「勤務年数」「仕事の満足度」「業種」は関係なし
「年収1億円稼ぐIT幹部」になれる2つの条件
年収は最低3万ドルから最高約150万ドル――。米TechTargetが実施したIT幹部464人の調査結果は、IT幹部間の収入格差を浮き彫りにした。一方、CIOに求められる役割にも変化の兆しがある。
上級IT幹部には、どのくらいの年収を稼ぐ潜在力があるのだろうか? 答えは当然ながら「場合による」だ。米TechTargetが実施した給与とキャリアに関する年次調査「2013 TechTarget IT Salary and Careers Survey」によれば、上級IT幹部の年収を左右する主な要因には「企業収益」「企業規模」「キャリアの長さ」などがあり、わずかではあるが「業種」の影響もあるようだ。
はっきりとした結論が1つある。それは、「年収アップを望む上級IT幹部は、より大規模な企業への転職を検討すべきである」というものだ。
今回の調査には464人の上級IT幹部が回答。前年度と同様、調査結果からは、IT業務を統括する立場にいる人たちの給与には大きな開きがあることが明らかとなった。今回の調査では、上級IT幹部の年間給与総額には最低3万ドルから最高150万ドル弱までの幅があった。上級IT幹部に分類されたのは、最高情報責任者(CIO)、最高技術責任者(CTO)、執行副社長、IT、経営情報システム(MIS)、情報システム(IS)の責任者などだ。
回答者の平均年収は14万ドルだった。調査では、年間給与総額が14万ドルを上回った上位3分の1の回答者を「高所得層」と定義し、14万ドルに満たなかった回答者を「低所得層」に分類した。両グループの給与総額の平均値には、高所得層が22万5301ドル、低所得層が10万1562ドルと、2倍以上の開きがある。
高所得層の上級IT幹部は、他の回答者と何が違うのだろうか? 昇給面では、給与比での昇給率が高所得層は6.2%、低所得層は5.4%とそれほど差がない。ただし、昇給を受けた回答者の割合は、高所得層(58%)が低所得層(51%)よりも多くなっている。
賞与に関しては、この差はさらに大きくなる。2013年に賞与を受け取った回答者は、高所得層では半数以上(54%)を占めるが、低所得層ではわずか32%にとどまっている。また高所得層の平均賞与額は4万1960ドルと、低所得層の平均賞与額1万1447ドルの4倍近くになっている。「2013年の年間給与総額は前年と変わらなかった」とした回答者の割合は、高所得層の18%に対し、低所得層では28%と多くなっている。
「勤務年数」「仕事の満足度」「業種」の影響はほとんど無し
「勤務年数」は、少なくとも1つの点では、上級IT幹部の年収に影響を及ぼしている。「IT分野での職務経歴が21~30年」と回答した人の割合は、低所得層(32%)よりも高所得層(43%)の方が多い。ただし、「現在の職に就いてからの年数」では、両グループに明らかな差はみられず、高所得層でも低所得層でも過半数(54%)が「現在の職に就いて1~5年」と答えている。
「仕事の満足度」についても、2つのグループ間で大きな差は見られなかった。「現在の職にとどまる予定だ」とした回答者の割合は高所得層(20%)よりも低所得層(26%)で少し多いが、「新たなチャンスは歓迎するが、新しい仕事を積極的に探しているわけではない」との回答者の割合は、高所得層で45%、低所得層で46%と、ほぼ同率となっている。
「業種」も、大体においては年収を左右する要因にはなっていない。非営利セクタで働くIT幹部は高所得層(0%)よりも低所得層(7%)に多かったが、以下に示す上位3つの業種は、高所得層と低所得層でそれほど大きな差はない。
- 金融、銀行:高所得層(19%)、低所得層(18%)
- IT関連サービス、コンサルティング:高所得層(13%)、低所得層(8%)
- 医療、ヘルスケア、医薬、バイオテクノロジー:高所得層(10%)、低所得層(16%)
「規模」「収益」が重要な要因、ただし不確定要素も
高所得層と低所得層で給与総額に2倍の差があり、賞与額に4倍の開きがあるのはなぜなのだろうか。
「企業規模」は重要だ。「従業員数が500人未満」の企業で働くIT幹部は、高所得層(35%)よりも低所得層(63%)で多い。大企業では、この差はさらに明確になる。「従業員数が1万人以上」の企業に勤務するIT幹部は、低所得層には5%しかいないが、高所得層では21%を占めている。
この差は、「企業収益」にも当てはまる。「売上高が5億~100億ドル以上」の企業に勤務するIT幹部は、高所得層のほぼ半数(48%)を占めたが、低所得層ではわずか4%にとどまった。低所得層では、「売上高が5000万ドル未満」の企業に勤務するIT幹部が過半数(54%)を占めている。
