンスデータベースや、クラウドコンピューティングサービスプロバイダーが使用するスケールアウト型アーキテクチャなどさまざまな分野で利用されている。
米中西部の大学で仮想化とクラウドのアーキテクトを務めるボブ・プランカーズ氏によると、大容量メモリを搭載した大規模サーバは仮想化を利用している企業にも受け入れられる可能性があるという。大量のリソースを共有する仮想マシンの間で競合が少なくなるからだ。
プランカーズ氏が勤務する大学では、主として米Dellのハードウェアが使われている。同氏によると、「X6は魅力的だが、ベンダーの乗り換えを促すには不十分だ」という。
「大規模サーバには落とし穴もある。多くのもの1つにまとめると、それだけリスクも大きくなるということだ」とプランカーズ氏は話す。
X-Architectureの変更を歓迎しているITプロフェッショナルもいる。「ディスクI/Oが激しい環境で使っている重要なアプリケーションのパフォーマンスが改善される可能性がある」というのが理由だ。だが、現時点でフラッシュストレージに一気に移行するのは、費用が掛かり過ぎる恐れがあるという。
カナダのGHY Internationalでソーシャルビジネスの責任者を務めるナイジェル・フォートラーゲ最高情報責任者(CIO)は「現時点でフラッシュストレージを採用する経済的メリットは多くないので、今すぐ移行するつもりはない。しかし今回の新技術については、2、3年内に検討しようと思う」と話している。
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