iOSの管理方法には疑問の声も
iPhone/iPadも対象、Samsung提供モバイル管理サービスの狙いは
韓国Samsungが企業向けモバイル管理市場に本格参入した。新たに発表した同社製品では、自社端末のみならず、iOS端末や他社Android端末を管理することができる。しかし、競争が激化する同市場で同社は生き残れるのだろうか。
韓国Samsungは、成長著しいエンタープライズモビリティ管理(EMM)市場に本格的な参入を果たした。だが、米AppleのiOS端末や米Googleなど競合企業が提供するモバイル端末を管理する方法については不明な点が多い。
新たなクラウドベースのEMMサービス「Samsung KNOX EMM」(以下、KNOX EMM)は、iOS/Androidを搭載したデバイスや、これらOS向けアプリケーションの管理機能を提供する。Samsungはまた、2月末に開催された展示会「Mobile World Congress 2014」において、セキュリティプラットフォーム「Samsung KNOX」のアップデート版を発表した。
この動きは、韓国最大手の電子機器ベンダーであるSamsungにとって、大きな前進である。これまで、同社がモバイル端末向けに提供する管理APIとセキュリティAPIの利用は、同社が提供する一部のスマートフォンおよびタブレット製品に限定されていたからだ。
米ロードアイランド州ポータケットにあるITソリューションプロバイダー、Envision Technology Advisorsで最高技術責任者を務めるジェフ・ウィルヘルム氏は、次のように話す。「Samsungは、同社が単なる家電メーカーではなく、EMM市場で真剣に取り組んでいることを企業に納得してもらわなければならない。だが、情勢は厳しい」
KNOX EMMは成功を収めることができるのか
KNOX EMMには、モバイルアプリとWebアプリの管理機能に加え、IT管理者とエンドユーザー向けのセルフサービスポータル機能が備わっている。ユーザーはシングルサインオン(SSO)機能を使って、企業アプリケーションにアクセスできる。SSOは、社内構築した「Microsoft Active Directory」、あるいはクラウド上の「Windows Azure Active Directory」と連係可能なKNOX EMMのID/アクセス管理機能によって実現されている。
ライセンスは、企業向けアプリストア「KNOX Marketplace」で購入することが可能だ。本稿執筆時点では、クラウドストレージ「Box」などのビジネス向けアプリケーションを入手できる。
Samsungは、デバイスベンダーとして大きな成功を収めている。米調査会社のGartnerが2013年11月に発表した報告書によれば、Samsungは世界のスマートフォン市場で32%のシェアを占めているという。Appleの市場シェアは12%で第2位である。しかし、米ニュージャージー州の大手製薬会社でモバイルイノベーション責任者を務めるブライアン・カッツ氏は、スマートフォン市場におけるSamsungの支配的な地位をEMM市場でも維持できるとは限らないとの見方をしている。
「Samsungが製造するデバイスは素晴らしいが、エンタープライズ管理ソフトウェアにおける同社の実力とは無関係だ。EMM市場での実績が乏しいSamsungの製品をわざわざ購入する人はいないだろう」(カッツ氏)
昨今、EMM分野に進出する端末ベンダーは増加傾向にある。SamsungがKNOX EMMを発表した同日、カナダBlackBerryが「BlackBerry Enterprise Service 12」を発表している。同サービスは、BlackBerry、iOS、Android、Windows Phoneの各デバイスを管理することができる。2013年末には、Microsoftが新たなEMM基盤をリリースした(関連記事:Microsoft製品だけでiPhone、iPadを管理――その計り知れない影響とは?)。
BlackBerryやMicrosoftは、Samsungとは違い、管理ソフトウェアベンダーとして、長年積み重ねてきた財産がある。
「BlackBerryやMicrosoftは、ただ座って『さあ、今日からエンタープライズ管理のビジネスに参入しよう』といって事業を始めたわけではない。同分野におけるビジネスは、彼らの本業だ」とカッツ氏はいう。
Samsungは、米CA、米Citrix、米Good TechnologyをはじめとするエンタープライズソフトウェアベンダーとKNOXのパートナーシップ契約を結んだ。米ボストンの調査会社Blue Hill Researchで最高経営責任者(CEO)を務めるラルフ・ロドリゲス氏は「パートナーシップ契約により、IT部門はこの新しいサービスに対して徐々に好意的な態度を示すようになる可能性がある」と話す。
KNOXセキュリティプラットフォームのアップデート
Samsungは、多くの批判を浴びたKNOXモバイルセキュリティプラットフォームの強化も図った。
KNOXの従来のバージョンでは、セキュリティ機能と管理機能が追加で組み込まれたアプリケーションしか管理することができなかった。この手法では、開発者がアプリケーションのコードを変更する必要があった。そのため制御できるアプリケーションの数は限られていた。
新版では、Androidデバイスに個人用/仕事用の2つのプロファイルが作成される。Androidのマルチユーザーフレームワークがサポートされていれば、Google Playストアで一般に提供されているアプリを仕事用プロファイルで実行できる。仕事用プロファイルは、セキュリティが強化されたAndroidを実行することのできるセキュアコンテナだ。
仕事用プロファイルについては、IT管理者が特定のアプリをホワイトリストとブラックリストに登録することができる。また、仕事用/個人用の両プロファイル間で移動を許可するデータ(連絡先やカレンダーの項目など)を制御することも可能だ。
しかしながら、KNOXがiOS端末や、同OS向けアプリをどのように管理するかは明らかになっていない。
「iOSのデバイスやアプリでAndroidと同じ手法を用いることは不可能だ」とロドリゲス氏はいう。
KNOXはiOSをどのように管理するのか
Appleの歴史やSamsungとの激しい競争(関連記事:AppleとSamsungの仁義なき戦いは続く 2014年のモバイル市場を占う)を考えれば、KNOX EMMがAndroid端末と同じように、iOS端末のハードウェア基盤にまでアクセスし、セキュリティを実装することはできないだろう。「その場合、Samsungは、ソフトウェアのみによる手法を取らざるを得ない。この手法では基本的に、iOS上で実行するミドルウェアレイヤーを作成する。そのため複雑さや脆弱性が増す恐れがある」とロドリゲス氏は指摘する。
また、ウィルヘルム氏によれば、Samsungが他社端末を管理/セキュリティ保護する方法には疑問があるという。同社端末のうち、「GALAXY S4」や「GALAXY Note 3」を含む、8機種がKNOXをサポートしている。
「Samsungは、標準的なAndroid/iOS端末に対しては、特に目新しい機能を提供していない。だが、Samsung KNOXアーキテクチャに対応した端末では、ハードウェアレベルで強化されているため、追加機能を提供することが可能だ」(ウィルヘルム氏)
例えば、Linuxカーネルレベルでのマルウェアの監視、暗号化キーとクライアント証明書用のセキュリティで保護されたストレージ領域、サードパーティーVPN製品との統合といった追加機能が含まれる。
Samsungにコメントを求めたが、本稿執筆時点で回答は得られなかった。
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