「会社の規模がIT幹部の給与に大きく影響しているのは、驚きではない」と、ある大規模大学医学部のIT責任者は語る。このIT幹部の年収は調査回答者の平均である14万ドルよりは多いが、高所得層の平均値である22万5301ドルよりは少ない。このIT幹部が統括するIT部門は10人のスタッフで構成され、給与計算はマトリクスで行われている。IT責任者からヘルプデスク技術者までが等級に分けられ、学歴や資格、在任年数に応じてポイントが付与されるという。
会社だけでなく、組織の規模も重要だ。実際にこの大学でも、医学部と違って多額の研究助成金が入らない学科や小規模な学科を担当するIT責任者は、大規模な学部や学科のIT責任者よりも年収が少ない。
給与計算には「主観的な要素」も含まれると、このIT幹部は指摘する。人事担当者は、特定の人物に対する給与の増額を提案できるからだ。
このIT責任者は、現在の職に就いてちょうど1年になる。労力の大半をITIL(Information Technology Infrastructure Library: ITサービス管理に関するベストプラクティス集)の実装に費やし、常に信頼できるITサービスの提供を目指しているという。「基本のサービスを安定的に稼働させないことには、革新は起こせない」と、この幹部は語る。この目標が実現するまでは、より戦略的な医学研究開発は別の情報科学チームが担当しているという。
「バックオフィス型CIO」対「戦略的CIO」
世界のCIOを対象にした調査を実施する米調査会社Gartnerの副社長、リリー・モック氏によると、企業の報酬戦略は「経済情勢」「業界成熟度」「企業文化」によって形成され、最終的な支払い額は「企業の財政状態」によって決まるという。
「いくら高く評価したとしても、報酬として支払える額には限度がある」と、モック氏は語る。Gartnerは米コンサルティング企業Mercerと提携し、CIOの給与調査を実施している。
モック氏はここ数年、各ポジションの給与を厳密に固定しない傾向が強まっていると感じている。少なくとも、企業が重要だと見なしている役職に関してはそうだという。「募集するポジションに最も適任の候補者を集められるよう、給与額を調整して柔軟性を持たせようという傾向がある。不適任な人材を選べば、支出に見合った見返りを得ることができなくなる可能性もあるからだ」と、モック氏は語る。
この傾向はCIOにも当てはまる。その結果生まれているのが、「バックオフィス業務を担う従来型のCIO」と「事業戦略の策定をサポートするCIO」との給与格差だ。後者のCIOは、卓越したIT運営だけでなく、IT以外の分野でも指導的役割を担い、製品開発や顧客エクスペリエンスに影響を及ぼし、さまざまな形で収益に貢献する。「こうしたCIOこそが真のビジネス幹部であり、報酬も肩書にCが付く他の幹部らと同等レベルで支払われているようだ」と、モック氏は語る。
オフィスを米国に6つと香港に1つ構える会計コンサルティング会社、米Burr Pilger MayerでIT責任者を務めるアンソニー・ピーターズ氏も、この傾向をじかに体験している。給与と賞与と利益配当金を合わせると、同氏の年収は高所得層に分類される。従業員数が400人と、企業規模が小さいにもかかわらずだ。今回の給与調査では経営学修士(MBA)資格の有無は質問しなかったが、ピーターズ氏はMBAも取得している。ピーターズ氏は同社の経営に欠くことのできない存在であり、事業戦略を策定する会議にも参加している。
「私に期待されているのは、事業戦略会議でどのような情報が出されても、その情報を何かしらのフォーマットでIT化できることだ」と、ピーターズ氏は語る。会社が新たな企業買収や新製品の開発、顧客サービスの向上などを目指しているのなら、「それに付随する問題を解決し、ニーズを満たすためのソリューションを生み出すこと」がピーターズ氏のチームの役割だという。
「サービスの信頼性」「プロジェクトの予定通りの完了」「コスト」といった、IT部門の業績評価によく使われる標準的な測定基準について、ピーターズ氏は「これらの要素は手持ちの賭け金になる」と語り、次のように続ける。「いずれもIT部門がなすべき仕事だが、会社はこうした基準で私を評価するわけではない。会社は、ITがどのようにして会社を次のレベルへと押し上げるかを知りたがっている」
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