メインフレームにまつわる“迷信”に惑わされるな
メインフレームからx86サーバへの移行は本当に正しいのか
古いメインフレームを運用している企業は、x86サーバ用にすべてのアプリケーションを書き直すより、最新のメインフレームにアップグレードする方がコストと時間の節約になるかもしれない。
メインフレーム離脱企業はx86サーバに移行した理由を説明しているが、メインフレーム擁護者たちによると、そうすべきでない理由もたくさんあるという。
米調査会社Clabby Analyticsを経営するジョー・クラビー氏によると、メインフレームから仮想化技術を搭載したx86サーバに移行するというトレンドは、実際には後退だという。
「PCはメインフレームの代わりにはならない。また、本格的な仮想化とプロビジョニングという視点から見れば、VMwareはメインフレームの足元にも及ばない」とクラビー氏は話す。「メインフレームはVMwareよりもはるかに先を進んでおり、仮想化、自動プロビジョニング、ワークロード管理における現在のメインフレームの水準にVMwareが追い付くには10年かかるだろう」
もちろん、メインフレームの王者IBMも同じ考えだ。「これはミニクーパーとトレーラートラックを比較するようなものだ。確かにミニクーパーは効率という点で優れるが、引越しするときに役立つのはどちらだろうか。グランドピアノを運べるのはどちらだろうか。同じ分量の仕事を片付けるのに、ミニクーパーでは何往復しなければならないだろうか」と話すのは、IBM System zソフトウェアを担当する同社のディスティングイッシュドエンジニア/チーフアーキテクトのジム・ポレル氏だ。
IBMの基本的見解は次の通りだ──「System z10 ECメインフレームは1500台のx86サーバをリプレースすることができ、IBM System z10 BCは最大232台分のx86サーバの能力がある」
それでもメインフレームからの移行を進める企業は少なくない。その理由として彼らが挙げるのが低コストだ。
メインフレーム離脱派は
シカゴに本社を置くTTXは、メインフレーム離脱派の象徴的存在だ。同社は2010年までにIBMメインフレームを引退させ、すべてのメインフレームアプリケーションを書き直すとともに新機能を追加し、それらをHewlett-Packard(HP)のDL 580 G4サーバとHPブレードサーバ、そしてVMware ESXバージョン3.5仮想マシンとWindowsを組み合わせた環境で運用する計画だ。
TTXのインフラ担当ディレクター、ロブ・ゼリンカ氏は「われわれは基本的に、より多くの機能を備えたより安価なプラットフォーム上にメインフレーム環境を再現した。設置面積が大幅に減少しただけでなく、消費電力と冷却要求が少なくなったので運用コストも削減できた。以前は5列のサーバラックがあったが、それがわずか2列になった。
しかしクラビー氏によると、x86と仮想化技術の取得コストはメインフレームのコストと比べると低いが、「セキュリティと信頼性に劣る」コンピューティングモデルを採用することは長期的なコスト削減につながらないという。
「これらの企業が採用しようとしているのは、分散コンピューティングと呼ばれる破たんしたコンピューティングモデルだ。その管理コストはコントロールできない。これはブレードやラック、サーバを追加して拡張するというモデルだが、その稼働率は40%程度だろう。ピーク時のワークロードを処理するために、アプリケーション/データベースサーバに余裕を持たせる必要があるからだ」とクラビー氏は語る。
「ネットワーク関連のコスト、新たに導入する分散環境を管理するのに必要な多数のスタッフ、複数のセキュリティライセンス、必要な事業継続対策などを数え上げるといい。これで大きなコスト節減ができると考える人がいるとしたら、その人はどうかしている」(クラビー氏)
IBMのポレル氏はメインフレーム絶対主義者というわけではなく、「x86サーバ、仮想マシン、メインフレームが混在する環境でも問題はない」と話す。しかしメインフレームをお払い箱にして、x86サーバに移行するのは一歩後退になるという。メインフレームは「優れたオペレーションモデルを利用することにより、あらゆるタイプのワークロードを処理し、複数のワークロードを同時に実行する」ように設計されているからだ。
「メインフレームはコンピューティングのメルセデスベンツだ。必要なものは既にすべて入っている。これに対してPCは最低限の機能しか備えていないシステムであり、アプリケーションを動作させるのに必要なソフトウェアとツールをすべて購入しなければならない」とポレル氏は話す。
メインフレーム離れを促す“迷信”
ゼリンカ氏によると、TTXの決定に影響を与えたのはVMwareだという。「管理機能が充実していて使いやすいということもあったが、最大の決め手となったのは、運用コストが低いことだ。VMwareの年間メンテナンス料金は、IBMのメインフレームと比べると数分の1だ」と同氏は語る。
ゼリンカ氏は、x86サーバ用ソフトウェア(HPのInsight Managerなど)も大いに気に入ったという。詳細な稼働状況がビジュアルに表示され、データセンターの完全自動運転を行うことが可能だったからだ。これに対して、従来のIBMメインフレームでは専任のスタッフが“1日中、画面を見つめている”必要があったという。
しかしIBMのポレル氏によると、メインフレームは子守が必要だというのは“迷信”だという。「わたしは1980年半ば以降、自宅からメインフレームのプロセッサを管理している。アトランタにあるデータセンターをニューヨークとフロリダから管理している顧客もいる。彼らは、ソフトウェアのアップグレードやメンテナンスもすべてリモートで行っている」と同氏は話す。
メインフレームは効率が悪く、ソフトウェアのライセンス費用が高額で、途方もないメンテナンスコストが掛かるという認識もメインフレームの不人気の理由だが、ポレル氏によると、こういった決めつけは最近のメインフレームには当てはまらないという。
「ソフトウェアのコスト、消費電力、設置面積は、メインフレームの世代によって異なる。メインフレームを見限る人々は、恐らく古いシステムを使っているのだろう。しかし、x86サーバ用にすべてのアプリケーションを書き直すのに必要なコストと時間を考えれば、最新のメインフレームにアップグレードする方が恐らく安上がりだろう」とポレル氏は語る。
ポレル氏は、Java開発者がメインフレーム用のプログラムを開発しなかったこともメインフレーム離れにつながったことを認めている。「ユーザーがメインフレームに見切りをつけたのではない。今日のプログラマーがアプリケーション配備対象のプラットフォームとしてPCを選んでおり、メインフレーム向けに開発する人が少なくなってきたことが原因だ。われわれは現在、この問題に取り組んでいる。プログラマーが両方のプラットフォーム向けにアプリケーションを開発するよう促しているのだ」と同氏。
ポレル氏によると、結局のところメインフレームにとどまるべきかという判断に際しては、5つの優先要件を考慮する必要があるという。業務機能の復元力、セキュリティ、キャパシティー管理、ビジネスプロセスの連係、ストレージに対するニーズである。これらはいずれもメインフレームの得意とするところだ。
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